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自動運転の安全性向上を目指し適応ネットワーク制御技術のフィールド実験、NECとNICTが共同で実施

 日本電気株式会社(以下、NEC)は23日、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)と連携し、「適応ネットワーク制御技術」を活用して、自動運転におけるリアルタイムな周辺情報を共有するためのフィールド実験を、2019年3月に実施したと発表した。NECによれば、この結果、同技術が自動運転を見据えた安全運転支援に効果があることを確認したという。

 IoTの普及に伴って、リアルタイムな通信を活用する自動車の自動運転、工場や倉庫における搬送車の自動運行、検査や宅配のためのドローンの自動運行などのサービスの実現が期待されているが、これらのサービスでは、モバイルネットワークを活用して位置情報・カメラ画像などの周辺情報をリアルタイムに共有することで、衝突を回避し、より安
全な自動運行を実現する必要があるという。

 しかし既存のモバイルネットワークでは、各無線基地局に接続する端末の数が増えるほど、端末1台あたりの通信遅延が増加してしまう。また、通信遅延に影響のある無線品質は端末ごとに異なり、刻々と変動するため、例えば自動車が多数集まる交通量の多い交差点などの場所で安定的に通信遅延を抑制することは困難だったとのこと。

 そこで今回は、横須賀リサーチパーク内に、通信モジュールを搭載した車両を走行させ、「適応ネットワーク制御技術」を活用して、自動運転におけるリアルタイムな周辺情報を共有するためのフィールド実験を実施した。

 具体的には、車両に搭載した通信モジュールから、適応ネットワーク制御技術を搭載したMECサーバーへ、車両の位置情報を定期的に送信させた。サーバー側では、受信した各車両の位置情報を収集・分析し、危険度を判断するとともに、接近車両へ注意喚起情報を送信している。

 さらに、「Context-aware Service Controller」を活用し、危険度の高いエリアに無線リソースを優先的に割り当てるための制御情報(許容遅延時間)を基地局へ送信。基地局では、MECサーバーから受信した制御情報(許容遅延時間)を基に、車両の位置によって無線リソースを動的に割り当てている。

フィールド実験の概要
フィールド実験のシナリオ

 この実験の結果、交差点で多数の車両が基地局と接続して通信を行う混雑した状況下においても、モバイルネットワークで発生する通信遅延を抑制し、車両同士で遅延時間が100ミリ秒以内となるリアルタイムな注意喚起情報の共有が可能なことが確認できたとのこと。これにより、混雑した通信環境でも、安全運転支援において安定的かつ信頼性の高いサービスを提供可能になるとしている。

横須賀リサーチパークにおけるフィールド実験の様子

 NECはこの技術について、自動車の安全運転支援に加え、今後、工場や倉庫における自動搬送車、警備ロボット、災害時の調査ロボット、検査や宅配のためのドローンの自動運行など、さまざまな領域の社会システムへの応用を目指すとしている。