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富士通研究所、データセンター空調の省エネを実現する技術を開発
高精度な予測技術により空調電力を20%削減
2016年6月29日 15:44
株式会社富士通研究所は29日、データセンターの空調設備の省エネ運用を可能にする、温度や湿度などの高精度な予測技術を開発したと発表した。
富士通研究所では、データセンター特有の課題である、情報機器の出し入れやラック配置の変更など動的な状態変化に柔軟に対応するため、得られたデータから空調の効果を予測するモデルを逐次構築する高精度な予測技術を開発。空調の省電力化を可能にした。
データセンターの省電力化のためには、全電力量の30~50%を占める空調設備の電力削減が効果的かつ重要となる。従来のデータセンターの空調設備は、設置されているサーバーなどICT機器の稼働率が増加しても管理温度や湿度が維持されるよう、データセンター内に設置された各種センサー情報に基づいて運用されており、一定の設定値を超えると安全のため急速に冷却をするなど、過剰な空調運用が行われていた。
これに対し、溶鉱炉や自動車、ロボットなどで活用されている、将来の値を予測するモデルベース制御の手法を用いる事により、過剰運用低減による空調電力削減が期待できるが、データセンターにおいては内部の情報機器、レイアウト、空調設備など設置機器が頻繁に変更されるため、構築したモデルが実際と乖離していくことから、予測精度が低下し、適用することが困難という課題があった。
富士通研究所では、データセンターにモデルベース制御を適用するため、状態に応じてモデルを構築できるJIT(Just In Time)モデリングを適用した。従来のJITモデリングでは高精度な予測が困難だったが、機械の稼働率や風量など空調機設備の状態を新たに組み込んだデータベースを作成し、予測対象に対して有用な情報を計測データからだけでなく、空調機設備状態からも最低1つ以上自動で選択するという条件を設定した。
選択した変数を使って予測精度の高い予測モデルを作成することにより、予測精度の向上に成功。これにより、データセンターの頻繁な状態変化に対応可能な、逐次モデルを構築する高精度な先読み予測技術を実現した。
開発した技術について、100ラック規模の実データを利用したシミュレーションを行い、頻繁な状態変化においてもサーバー給気の予測温度を最大±2.1℃、平均±0.17℃の高い精度で予測できることを確認した。この結果をもとに、年間のサーバー電力量7000万kWh、空調電力量2200万kWhの1000ラック規模のデータセンターの条件で試算すると、約20%にあたる450万kWhの省電力化が見込まれるという。
富士通研究所では、今回開発した技術を富士通株式会社が運営するデータセンターで2016年度中にトライアル後、2017年度に実稼働するとともに、富士通の運用管理向けインフラストラクチャーソフトウェア「FUJITSU Software ServerView Infrastructure Manager」への実装を予定している。