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ナシ栽培をスマート化し現場の課題解決を支援――、千葉県市川市と成田市で実証実験を開始

 千葉県が代表機関を務めるコンソーシアム(千葉県ナシ栽培スマ農コンソ)は8日、千葉県市川市および成田市のナシ農園において、ロボットやAI、ICTを活用したスマート農業技術の体系化に向け、実証事業を開始すると発表した。

 千葉県が産出額、栽培面積ともに全国1位であり、海外からの需要も高まっているニホンナシは、生産量や品質の向上に期待が寄せられている。しかしその一方で、農業従事者の高齢化や労働力不足によって、その生産量は減少傾向にあるほか、気候変動の影響によって生育ステージがばらついてしまい、作業適期の判断が難しくなった結果、生産量や品質に影響が生じているとのこと。

 具体的な課題としては、夏季に行う収穫作業は、収穫台車を人力で押しながら果実を摘むという労働強度の高い作業である点、また、高品質のナシ生産に欠かせない病害虫の薬剤防除に関しては、昨今の気候変動により、適期実施するタイミングの判断が難しくなっている点があるという。さらには、開花の時期も年々早まっていることから、従来通りの生育予測では、農繁期の雇用調整や出荷予測が難しくなってしまった。

 そこで今回は、海外からのニーズにも合った高品質のナシを効率よく生産するため、先端技術を活用したデータ駆動型のスマート農業システム構築を目的として、実証事業の取り組みを開始する。

 まず、ヒトに自動追従するロボット作業車を導入し、収穫、せん定枝回収・結束を行うとともに、除草剤散布モジュールを搭載するなど、汎用利用する。あわせて、作業者が装着したウェアラブル端末の心拍変化などから、軽労化の効果を検証するとした。

ロボット作業車

 また、ロボット作業車に搭載したカメラで棚下からの生育画像を撮影し、AIで解析することで、生産者が感覚的に把握していたナシの生育状況を、より客観的なデータとして把握可能にするとしている。

 さらに、アメダスなどでは取得できない詳細な気象データ(微気象データ)を広範囲に収集するセンサーネットワークを構築。データを自動で栽培支援用スマホアプリ「梨なび」に反映させて、ナシに発生しやすい病気である黒星病の感染危険度をリアルタイムで予測し、農薬散布による防除適期をナビゲーションする仕組みを実用化するという。

微気象センサー設置イメージ

 なお、千葉県ナシ栽培スマ農コンソは、ナシ生産に関する諸課題の解消に向け、千葉県を代表機関として結成されたコンソーシアムで、令和3年度から2年間、スマート農業技術の実証事業に取り組むとのこと。

 同コンソーシアムには、千葉県のほか、市川市や市川市農業協同組合、全国農業協同組合連合会千葉県本部、千葉県果樹園芸組合連合会なし部会、ヤマニ果樹農園、アイ・イート、イーエスケイ、TTデータ経営研究所、NTTデータCCS、NTT東日本、といった企業・団体が参加している。