クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

10ギガビット、マルチコアCPUに対応したソフトウェアルータ――SEIL/x86 Ayame

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2020年春号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2020年3月30日
定価:本体2000円+税

 株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、高機能ソフトウェアルータ「SEIL/x86(ザイル・エックスハチロク)」シリーズの上位製品として、新たに10ギガビット対応の「SEIL/x86 Ayame(アヤメ)」を2019年12月19日から提供開始した。

 「SEIL(ザイル)」シリーズは、1998年から2019年9月末時点までで累計約17万台の販売実績があるIIJ開発の企業向けルータ。「SEIL/x86」は、SEILシリーズと同等の機能(IPsec、L2TPv3 over IPsec、L2TP/IPsecなどのVPN機能、および、OSPF、RIP、BGPなどの各種ダイナミックルーティング、ファイアウォール、IPv4ポリシールーティングなどの機能)をソフトウェアで提供するソフトウェアルータで、x86アーキテクチャベースのプラットフォーム上で動作。これまでに1万ライセンス以上利用され、PCや仮想サーバ(VMware, KVM)をVPNのセンタールータとして利用することが可能となり、クラウド環境のゲートウェイルータとして利用すれば、オフィス環境やリモートアクセスユーザとのVPN接続を集約することが可能となる。

 新製品の「SEIL/x86 Ayame」は、10ギガビット、マルチコアCPU(最大8コア)に対応し、多数の拠点を収容可能なセンタールータとしての機能をソフトウェアで提供。仮想環境にある機器のデータ入出力を高速化するSR-IOV(Single Root I/O Virtualization)やPCIパススルーに対応することで、マシンに内蔵されているNICのオーバーヘッドを削減する。また、暗号アクセラレータとしてIntel QuickAssist Technologyを利用できるなど、パフォーマンスが大幅に向上されている。

 ライセンス体系は、個人向けに機能を限定した「スタンダードエディション」と法人向けの「エンタープライズエディション」の2つを用意。エンタープライズエディションでは、マルチコア CPU対応やI/O高速化テクノロジーに対応するなど、大規模WANのセンタールータとして必要な機能を実装しているほか、ベアメタル(OSを搭載していない物理サーバ)での動作確認を進めていく予定となっている。

 これまでのSEILシリーズと同様に、SEIL/x86 Ayameをインストールした機器においてもIIJの特許技術SMFv2をもとに独自開発したネットワーク機器の集中管理サービスであるSACM(Service Adaptor Control Manager)を利用できる。SACMは、機器をネットワークに接続するだけで、遠隔で自動設定や運用管理を一元的に行えるため、簡単にリモート管理・運用を実現することができる。また、エンタープライズエディションでは、マルチコアの割り当てに加え、I/Oや暗号処理のハードウェア仮想化支援機能に対応し、リソース割り当てによって装置のリプレースをせずに処理性能を変更することも可能となっている。

 SEIL/x86 Ayameのスタンダードエディションは、5500円(税込)で販売されており、Amazonで購入することが可能となっている。また、エンタープライズエディションは27万5000円(税込)となっている。さらに、90日間の無償トライアル版(商用負荷、コンフィグ保存機能無効)も提供されている。

図1:低価格アプライアンスルータとしての利用例