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ふくおかフィナンシャルグループ「みんなの銀行」がGCPを採用した理由は?

国内では初めて、パブリッククラウドを銀行の勘定系システムに採用

 グーグル・クラウド・ジャパンとふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は2日、FFGが現在開発中の次世代バンキングシステムに関する説明会を開催した。

 FFGが現在開業準備を進めているネット専業銀行「みんなの銀行」の勘定系システムのプラットフォームとしてGoogle Cloudが提供するGoogle Cloud Platform(GCP)を採用した。これは、「海外では勘定系への採用例はあるものの、国内では初めて」(グーグル・クラウド・ジャパン 代表 阿部伸一氏)の事例となる。

グーグル・クラウド・ジャパン 代表の阿部伸一氏

 株式会社福岡銀行 取締役副頭取、株式会社ふくおかフィナンシャルグループ 取締役執行役員で、開発を行う別会社、ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社の代表取締役でもある横田浩二氏は、「銀行は恐竜のように絶命してしまうのか? そうはさせない。進化によって生き延びていく。徹底的にデジタルテクノロジーを活用し、競合優位性のあるものに変えて行く」とデジタル進化を進めていく必要性を強くアピールした。

 そして繰り返し、「ネット銀行はLCCを作ろうとしているのではなく、デジタルならではのメリットを持った新しい金融機関を作ることを目指す」と強調した。

 なおシステム開発は、FFGとグーグル、さらにアクセンチュアの3社体制で進められているという。

福岡銀行 取締役副頭取、ふくおかフィナンシャルグループ 取締役執行役員、ゼロバンク・デザインファクトリー 代表取締役の横田浩二氏

 みんなの銀行は、2019年5月に設立準備会社を設立し、2020年開業を目指して準備を進めている。店舗を持たずネット専業銀行となることから、FFGのように九州地域に限定せず、全国規模のユーザー獲得する、モバイルをチャネルとした銀行となる計画だ。横田氏はみんなの銀行が目指すコンセプトとして次の3点を挙げる。

1)みんなの「声」がカタチになる=顧客行動変容に即した新しい金融サービスの提供
2)みんなの「いちばん」を届ける=顧客理解に基づく総合金融コンシェルジュ
3)みんなの「暮らし」に溶け込む=BaaS(Banking as a Service)型ビジネス

 「従来の銀行は店舗などの壁があったために、この3つのコンセプトを実現させることが難しかった。今日の段階で具体的に新しいサービスとはどんなものなのかお話しすることはできないが、さまざまなデータを活用しベストなものを届ける」(横田氏)。

みんなの銀行 3つのコンセプト

 グーグルをパートナーとした理由としても、「単にサーバーを提供してくれる相手として選んだのではなく、デジタルにふさわしいアーキテクチャとして、GCPがもっともふさわしいと考えた。ミッションクリティカルなシステムをスケールフリー、安定供給してもらえるのがグーグル」(横田氏)と説明した。

 グーグル・クラウド・ジャパンでは、「銀行の先にいる生活者を取り巻く環境には大きな変化が起こっている。キャッシュレスという話も出ているし、業界のプレイヤーもそうしたニーズにこたえる必要がある。その一方でお客さまの重要なデータを預かっているため、法整備を順守していくことも必要になる」(グーグル・クラウド。ジャパン 代表 阿部伸一氏)と、金融機関を取り巻く環境が大きく変わっていることを指摘。

 こうした環境変化を受け、「従来のシステムをそのまま使い続けていくことができるのか?柔軟性が求められる中、従来資産とどうバランスを取るのかといった課題を抱えている。こうした課題をクリアするために、Google Cloudは何が提供できるのか?データ分析を徹底的に行い、お客さまが求めるものを的確に提供すること、これにつきるのではないか?」(阿部氏)と述べ、データを活用したニーズに合ったサービス提供をサポートすると強調した。

新たなデジタルバンキングシステムをGCPで構築

 パブリッククラウドを銀行の勘定系システムに採用するケースは、海外では事例があるものの、日本では初めてとなる。

 なお、導入に至る前にGoogle以外のクラウドとの比較検討も行ったのかについて、横田氏は「可用性、24時間、365日止まらないものが提供できるのかといった観点で協議し、セキュリティ的な観点からリージョンを分けてくれるといった点を評価。Google Cloudの採用を決めた」と語った。

 また横田氏は、「大手銀行でもクラウドファーストの姿勢になっているという話は聞いている。しかし、現行の勘定系システムは密結合の巨大なもので、1、2年のリフト&シフトでクラウドに移行できるものではない」とし、現段階では、クラウドは新銀行での利用を想定したものだと話す。

 また、システム完成後、ほかの地銀、ネットバンクなどに外販するかどうかについては、「現段階は開発に注力しているところなのでなんともいえないが、完成後に要望があれば外販も考えたい」としている。

左から、グーグル・クラウド・ジャパンの阿部代表、福岡銀行の横田取締役副頭取