大河原克行のキーマンウォッチ

「Integrated IT Company」の意味を郡信一郎社長に聞く

「技術」を語り始めたデルが目指す新たなフェーズとは?

Future Ready ITの意味合い

――一方で、Dellでは、あらためて「Future Ready IT」という提案を開始しました。これと、Integrated IT Companyとは、どう関連づけることができますか。

 いま、100%クラウドで済むと考えているお客さまはいません。当たり前のようにハイブリッドクラウドを考えています。お客さまが変わりつつある将来に向けて、それに向けて対応できるものが欲しいと考えており、それを提案するのがわれわれの役割です。

 Future Ready ITは、将来的に有効なITソリューションを、いま提供するものになります。そして、Dellが実現するFuture Ready ITは、やはりIntegratedしたからこそ、提供できるものだといえます。

――Future Ready ITを構成する製品のひとつとして、Dell PowerEdge FXが位置づけられています。その点でも、Dellにとって重要な戦略製品だといえますが、日本市場にはどんなインパクトを与えると考えていますか。

 将来を見た時に、ユーザー企業のITシステムは、ハイブリッドクラウド環境になるのは明らかです。その市場において、差別化するためのツールになりうるのが、PowerEdge FXだといえます。オンプレミスの部分において、必要不可欠なものであるが、差別化にならないという点でも、管理性の高さを享受できますし、アプリケーションの差別化などの用途においては、高密度やCPU性能といったものが特徴になります。

 スモールオフィスや地方の拠点への導入という点で高い成果があがっているVRTX(バーテックス)の経験を生かして、さらに大企業に向けての提案を加速できるという点も、Dellにとっての差別化になります。

PowerEdge FXを持つデルの郡信一郎社長

 この考え方は、戦略的な価格設定としたフラッシュストレージ「SC4020」でも同じことがいえます。

 クラウドは、ITの民主化につながり、中堅・中小企業でも、大企業と同じシステムを使えるというメリットがあると提案してきましたが、裏を返せば、クラウドだけで差別化することは難しいともいえる。

 では、中堅・中小企業は差別化したITシステムを持つことはできないのか。それもおかしな話です。中堅・中小企業においても、持っているデータをもとに、最新のストレージと分析技術を活用して、差別化した製品やサービスを提供でき、事業を拡大することができなくてはならない。

 SC4020は、日本で先行発売した戦略的なフラッシュストレージ製品ですが、これによって実現できる高速な分析を行うことで、中堅・中小企業もメリットが得られる。このように、最新の技術を、お求めやすい価格で提供するというのが、われわれが今取り組んでいる「ITの民主化 第2章」です。日本の景気をさらに良くするためにはどうするか。やはり、中堅・中小企業が元気ならなくてはいけない。

 クラウドというフィールドに立った時に、クラウドだけではない差別化をITの側面からお手伝いできるという点に、われわれの役割があります。

――その一方で、これまでしばらく言及してこなかったPCについても、積極的に発言をはじめたように感じます。

 ソリューションプロバイダーへのシフトを強調するあまり、発言がシステム、ソリューションに偏りすぎたということもあるでしょう。しかし、Integrated IT Companyを目指す上では、PCは重要な役割を示すことになりますし、PC事業にも引き続き力を入れていく姿勢は変わりません。

 PC事業に関する発言が増えたのは、パートナーへのコミットメントとして、あらためて言及したかったという狙いもあるでしょう。PCは、全社売上高に占める比率は高いものがありますし、その事業において手を緩める必要はありません。また、PC事業が元気でないと会社の成長がない。

 Dellの大半のお客さまは、PCをはじめとするエンドユーザーデバイスがきっかけとなって取引が始まる場合が多い。それは、今も、昔も変わりません。新たな顧客を増やしていくという点においても、PCは重要な製品だといえます。

(大河原 克行)