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AI活用で米国に大きく後れをとる日本、MLOps整備の遅れやリスク管理に課題~PwC Japanグループ

 PwC Japanグループは15日、2023年のAIに関する予測調査についてメディアセミナーを開催した。日本と米国で実施した同調査の結果から、「日本のAI活用度は米国に大きく引き離された」と、PwC Japanグループ データ&アナリティクス リーダー/AI Labリーダーで、PwCコンサルティング合同会社 上席執行役員 パートナーの藤川琢哉氏は述べている。

PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナー 藤川琢哉氏

 藤川氏によると、日本におけるAI導入済みの企業は2022年で53%、2023年で50%だったという。数値が下がっているのはサンプルの変更があったためだが、ほぼ進展が見られないことは明らかだ。

日本のAI活用度には進捗が見られない

 一方の米国は、2022年の55%から2023年は72%と、17ポイントの大幅な伸びを示している。この差について藤川氏は、「新型コロナウイルスの政策として、ロックダウンを解除した米国と行動制限が続いていた日本とで差がついたのではないか」としている。

米国ではAI導入企業比率が1年間で大きく伸長

 また、他社とのデータ連携の取り組みについても日本と米国では顕著な差が見られ、データ連携を行う企業は日本では21%、米国では60%だった。外部データを意思決定にフル活用している企業も、日本では15%にとどまる一方で、米国は44%にのぼっている。さらに、非財務情報をダッシュボード化しAIで分析している企業は、米国で56%と半数を越えているが、日本は8%とごくわずかだ。

他社とのデータ連携の取り組みで顕著な差

 こうした結果から藤川氏は、「他社とのデータ流通や外部データ活用を積極的に進め、閉塞感のあるAI活用の道を開く必要がある。また、非財務情報の可視化だけでなく、相関分析や長期シミュレーションなどでもAIを活用し、将来的な企業価値につながる非財務情報に投資するべきだろう」と提言した。

 日本がAIの活用で米国に大きく後れを取っている背景について、「日本はAIモデルの性能低下で悩む企業が多い」と藤川氏は指摘する。調査では、「稼働後のAIモデルの性能が著しく低下し、想定していたビジネス効果が出なかったケースがあった」と答えた日本企業が43%にのぼったという(米国は23%)。一方、「稼働後のAIモデルの性能は安定しており、想定していたビジネス効果が出ている」と答えた日本企業はわずか17%だ(米国は61%)。このことから、「MLOps(機械学習オペレーション)の整備が日本では米国より遅れていることが背景にあるのではないか」と、藤川氏は述べている。

日本はAIの性能低下で悩む企業が多い

 また、「AIのリスクへの関心が高まったにもかかわらず、十分にリスク対策できていないことも、活用にブレーキがかかっている要因のひとつだろう」と藤川氏。事実、AI導入済みの日本企業で最優先課題を聞いたところ、リスク管理を挙げた企業が2022年の6%から2023年は33%と27ポイントも高まっている。リスクを課題視しつつも、AIリスクへのガバナンス施策は米国に大幅に後れを取っていることも、日米のAI活用度の差につながっていると藤川氏は指摘する。

AIの最優先課題としてリスク管理と回答した日本企業が急増

 藤川氏は、「AIは、常にモデルのメンテナンスが必要で、運用フェーズこそ価値を最大化する最も重要な段階。MLOpsを整備し、AIによるビジネス効果を継続的に創出する必要がある」と話す。また、AIガバナンスを整備し、安心してAIを活用する環境が整えば、人材獲得や企業イメージの向上にもつながることから、「AIガバナンスを戦略的に推進するべきだ」とした。

DX推進の起爆剤として期待される生成AI

 このところ大きく注目されている生成AIについては、「日本企業でDX推進の起爆剤として期待されている」と、PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナーの三善心平氏は語る。というのも、生成AIはサイロ化されたデータや非構造データに強く、ユーザーフレンドリーで経営者でも扱いやすい上、企業内には質の高い学習データやノウハウがすでに蓄積されているためだ。三善氏によると、日本では約半数の企業がさまざまな領域で生成AIを利用中もしくは利用を計画しているという。

PwCコンサルティング 執行役員 パートナー 三善心平氏
日本で多くの企業が生成AIを利用中または利用予定

 一方で、生成AIには新たなリスクも存在する。フェイクニュースなどのように存在しないものが生成され大衆扇動につながる可能性や、サイバー犯罪で生成AIから情報が引き出される可能性、生成物のクオリティー担保や著作権侵害、個人情報漏えいリスクなどだ。

 こうしたリスクに加え、日本では生成AIの品質の不安定さやコスト、ブラックボックス化などに対する懸念を示す企業の割合が高い。一方、ある程度導入が進んでいる米国では、社員の知識不足を心配する企業が多くなっている。また、日本では「リスクは特にない・わからない」と回答した企業はわずか9%となっている一方で、同様の回答をした米国企業は44%にのぼり、米国では生成AIを楽観視している企業が多いことがわかる。

リスクのとらえ方が異なる日本と米国

 現在生成AIの活用の中心となっているのは、高度な事務作業領域やクリエイティブ領域だが、「今後は専門知識やノウハウを生かして意思決定するような業務でも活用が進むだろう」と三善氏は言う。こうした現場のノウハウは日本企業の強みでもあることから、「すばらしいユースケースがボトムアップで多数生まれることも期待できるのではないか」としている。

 さらに、中長期的には「社会やユーザー体験のあり方を視野に入れ、クライアントとのビジネスがどう変化するかを踏まえた上で自社の事業を考えるという、未来志向で生成AIの活用方法を検討することも重要になってくるだろう」(三善氏)とした。

未来志向で生成AIの活用検討を