週刊海外テックWatch

急騰629%からの急落 中国Unitree上場が映すロボット大国の光と影

バブル懸念、演出されたデモ、そして米中対立という影

 では、実際の技術水準はこの熱狂に見合っているのだろうか。4月に北京で開催されたハーフマラソン参加チームは、前年の約20から100超に急増したが、Scientific Americanの取材によると、2026年大会の出走ロボットのうち自律走行だったのは38%にとどまり、残りは遠隔操作によるものだったという。

 IFRは2026年5月の分析で、華やかな公開実演にもかかわらず、実際の生産現場での能力は依然デモ機やパイロットプロジェクトの域にとどまっていると指摘している。CNNによると、Unitreeの2025年1~9月のヒューマノイドの売り上げの半分以上が研究・教育向けで、産業用途は10%未満だった。

 当局も警鐘を鳴らしている。Fortuneによると、中国の経済政策を司る国家発展改革委員会(NDRC)は2025年11月、ヒューマノイドロボット産業に「バブル形成」のリスクがあるとの見解を、異例の形で公式に示していた。同委員会の報道官は、新興産業にはつきものの「成長スピードとバブルリスクのバランス」という課題が、ヒューマノイドロボット分野にも当てはまると述べている。

 こうした懸念は業界内にもある。多数のメーカーが乱立して価格競争の末に淘汰されたEV産業の轍を踏む可能性だ。Caixin Global(財新)は、廉価な準ヒューマノイド機や娯楽用途のロボットを中心に、すでに同様の「内巻(過当競争)」の兆候が見られると指摘している。

 地政学的な課題もある。米国防総省は6月、Unitreeを含む65社を、中国の軍民融合戦略に関与する企業とみなす「Section 1260Hリスト」に追加した。7月には米連邦通信委員会(FCC)も、バックドアなどの懸念から国外で製造された高度ロボットの新規モデルに機器認証を禁止して、締め出すことを決めた。Unitreeは海外売上比率が4割を超えており、こうした規制強化は今後の成長シナリオへの現実的な逆風となりうる。

 目論見書には2026年第1四半期の調整後純利益が前年同期比53%減の4000万元(約600万ドル)にとどまったことが記載されており、急成長する売上高と裏腹に、収益性には陰りも見えている。

 IPOの後の株価急落は、実需の乏しさ、演出されたデモと実力とのギャップ、国家戦略への期待、そして地政学リスク——複数の力がせめぎ合った結果かもしれない。

 IPO翌日の8月20日、Wang CEOは北京で開かれた世界ロボット大会の基調講演で、今後の見通しを示した。Business Insiderによると、汎用ロボットが未知の環境の作業の8割をこなせるようになる「ChatGPTモーメント」の到来は、早くて2~3年、あるいは5~10年かかると述べたという。