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ライバルはAWSに Alibabaがクラウド事業を加速

「あと3~4年でAWSと同等または上回る」

 AlibabaがAliCloudの拡大の先に狙っているのは、ECでの巨大なライバルでもあるAmazonのクラウド事業AWSだ。

 Wall Street Journalが行ったAWSとAliCloudの業績比較によると、AWSの第2四半期の売り上げは前年同期比81%増の18億2000万ドル(前年の49%増というペースからさらにアップ)。一方、Alibabaの直近(1-3月期)のクラウド事業の売上高は3億8800万人民元(約6300万ドル)。82%増という高成長ながら、規模ははるかに及ばない。

 だがAlibabaの鼻息は荒い。Aliyun社長のSimon Hu氏は「Amazonは現在の(クラウドでの)地位に到達するのに10年を費やした。われわれはまだ6年目であり、あと3~4年でAmazonと同等または上回る業績を達成すると期待している」と述べている。

 中国のクラウドはまだまだ初期段階にある。香港のコンサル企業Bain&Coによると、中国でのクラウド支出は2013年で15億ドル。2020年には200億ドルに拡大すると予想される。一方、グローバルのクラウド市場は、IDCによると、今年2015年で1180億ドルに達する。

 とはいえAliCloudの中国内での存在感は圧倒的だ。Wiredによると、中国では規制の問題からAmazonもMicrosoftも地元のパートナーを経由して提供しなければならないのに対し、AliCloudは数十万台のマシンで構成されるインフラを持ち「中国では独占」(AliCloudのチーフアーキテクト)という。Netcraftのデータでは、AliCloudは5月時点で中国最大のホスティング企業であり、世界ベースでは4位につけている。

 Alibabaはもちろん中国だけで満足はしない。現在AliCloudのグローバル顧客の多くは国外展開している中国企業だが、Hu氏は、米国顧客を狙っている、とWall Street Journalに語っている。データセンターの増設はその布石だ。

 一方で課題もある。まずAliCloudは国外ではAmazonのようなブランド力がない。また、Bloombergは中国外ユーザーが中国企業のクラウドに対して持つ根強い警戒感を指摘。「(クラウドは)当面は米国、欧州、日本が大きな市場であり、これらの市場の参入障壁は中国企業にとって高いだろう」とのBain&Coのアナリストの見解を紹介している。

 AliCloudが中国のクラウド市場の拡大とともに成長していることは間違いないだろう。さらに中国内外で安定したポジションを得るのかが注目される。

岡田陽子=Infostand