米IBMも無料オフィスソフト、今度こそMicrosoft Office追撃なるか?



 米Microsoftの「Microsoft Office」の牙城を崩そうと、ライバル各社が挑戦を続けている。今度は米IBMが無料のオフィススイート「Lotus Symphony」を発表、Microsoft Officeの新たな脅威となった。オフィススイートをめぐる戦いは、どう展開していくのだろうか―。


 Lotus Symphonyは、IBMのコラボレーションスイート「Lotus Notes 8」の一部であるワープロ、表計算、プレゼンテーションアプリケーションで構成されるオフィスソフトウェアで、現在、ベータ版をダウンロードできる。ベースはオープンソースのオフィススイートOpenOffice.orgで、オフィスフォーマットは「OpenDocument Format(ODF)」を採用。Microsoft Officeとの互換性もある。

 Lotus Symphonyへの関心は高いようで、IBMによると、公開から1週間でダウンロード件数が10万を突破。予想を上回る人気で、IBM製品のダウンロード新記録を樹立したという。


 無償版でMicrosoft Officeに対抗するというのは、決して新しい動きではない。OpenOffice.orgは2002年から正式版を提供しているし、米Googleは2006年に、SaaS形式のオフィスアプリケーション「Goole Docs & Spreadsheets」をリリースしている。

 だが、この9月、この分野が大きく動き始めたことを思わせる発表が相次いだ。IBMの発表の前日9月17日には、GoogleがGoole Docs & Spreadsheetsにプレゼンテーション機能を追加した「Google Document」を発表した。これで“オフィス文書の3種の神器”がそろったことになる。

 また同じ日、米Yahoo!が米Zimbraの買収を発表した。Zimbraは、Ajaxなどの先進技術を利用して、オフライン/オンラインで利用できるコラボレーションソフトを開発・提供するベンチャー企業だ。同社を獲得することでYahoo!は、Webメールの強化だけでなく、オフィスアプリケーション分野への進出もにおわせている。

 さらにはMozilla Foundationも同日、電子メールとコミュニケーション分野にフォーカスした部門を立ち上げると発表した。これらからの動きのキーワードは「Webベース」「コラボレーション」、そしてはやりの言葉では「SaaS」だ。


 だが、こうした動きで、シェア95%ともいわれるMicrosoft Officeの優位は崩れるのだろうか?

 Microsoft Officeを導入する企業はサーバーとクライアントに高額のライセンス料を払い、メンテナンスに悩まされている。だが、無料版が登場したからといって、簡単には移行できない理由がいくつかある。

 まずファイルフォーマットだ。対Office陣営のほとんどがMicrosoft Officeフォーマットとの互換性をうたっているが、100%ではない。

 だがそれよりも大きなハードルは、“慣れ”だろう。新しいソフトウェアに移行した場合、再度操作方法を学ぶ労力とコストはばかにならない。このようなユーザー側の現状に加えて、Microsoftは10年間のサポートを提供することから、“移行を検討したが、結局は使い慣れたOfficeにしておこうか”というのが実情のようだ。

 だが、Microsoftも安泰ではないだろう。フォーマットに関しては、9月初め、自社の「Office Open XML(OOXML)」がISO(国際標準化機構)の承認取得に失敗している。

 また、SaaSの波がオフィスアプリケーション分野にも及ぶことは必至だろう。大手ITサービスの仏Capgeminiは9月初め、Googleのアプリケーションスイート「Google Apps Premier Edition」を大企業向けに導入支援するサービスを発表、SaaS時代の本格化を思わせた。

 実際、企業の関心も高まっている。米InformationWeekが行った読者アンケート調査によると、代替ソフトとして有力と思うのは「Google」がトップで35%、「OpenOffice」は23%。「なし、Microsoftのみ」と回答した企業は31%だった。つまり、約7割が代替案を「考えたことがある/考えている」ということになる。ユーザーは確実に、Office以外の選択肢に関心を持ち始めている。

 しばらくは、Microsoftと対Microsoft陣営が攻防戦を繰り広げることになりそうだ。慣れ親しんだ環境から移行するリスクとコストよりも、新しい環境のメリットが上回ったとき、市場は動くだろう。この結果のシェアは別として、競争によってコストや機能面での改善が起こることは間違いない。ユーザーには朗報である。

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(岡田陽子=Infostand)
2007/10/1 09:00