【MS WPCインタビュー】クラウド戦略の中核にはパートナーのビジネスが組み込まれている

米Microsoftのクラウド戦略担当ディレクターに聞く


 米Microsoftは7月11~15日(米国時間)の5日間にわたり、米国Washington D.C.で「Microsoft Worldwide Partner Conference(WPC) 2010」を開催した。会期の終わりが見えてきた14日夕刻に、同社のクラウド戦略担当シニアディレクターのGretchen O'Hara氏にまとめのインタビューを行ったのでご紹介したい。

――Microsoftのパートナー支援プログラムとしては、どういったものが用意されているのでしょうか?

Microsoft クラウド戦略担当シニアディレクターのGretchen O'Hara氏

O'Hara氏:Microsoftは、パートナーのクラウドへの移行を支援するための施策をいくつか発表した。たとえば、“Business Builder for Customer Service”というガイドラインは、顧客をセグメント別に分類し、どんな変化をすべきか、どう考えていくべきか、クラウドからどうやって利益を得るか、新しく始めるべきか移行すべきか、移行サービスをいくらに設定すればよいか、といったことを具体的に記述している。これは、クラウドのパイオニアとして活動を開始したパートナーからの要望に基づいて、Microsoftとパートナーの協力によって作成されたものだ。

 また、“Profitability Modeler”というツールも発表した。これは、パートナーがクラウド・サービスをどうやって販売するかという点だけでなく、販売後のビジネスを査定するために役立つツールだ。どのようなサービスでどのくらいの売り上げが可能か、といったP/L(損益計算書:Profit and Loss)的な視点でキャッシュフローを可視化したり、どのくらい投資したらよいかのガイドラインとなる収益モデルを作成したりすることができる。

 さらに、「クラウドにコミットしたいが、MPN(Microsoft Partner Network)にどうやって参加したらいいか分からない」というパートナーのために、2つの施策を発表した。1つは“Microsoft Cloud Essentials”というサブスクリプション・サービスだ。パートナーがこのサービスに登録してトレーニングを受けると、内部利用のためのBPOSおよびCRM Onlineがそれぞれ250シート分無償提供される。また、Windows AzureおよびWindows Intuneのディストリビューターツールも無償提供される。

 もう1つは“PinPoint”で、プリセールスのためのマーケットプレイスのようなものだ。クラウドサービスを始めたいというパートナーのためのプログラムとなる。

 もっと深くクラウドに関わりたい、あるいは既にクラウド・ビジネスを始めているがさらに加速したいというパートナーのためには、“Microsoft Cloud Accelerate”というプログラムも発表した。これもMPNの一部で、プロモーションのための支援プログラムとなるが、このプログラムを利用するには条件がある。150シート以上の契約を3件以上獲得するかWindows Azureの認定を受けてアプリケーションもしくはプラットフォームを開発しているかの、どちらかを満たしていることが必要だ。

 「売る」か「開発/構築している」か、いずれかの要件をクリアしていれば、シルバー認定を受けたアドバイザーの支援を25時間無償で受けることができる。またプリセールス担当者の電話サポートは無制限に無償で受けられる。これは、クラウド・サービスにある程度コミットしてくれたパートナーのためのプログラムで、10月から開始する予定だ。

――Microsoftの、クラウドに対するコミットメントを聞かせてください。

 Microsoftは、パートナーのクラウドへの移行にコミットしていく。今週Microsoftが発表したさまざまな施策は、パートナーに対するMicrosoftのコミットメントの具体的な表明だ。さらに重要なことは、Microsoftのクラウドサービスの中核部分にパートナーのビジネスを組み込むことを最初から想定している点だ。単なるコミットメントだけではなく、構築にもきちんと取り組んでいる。こうした取り組みは市場でもユニークなものだ。
 具体的な例としては、“Delegated Admin”というものがある。これは、パートナーがマネージメント・サービスを提供するための機能となる。また、Windows Intuneには“Multi Client Console”がある。これは、パートナーの1つのデスクトップから複数の顧客のシステムの管理ができるようにするものだ。

 パートナーのビジネスモデルは変化していくことになるが、それは“インクリメンタル”な変化であり、急激な変化ではなく漸進的な変化だろう。従来のオンプレミスのビジネスは当面は健全な状況を維持し、その上で新たなクラウド市場が立ち上がると考えている。たとえば、オンプレミスでLotus Notesを使っていたユーザーがExchange Onlineに移行するなど、競合から顧客を奪うことで成長していけるチャンスがある。

――パートナーからの反応はどうなのでしょうか?

 パートナーからの反応として感じているのは“エキサイトメント”だ。パートナーからも“We are all in”ということで、「自分たちも一緒にやりたい。どうすればいいか」という情熱的な反響を感じている。とはいえ、発信した情報は膨大なので、消化するには相応に時間が必要だろう。

 今回のWPCでは12,000名が参加登録したが、そのうちの7,000名は“Cloud Track”に登録し、クラウド関連の講演を聴いてくれた。多くの人がクラウドに関心を持ってくれていることは間違いない。



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(渡邉 利和)
2010/7/20 06:00