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製造業を熟知したメーカーのデジタル戦略は ドイツBoschのIoT向けクラウド

米国とドイツの「インダストリー4.0」標準を橋渡し

 Boschのクラウド参入は、すでにクラウド分野で先行するAWS(Amazon Web Services)、Microsoft、Googleなどに対抗するものと見ることもできる。

 Boschの有利な点は、ドイツにデータセンターがあることだろう。セーフハーバー協定の無効化によって、米国のクラウド企業は欧州にデータセンターを持たねばならなくなった。

 とはいえ、AWSなどの大手はすでに欧州にデータセンターを持っており、IoT向けのツールも提供している。ドイツにデータセンターがあるというだけでは、勝つことはできない。それよりも、Boschの独自性は別のところにありそうだ。

 Boschは2015年、米国外の企業として初めて米国の産業機器向けIoT団体Industrial Internet Consortium(IIC)に参加しており、IoT CloudではIICの標準と”Industrie 4.0”といわれるドイツの標準の橋渡しを図っている。

 Wall Street Journalによると、同社はハンブルクに持つ子会社Bosch Rexrothで、IICのリファレンスアーキテクチャをベースにしたソフトウェアを組み込んで、製造と電力消費の管理を行うという。この拠点ではすでにBluetoothなどの無線通信とRFIDタグを利用して人、マシン、部品を結びつけた効率化を図っており、単一の製造ラインで200もの油圧弁を製造できるという。今後、製造コストをさらに下げることができると見ているとのことだ。

 「Industrie 4.0は、ドイツの産業が製造分野で持つ能力を活用して、中国の低コストの製造と米国の製造業復活に対抗することを目的としたドイツの官民イニシアティブだ。だがBoschやSiemensなどの大手のドイツ企業は、産業のデジタル化には国際標準が必要だと気づいている」とWall Street Journalは解説する。

 IoTは始まったばかりであり、クラウドもまだ普及期にある。Forrester Researchのアナリスト、Frank Gillett氏はNews Factorにコメントしている。

 「現時点では、汎用のクラウドを提供する事業者と専用クラウド事業者とのドラッグレース(いわゆるゼロヨン)状態だ。問題は誰が勝つのかではなく、それぞれがどれだけのシェアを得るかだ」

岡田陽子=Infostand