【Interop 2012】最新技術が集まるInteropの“目玉”、ShowNetレポート


今年のShowNetバックボーンの図。PDFファイルをInteropのサイトからダウンロードできる

 ネットワーク技術に関するイベント「Interop Tokyo 2012」の展示会が、6月13~16日に、千葉県の幕張メッセで開催されている。

 Interop Tokyoは展示会であると同時に、各社が最新のネットワーク機器を持ち込んで相互接続性や新技術をテストしデモする場でもある。この、国内最先端ともいえる会場の実験ネットワークが、ShowNetだ。

 今年のShowNetのテーマは「Reborn to The Future(未来に向けた再生)」。昨年まで危機感を抱いていたIPv4アドレス枯渇が現実となったあと、今年は「その先に何があるのか」をテーマに掲げたのだという。

 ShowNetでは毎回恒例の企画として、ShowNetの設備を見学する「ShowNetウォーキングツアー」を一日数回開催している。これに参加すると、NOC(Network Operations Center、ネットワークの中枢)やPOD(Pedestal Operation Domain、ネットワークの中継地点)についてNOCメンバーによる解説つきで学べる。

 ここでは、ShowNetウォーキングツアーの様子を中心に、今年のShowNetの様子をレポートしたい。

 

データセンター間をVPLS+MC-LAGで接続

 ShowNetのNOCは、ホール5の最も連絡通路側に、大きく設けられている。

 今回のNOCは、1つのバックボーンと、データセンターに見たてたコーナー2つから構成。バックボーンとデータセンターの間や、データセンター間の通信も実験されている。なお、立ち並ぶラックのそれぞれの横にホワイトボードが設けられ、NOCメンバーの思い思いのメッセージが書かれているのは、毎年の楽しい趣向だ。

 2つのデータセンターの中では、それぞれイーサネットファブリック(マルチパスイーサネット)技術を利用。データセンター1ではシスコFabric Path技術を、データセンター2(右)はブロケードVDX技術を採用している。

 両データセンターの間は、OTVによるL2 over L3トンネリングのほか、VPLSとMulti Chassis-LAG(MC-LAG)によるデータ間マルチサービス網をL2冗長構成で接続している。

 なお、NOCのサーバーはほとんどを仮想化することで、直前になって物理サーバーが届いても、あらかじめセットアップした仮想サーバーを動作させるだけでよいようにしているという。

ShowNetのNOCデータセンターに見立てたコーナー
バックボーンとデータセンターを接続する「Transport」ラック。左はバックボーン側、右はデータセンター側
データセンター間のVPLS with MC-LAG接続は、データセンター1側(左)はブロケードMLXeとXMR8000で、データセンター2側(右)はジュニパーMX80で接続
データセンター内にイーサネットファブリック技術。データセンター1(左)はシスコFabric Path技術、データセンター2(右)はブロケードVDX技術を採用。両データセンター間をシスコのNexus 7000によりOTVでL2 over L3接続

 

バックボーンでDPIによる監視や経路制御も

 バックボーンのコーナーでは、大手町に接続する外部接続から、バックボーンを通り、各ブースの接続を収容するところまで、さまざまなラックが並ぶ。

 ネットワーク監視のラックも目立ち、通信内容を検査するDPI(Deep Packet Inspection)を使い、問題パケットを落とすだけでなく、攻撃を分析したり、トラフィックを可視化したり、キャッシュに回したりといった試みもしている。今回は、テーマの一つに標的型攻撃対策も掲げており、入り口と出口でバックボーンのトラフィックを監視している。

 ここ数年のNOCでおなじみ、情報通信研究機構(NICT)による、攻撃など通信の流れをビジュアライズするアラートシステムの最新版「DAEDALUS」も展示されている。

大手町と接続する「External」ラックから、ShowNetのバックボーン「Backbone」ラック、「Backbone/Last Resort」ラック
光スプリッタや光スイッチとその解析の「Backbone/Security」ラックに、DPI(Deep Packet Inspection)でパケットを分析し攻撃などを監視する「Security」ラック。標的型攻撃対策は今年のテーマの一つ
「DPI/Cache」ラックや「DPI/Cache/CGN」ラックに、Webキャッシュや、DPIの結果から特定の種類のトラフィックをキャッシュに向けるシステム。さらに、ブースを収容する「CGN/Exhibitor Service」もあわせ、CGN(Carrier Grade NAT)や、CGN+IPv6移行技術(DSlite・464XLAT)なども
攻撃などをビジュアライズするアラートシステムの最新版「DAEDALUS」

 

40Gigabit Ethernetは普及期に入るか

 NOCのバックボーンのコーナーでは、テーマごとのラックも並ぶ。

 40Gigabit Ethernet(GbE)の機器を集め、100GbEの機器もまじえ、相互接続する「40G Festa/Measurement」ラックが設けられている。解説したNOCメンバーの宇多氏は「今年、一気に40GbE製品が増え、値段も下がった。これで普及が進むか」と説明した。

 Interopでは長年IPv6を扱い続けており、今回もNAT64やSA46TなどいくつかのIPv6移行技術を並べる「IPv6 Migration」ラックを設けている。

 OpenFlowもテーマの一つとし、名前が先走っている感もあるのに対し、利用ケースを提示する。ShowNetのスタッフの“生活”ネットワークの「Life」ラックでOpenFlowを導入し、インシデントが起きたときにDPIにフローを向けて解析するシステムも実験している。

 ネットワーク監視でも新しい試みを導入。EtherOAMについては、実ユーザーネットワーク内でのL2イーサネット常時監視や、相互接続試験などを行う。コンソールマネージメントについても、従来の緊急アクセス用途だけでなく、構築初期から実利用に供している。測定も、キャッシュやDPIなどが多重に入っていることから、効率的な検査や検証を試みている。

40GbEと100GbEの機器を集めて相互接続を検証する「40G Festa/Measurement」ラックNAT64やSA46TなどIPv6移行技術を集めた「IPv6 Migration」ラックShowNetのスタッフの“生活”インフラとなる「Life」ラック。OpenFlowを使い、インシデントが起きたときにDPIにフローを向けて解析するシステムも
EtherOAMの「EtherOAM/Management」ラック計測の「Measurement」ラック

 

TV電話でNOCメンバーに質問

 ファシリティについても工夫。目立つところでは、今年のNOCではラックの扉のところにLEDが並び、光る。これを、タブレット端末から制御できる展示もしている。この技術は実用的には、サーバーの温度に応じて色を変えたり、来客にフロア内の道順を示したりするのに使えるだろうという。

 NOCの技術についてメンバーに質問する「ASK NOC」は、従来のホワイトボード方式から、今年はAndroidタブレットからTV電話でNOCメンバーに質問できるようになった。なお、従来NOCメンバーはNOCのガラス張りのブースで作業していたが、今回はバックヤードの部屋で作業している。

タブレット端末からラックの扉に縦に並んだLEDの色を制御
「ASK NOC」では、今年はAndroidタブレットからTV電話でNOCメンバーに質問できる

 

PODでOpenFlowやIPv6移行技術を体験

 PODは、ShowNetへの接続を提供する、ネットワークの中継地点だ。今回は4ホールと6ホールの2カ所に集約されている。各PODにはラックが1つ置かれ、スイッチ類やコントロール系の装置などが組まれている。さらに4ホールのPOD4には、OpenFlowを使った経路切り替えのデモも実施されている。

ネットワークの中継地点POD4POD4の機器が1つのラックに収められている。上のほうにコンソールサーバーSmartCSなどコントロール系が、下のほうにスイッチ類が並び、中央にNTPの時刻を表示するSEIKO Time Displayが置かれている
Web画面上の操作でOpenFlowにより接続を切り替えるデモ

 また、POD4前は、Ethernetの接続を用意し、ShowNetアクセスを体験できるコーナーにもなっている。このEthernetケーブルは、DS-LiteやNAT64、464XLAT、SA64TといったIPv6移行技術ごとに分かれており、それぞれを体験できるようになっている。なお、ShowNetアクセスには、無線LANも用意されている。

ShowNetアクセスコーナーに用意されたEthernetケーブル。IPv6移行技術ごとに色が分かれており、ラベルも張られている
アクセスポイントどうしで接続して広い範囲をカバーする、メッシュ型無線LANのアクセスポイント

 そのほか、出展社からのトラブル報告などを受け付けるヘルプデスクとなる「Network Service Center」も通常どおり運用。今年は、長年使ってきたチケット(課題)管理システムを、HTML5+CSS+JavaScriptの今風の構成で全面的に書き換えたのだそうだ。

ヘルプデスクとなる「Network Service Center」

 以上のネットワーク設備や技術について、詳しく知りたくなったら、ShowNetウォーキングツアーに参加してみるとよいだろう。ただし、定員に限りがあり、参加者が多い場合は抽選となるのでご注意を。

ShowNetウォーキングツアーの予定表。今年は、同行して解説する講師の名前と得意分野も公表されているShowNetウォーキングツアーの目印の旗
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