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米国防総省クラウドを中国エンジニアが保守 Microsoft「デジタルエスコート」制度の波紋
2025年7月28日 11:29
政府と議会の激怒、迅速な対応へ
ProPublicaの報道は国防関係者にショックを与えた。Peter Hegseth国防長官は7月18日、X(旧Twitter)で「中国を含むいかなる国の外国エンジニアも、国防総省のシステムの保守やアクセスを許可されるべきではない」と強い調子で語った。デジタルエスコートの問題は「今日のデジタル脅威環境において、明らかに受け入れがたい」と続けている。
Hegseth長官はこの問題を「Obama政権時代に作られた10年以上前のレガシーシステム」と(Trump氏がよく行う論法で)民主党時代の問題と非難し、国防総省全体で類似の活動がないか2週間以内に徹底的な見直しを行うとした。
そのHegseth長官に対して書簡を送ったのは、共和党のTom Cotton上院議員(アーカンソー州選出、上院情報特別委員会委員長)だ。「重要インフラ、通信ネットワーク、サプライチェーンへの侵入によって証明されているように、中国は米国に対する最も攻撃的で危険な脅威の1つ」と述べ、この件について詳細な情報提供を求めた。
事を深刻にしているのは、Microsoft側の説明が関係者を納得させられない点だ。同社は政府に対してエスコートプログラムの詳細を開示していたと主張しているが、元国防総省関係者や情報機関幹部からは、"寝耳に水"という声が上がっている。
Biden政権時代に国防総省の最高情報責任者を務めたJohn Sherman氏は「私はこのことについて知っているべきだった」と述べ、このシステムが国防総省にとって「重大なセキュリティリスク」であると評価した。そして「徹底的な見直し」を求めた。
DISA(国防情報システム庁)は、「エスコート監督体制の下にある専門家は、政府システムに直接アクセスできない。むしろ業務を遂行する権限のある管理者に指導や勧告を行う」とProPublicaにコメントしている。
イェール大・法科大学院のPaul Tsai中国センターの上級研究員Jeremy Daum氏は、中国の法律によって政府当局者が「正当と見なしたことをしている限り」データを収集可能だ、とProPublicaに述べている。そしてMicrosoftの中国拠点の技術サポートが「スパイを送り込むか、その職に就いている者から情報を取るか」という諜報活動の機会を中国に提供していると警告する。