週刊海外テックWatch

外洋に浮かぶAIデータセンター 波力で世界を変えるか、夢で終わるか

錨もエンジンもない、85メートルの発電体

 Panthalassaは「ノード」と呼ぶ巨大な海上構造体を開発している。ゴルフボールがティーの上に乗ったような形状で、高さは約85メートル――ロンドンのビッグベンに匹敵する大きさだ。素材は鋼板で、Financial Times(FT)によると、構造体のほとんどは水面下にあり、AIサーバーを収めた密閉コンテナも海水で冷却される。

 このノードには錨も海底ケーブルもエンジンもない。船で外洋にけん引された後、海上で垂直に立ち上がり、船体の流体力学的形状だけを使って自律的に目的地へ向かう。複数のノードを展開すれば協調して一つのデータセンターとして機能する。沿岸部に配置する従来の海上データセンターと異なり、外洋・遠洋で運用することを想定している。

 発電の仕組みはシンプルだ。Sheldon-Coulson氏は、CBS Newsにこう説明している。「ノードが波で上下すると、チューブ内の水が上部に押し上げられる。水が球体部分に入るとタービンを通過し、タービンが回転して電気を生む」。ヒンジもフラップもギアボックスも持たない構造が、過酷な外洋環境での耐久性を高めるという。

 そして生み出した電力は陸へは送らず、ノード上でAIサーバーを稼働させる。演算の結果のデータだけを低軌道衛星経由で陸上に送信するという。FTはこの接続にSpaceXのStarlinkが使われると伝えている。

 Sheldon-Coulson氏は「電力を現地で使うことが最も重要な洞察だった」とFTに語っている。「われわれは決して電力を陸へ送らない。それが過去に試されたすべての海洋エネルギーと大きく異なる点だ」と強調する。

 同社は2021年と2024年にOcean-1、Ocean-2、Wavehopperの各プロトタイプの海上試験で能力を実証したとしている。2026年中に北太平洋でOcean-3パイロットシリーズを展開し、2027年の商業展開を目指す計画だ。