GoogleとSunの戦略的提携、焦点は対Microsoft?
米Googleと米Sun Microsystemsが戦略提携を発表した。ソフトウェア技術の促進と配布に関するものだが、具体的な内容は実に少ない。だが、両社共通のライバルであるMicrosoftに対抗するという点では、発表された以上のものを含む提携といえそうだ。
10月4日、GoogleのEric Schmidtと、SunのScott McNealyの両CEOはそろって発表会の場に立ち、複数年にわたる戦略的提携を発表した。具体的な発表事項は、Sunが自社Webサイトから「Java Runtime Environment(JRE)」をダウンロードするユーザーに対して、オプションとしてGoogle Toolbarのダウンロードも可能にするということだった。だが同時に、これだけではないと強調して将来への含みを持たせている。
両社のプレスリリースには、JRE、OpenOffice.orgなどのSun技術をプロモーションする可能性について共同で模索する、とあり、「関連分野についてコラボレーションできるのを楽しみにしている」というSchmidt CEOのコメントが続いている。また、McNealy CEOは、Sunがオープンソースソフトウェアのリーダーであると強調しながら、「Googleとの提携により、両社の技術を幅広く提供できるだろう。ユーザーの選択肢を増やし、障壁を低くする」と述べている。
だが、これだけでは何をするのか、よくわからない。
CNetなど米IT系メディアの報道によると、両社の関係者は、GoogleはSunのサーバー製品を購入する、Java Community Process(JCP)に積極的に参加する、共同研究開発を進める、SunはGoogleの広告を購入する―ことなどにも言及したという。さらに、Google ToolbarをOpenOffice.orgに追加する可能性もあると伝えている。
この提携に関しては、発表の前日に発表会の案内が流れてから、業界でさまざまな憶測が飛び交った。そのなかで有力とみられたのは、Googleがオフィスソフトのプロバイダーとなって、自社サービスのユーザーにOpenOffice.orgを利用できるようにするというものだった。
オフィスソフトウェア市場は現在、Microsoftの独占市場で、同社にとってWindows OSと並ぶ大きな収益源となっている。対するGoogleは、検索エンジン以外にも、今回の提携の焦点となったToolbar、デスクトップ検索の「Google Desktop」、電子メールサービス「Gmail」、IM(インスタントメッセージング)の「Google Talk」など、さまざまなサービスを提供している。
Gmailではユーザーに1GBの容量を提供しているが、もし、OpenOffice.orgをこれに組み合わせれば、ネットワーク経由でオフィスソフトウェアを提供するASP的なサービスが可能となる。そして、このWebベースという提供形態は、Microsoftには脅威となるだろう――。また、これはGoogleがダークファイバーを購入しているということからも説得力を持つといえる。
オフィスソフトについては、最近、Microsoftを取り巻く環境は厳しくなっている。OSでは、Windowsに代わる選択肢として、Sunのほか、米Novell、米Linspireなどが、Linuxベース・デスクトップOSを提供しており、少しずつ支持層を広げている。そして、ここで利用されるオフィス製品のほとんでがOpenOfficeなのである。1万5000台のPCをLinuxベースに移行させるプロジェクトを進めている独ミュンヘン市など、公共機関のOffice離れも大々的に報道されている。
Microsoftは現在、次期Officeの「Office 12」(開発コードネーム)の開発を進めている。今月はじめ同社は、「Professional Developers Conference」で、米Adobe SystemsのPDFファイルをネイティブでサポートすることを明らかにした。Wordなどで作成したファイルをPDF形式で保存することができるというものだ。すでに、Office 12のデフォルトフォーマットとしては、同社のXML拡張技術「Open Office Open XML Schemas」の採用が決まっており、少しずつOffice 12はその姿を現しつつある。
GoogleのSchmidt氏はSunに14年間勤務し、McNearly氏の下で働いた経歴を持つ。そしてSunから、Officeの競合製品「WordPerfect」を持つ米Novellに移り、そのあとGoogleのCEOとなった。
ひょっとするとこの提携、Schmidt氏の執念のようなものが背景にあるのかもしれない。