米Palmが身売り? 買収先、そして新OS発表



 米Palmの身売り話がメディアをにぎわせている。かつて世界のPDAでトップシェアを誇った同社も、ここ数年、すっかり存在感が薄くなった。PDA市場の縮小で、スマートフォンのメーカーへと脱皮を図ったが、巨大メーカーひしめく携帯電話市場では、マイナーな位置だ。競争の激しい業界で他社に飲み込まれてしまうのだろうか―。


 「われわれは、年末までに新しいシステムソフトウェアを展開する。これがPalm OSを前進させ、現代化させてくれるだろう」。PalmのEd Colligan社長兼CEOは4月10日、ニューヨークで開いたアナリスト向け会合で、こう述べて、新たなスマートフォン用プラットフォームとしてLinuxを採用することを明らかにした。

 新しいLinuxベースのOSには、まだ名前はないようで、「Palm Operating System on a Linux core」(LinuxコアによるPalm OS)と呼んでいる。

 Colligan氏によると、新OSの開発は数年前から進めており、既存のPalm OSアプリケーションをサポートしながら、進化させるという。たとえば、音声とデータの同時処理、オンラインアプリケーションなどを利用可能にするとしている。年内にLinux版スマートフォン「Treo」を投入する計画だ。

 現在のPalmは、2003年のハード・ソフト分社でできたハード事業会社だ。もう一方のソフト会社を買収した日本のACCESSから昨年12月、Palm OSの非独占の恒久ライセンスを4400万ドルを支払って受けているが、自前OSは持っていない。

 この発表は、Palm買収のうわさや憶測が飛び交う中で行われた。うわさの一掃を狙ったものとみられる。

 Palmの買収のうわさは、以前から何度か浮上しているが、今年に入ってまたにぎやかになっている。とくにThe Wall Street Journalが3月5日、投資銀行のMorgan StanleyとともにPalmが事業売却を含めたオプションを探っていると報じたのがきっかけとなって、メディアや投資家は、すぐにも買収発表、と色めき立った。

 同紙は、Palmが携帯電話市場で占めるシェアは微々たるものであり、しかも、Appleの「iPhone」が強力な前評判をもって参入してくること。さらに、いくつかの大株主が業績に対する不満を取締役会に伝えていることも紹介しながら、売却の可能性があるとしている。


 こうした中、同22日にPalmが発表した2007会計年度第3四半期(2006年12月-2007年2月期)決算は、売上高が前年同期比5.6%増の4億1050万ドルと好調だった。スマートフォンの販売が同30%増の73万8000台と過去最高になったことが寄与している。だが、純利益は同60%減の1175万ドルという大幅減益で、高コスト体質などが響いているという。

 スマートフォンでは価格競争が繰り広げられており、今後も厳しい環境が続く。売却のうわさが絶えないのには、こういう背景がある。

 そのPalmの買い手としては、Motorola、Nokia、ほかにいくつかの投資会社の名前があがった。最も新しいのはDellだ。

 Dellは4月9日、Windows Mobile搭載のPDA「Axim」の打ち切りを発表した。Computerworld誌は、これがスマートフォン進出につながるというJ. Gold AssociatesのアナリストJack Gold氏の見方を紹介している。

 「DellはPalmを買収できるだけの資金を持っている」「そして、Palmはすでに、Windows MobileとPalm OSの両方を含む4種類のスマートフォンラインを持っている」(Gold氏)。ただし、Dellの広報担当者は、スマートフォンに進出する計画は否定している。

 Palmの株価は買収情報が流れるたびに思惑買いで大きく動いているが、13日付のFinancial Timesによると、Palmが独立を維持する可能性が高いという。Colligan氏の話として、同社には18億ドルの資金、5億ドルの現金準備があり、負債もないと伝えている。また、Colligan氏は、キャッシュフローは良好であり、売却する考えはないことを重ねて強調している。

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(行宮翔太=Infostand)
2007/4/16 08:44