Sunの復活 Intelとの提携にみるCEOの力量
米Sun Microsystemsと米Intelの戦略的提携は業界を驚かせた。Sunにとってはx86システムのラインアップを広げることになり、Intelにとってはライバルを牽制する意味を持つ。特に、勢いを戻してきたSunにとっては、さらに弾みをつけることになりそうだ。
両社が1月22日に発表した提携の骨子は、大きく、1)SunはIntelのXeonプロセッサを搭載したサーバーを今年半ばまでに提供する、2)IntelはSunのSolarisを支援する―の2つだ。アナリストらはこれを、両社にメリットをもたらす“Win-Winの提携”と受け止めている。
とくに、SPARCチップを持つSunは、x86システムでは、Intelのライバルである米AMDのOpteronを独占的に採用してきており、Intelとの提携は戦略転換となる。SunとIntelの提携には、x86システム事業を拡大するというSunの狙いと、IntelのXeonの技術改善のタイミングが重なったこともあるし、両社がとる柔軟化路線による歩み寄りでもあるだろう。
その背景を見てみよう。インターネットバブル崩壊で大きな痛手を受けたSunは、それまでのSPARC/Solarisから、多角化戦略にシフトした。OSでは、Linuxのサポートのほか、2004年に宿敵の米Microsoftと和解し、相互運用性の確保に取り組んでいる。また、2006年にはJavaのオープンソース化に踏み切った。プロセッサでは、2003年にAMDと提携、その成果である「Sun Fire X2100」「Sun Fire X4100」などのx86システムラインはおおむね順調に推移している。
一方のIntelも、90年代までは“Wintel”と呼ばれたMicrosoftとの固い結びつきが戦略の中心であったが、やはり多角化の道を歩んでいる。Windowsのライバルである「Mac」の米Appleとは2005年に提携、同社にもチップを供給している。
それぞれの柔軟化路線には、この2年の間に前任者からバトンタッチされた2人の新CEOの影響が大きい。IntelのCEO、Paul Otellini氏は、2005年5月にCraig Barrett氏と交代し、SunのJonathan Schwartz氏は、2006年4月にScott McNealy氏からCEO職を引き継いでいる。それぞれの前任者は、公の場で競合他社に対して辛口のコメントをすることで知られたが、新CEOの2人は、これとはイメージが違う。実際、米CNET News.comは、この2人だから今回の提携を実現しえた、と分析している。
特にSunのSchwartz氏は高く評価できそうだ。数年前に持ち上がり、公開書簡も行き交ったJavaのオープンソース化も思いのほかスムーズにこなした。今回の話も、Schwartz氏が最初にOtellini氏に電話をかけたことから始まったという。
Intelとの戦略提携発表の翌1月23日に公表した会計年度第2四半期(10月ー12月期)決算では、Sunの売上高は前年同期比7%増の35億6600万ドル、純利益は1億2600万ドルとなり、見事に黒字転換を果たした。
Sunは提携によって、x86システムのラインアップを拡大し、顧客のニーズに応えることになる。赤字から脱した同社をどうかじ取りしていくのか、Schwartz氏の次の一手が注目される。