週刊海外テックWatch

急騰629%からの急落 中国Unitree上場が映すロボット大国の光と影

「エンボディドインテリジェンス」を核に据えた国家戦略

 IPO初日、Counterpoint ResearchのアソシエイトディレクターEthan Qi氏はCNNに、「UnitreeのIPOはヒューマノイド業界において主要なマイルストーンになる」と語っている。その背景には、国策とも言える中国政府の後押しがある。経済成長の鈍化と労働人口の減少に直面する中国にとって、ヒューマノイドロボット産業は次の成長エンジンを担う国家的な賭けだ。

 中国政府は2023年の政策文書「人形機器人創新発展指導意見」で、ヒューマノイドロボットを「技術競争の新たな高地であり、未来産業の新たな最前線」と位置付けた。また、2026年3月に採択された中国の「第15次五カ年計画(2026~2030年)」では、ヒューマノイドロボットを含む「エンボディドインテリジェンス(具身智能)」が、核融合と同じ戦略的階層に位置付けられている。

 外交専門誌The Diplomatは、こうした位置付けが600億元(約82億ドル)規模の国家AI産業投資基金や地方政府のマッチングファンド、国家系ベンチャーキャピタルからの支援につながると分析。五カ年計画が具体的な対象まで指示している点を挙げて、「これは願望的な表現ではなく事実上の調達指令」と評している。

 国際ロボット連盟(IFR)の伊藤孝幸会長は、五カ年計画の位置付けについて「他のあらゆる政府活動の方向性を定める第一義的な枠組み文書として機能する」と述べ、数千に及ぶ下位の分野別・地域別計画が目標との整合を義務付けられるとの見方を示している。

 中国は産業用ロボットの稼働台数で、すでに世界最多の規模となっている。この厚みのある製造業基盤とサプライチェーンが、ヒューマノイドロボットへの参入障壁を下げている。ドイツのシンクタンクMericsのレポートによると、中国国内には約150社のヒューマノイドロボット関連企業が存在するという。

 CNNはInteract Analysisの統計として、世界のヒューマノイドロボットの生産の90%を中国が占める一方、生産された機体の約75%が中国国内に納入されていると伝えている。需要も中国内に偏っているわけだ。

 その中でUnitreeは大きな存在感を持っている。同社の発表では、出荷台数は5500体で同国最大。売り上げは2年で10倍以上と、数少ない黒字化に成功した企業でもあるという。