危険? 便利? 「Google Desktop 3」が浮き彫りにした課題



 米Googleのデスクトップ検索ソフトウェアの最新版「Google Desktop 3」(ベータ版)に対し、プライバシーやセキュリティへの懸念が各方面からわき起こっている。その一方で、同ツールを自社製品に統合して提供している米EMCは、ユーザーのニーズがあるとしてサポートを維持する意向だ。インターネットユーザーは、便利さとプライバシー懸念の間の選択を迫られているのだろうか。


 GoogleがGoogle Desktop 3を発表したのは、2月9日である。最新版の最大の特徴は、「Search Across Computers」と呼ばれる機能だ。ユーザーのデータの複製をGoogle側のサーバーに作成することで、複数のコンピュータにあるデータやファイルを一括検索できるというものだ。ユーザーは、IDとパスワードを入力して、どのPCからでもファイルにアクセスできる。

 米国を本拠とするプライバシー保護団体、電子フロンティア財団(EFF)は即日、この機能の利用を控えるよう警告した声明文を発表した。このサービスが、パスワード情報を入力したクラッカーにとってワンストップショップとなるだけでなく、政府の召喚があった場合、Googleはデータを開示しなければならず、ユーザーの個人情報が危険にさらされるというのがその理由だ。

 これに対し、Googleは、セキュリティ機能のあるHTTPSページは対象外で格納されるデータは暗号化される、サーバーに30日間格納した後削除される、などと説明した。同社によると、ユーザーは共有するファイルを選択して、この機能をオフにすることもできるという。だが、EFFでは、そんな設定をわざわざ行うユーザーは少ないと見ている。

 さらに企業利用の面からの危険性を指摘したのが、業界への影響力が大きい調査会社、米Gartnerだ。2月16日付の同社のレポートでは、Google Desktop 3の機能を「不吉だが、ユニークな戦略」と評価し、「多くの企業にとって、受け入れられないレベルのセキュリティリスク」としている。このためGartnerは、企業は同ツールのエンタープライズ版を使って管理するか、従業員による利用を遮断するよう推奨している。


 一方、「Documentum」ブランドでコンテンツ管理事業を展開するEMCは、引き続き同ツールのエンタープライズ版をサポートする考えだという。同社は今年1月、Googleのデスクトップ検索ソフトウェアを自社コンテンツ管理ソリューションに統合可能にすると発表していた。米eWeekによると、サポート継続の理由は、顧客の関心が高いためという。また、EMCはバージョンを選択できるオプションを提供するとしている。

 当のGoogleも、ある程度セキュリティの問題があることを認めているようだ。2月20日付のZDNet UKによると、同社の欧州担当マーケティング・マネージャは、Google側は情報を保持しないこと、管理可能な点を強調しつつ、「リスクであることを認める。企業が懸念を抱くのも理解できる」と述べたという。

 Googleは2月21日、同ツールの企業向け最新ベータ版、「Google Desktop 3 for Enterprise」をリリースした。IT管理者の管理機能を強化したもので、管理者が一方的にSearch Across Computers機能を停止できるようになっており、一般ユーザー向けツールで指摘された懸念を回避しようとしている。

 さまざまなサービスがインターネットに移行する中、デスクトップ検索ツールはユーザーにとって非常に有用だ。Google DesktopやSearch Across Computersもそのひとつである。

 だが、セキュリティやプライバシーを保護する規制は、進化する技術やユーザーの振る舞いに対応できていない。EFFも、1986年に制定された現行の米国のプライバシー保護法「Electronic Communication Privacy Act of 1986(ECPA)」では対処できず、新しい規制が必要だと主張している。

 今回の件は、そうした法律と技術の進化の間のギャップを露呈したもののひとつといえそうだ。

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(岡田陽子=Infostand)
2006/2/27 09:05