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日立、ランダムなノイズを利用して理論上解読が不可能なレベルで長距離の暗号通信を可能にする技術を開発
2018年3月14日 06:00
株式会社日立製作所(以下、日立)は13日、LANケーブルでインターネットに接続された環境において、事実上暗号解読が不可能なほどの高い安全性を実現する暗号通信技術を開発し、技術を搭載した通信装置を試作したと発表した。
開発した通信技術では、まず、あらかじめ送受信者間で共通鍵を共有する。送信者はデータの送受信に先立って、任意の乱数を共通鍵をパラメーターにして変換(誤り訂正符号化)し、さらにランダムなノイズを加えることで、意図的にエラー(ビット誤り)を含んだ状態にして受信者に送信する。
続いて、送受信者は双方で送受信した乱数から秘密鍵を生成し、その秘密鍵を使ってメッセージを暗号通信する。この際に、受信者側にあるエラーを含んだ乱数(誤り訂正符号化されている)は共通鍵を使ってノイズが除去された状態で復号されており、エラーは訂正済みとなる。
第三者が暗号化されたデータ(乱数およびメッセージ)を傍受してメッセージを解読するためには、秘密鍵を推定する必要があるが、傍受した乱数を元に推定しようとしても、共通鍵を持たない第三者は誤り訂正符号を復号できないためにエラーを訂正できず、秘密鍵の推定ができない。また、暗号化されたメッセージを元に秘密鍵を推定しようとしても、秘密鍵には共通鍵に起因する規則性がないために推定することができず、結局、共通鍵の全数探索が必要となり、事実上暗号解読が不可能なほどに安全性が向上するとしている。
さらに、今回の技術では、データ送受信に先立って送信される乱数に加えるノイズが大きいほど効率的に安全性を確保できるが、その一方で正規受信者が除去可能な範囲にノイズを設定する必要があると説明。そこで、試作機では光の位相揺らぎを利用した理想的なノイズ発生器を送信機内に設置し、ノイズの大きさを制御可能にした。また、これにより伝送路に特別に要求される性質がなくなり、ノイズを加えた乱数を通常のデジタル信号として送受信できるようになったため、光ファイバーなどの特定の伝送路が不要になり試作機ではLANケーブルを接続するだけで、伝送距離の制限なく暗号通信が可能となっている。
オープンネットワークを介して試作機の通信実験を行い、乱数および暗号化されたメッセージが一般の伝送路を介して送受信可能なことを確認。今回の試作機では共通鍵の長さは1900ビット、全数探索数は10の572乗となり、宇宙年齢の138億年を使っても解読が困難なレベルの安全性を実現したとしている。
日立では今後、今回の技術を高いセキュリティが要求されるエネルギー、金融、鉄道管理、防衛などの分野へ適用し、安心・安全な社会の実現を目指すとしている。また、成果については、3月17日から早稲田大学で開催される「第65回応用物理学会春季学術講演会」において発表する予定。