特別企画

HPのCOOはクラウド事業に自信、「幅広い選択肢とエンタープライズレベルのSLAを提供する」

米HP 最高執行責任者のBill Veghte氏

 中国北京で開催された「HP WorldTour」にて、クラウドサービスの強化を発表した米Hewlett-Packard(以下、HP)。同社 最高執行責任者(COO)のBill Veghte氏は、「HPは企業が自らクラウドを構築し、管理するために必要となるコンポーネントをそろえているのみならず、企業がHPのクラウドをサービスとして利用する際のポートフォリオも幅広くそろえている。この2つの分野で最大のオファリングを提供しているITベンダーはHPだ」と自信を見せる。

 今回HPが新たに発表したのは、OpenStackをベースとしたクラウドプラットフォーム「HP Cloud OS」や、プライベートクラウドのインフラを設計、構築するためのサービス「HP Enterprise Cloud Services - Private Cloud」、アプリケーションをクラウド上で統合、展開するためのサービス「HP Enterprise Cloud Services for Enterprise Applications」など、多岐にわたる。

 「今回の発表はHPがこれまでクラウド分野で発表してきた中でも最大級だ」と話すVeghte氏に、HPのクラウド戦略や同社の強みを聞いた。

企業が求めるクラウドとは

 Veghte氏は、企業が求めるクラウドのキーワードとして、「選択肢」「自信」「一貫性」の3つを挙げる。これは、クラウドにさまざまな選択肢があること、ベンダーが自信を持って提供できるものであること、そして一貫性を担保できるものであることを指すという。

 クラウドの選択肢というのは、プライベートクラウド、パブリッククラウド、そしてこれらのクラウドの中間的位置づけともいえるマネージドクラウドというデリバリモデルの選択肢や、プラットフォーム、ハイパーバイザー、さらにはパートナーまでも選択できるという意味だ。また、ベンダーの自信とは、クラウドにおいて高セキュリティや高可用性、高パフォーマンスを提供できるという自信を指す。そして一貫性とは、アーキテクチャや消費モデル、アプローチなどに一貫性があることだという。この3つは、「HPがクラウドサービスを提供するにあたり、常にフォーカスしてきたことだ」とVeghte氏は説明する。

 HPのクラウドオファリングに自信を見せるVeghte氏だが、パブリッククラウドの分野においては同社の日本におけるプレゼンスはまだ低い。IBMやDell、Amazon Web Services(AWS)といった競合ベンダーが日本でパブリッククラウドを展開する状況をどう見ているのだろうか。

 Veghte氏はこれらの競合ベンダーについて「IBMのクラウドは密度の低い小規模インスタンスのクラウドで、パブリッククラウドではなくマネージドクラウドだ。Dellはパブリッククラウド事業から撤退するとの報道があったばかり。AWSは、SLAやセキュリティ面においてエンタープライズ向けには不十分」と、厳しい評価を下した。

 「HPのアプローチは、エンタープライズ級のSLAとサポートを用意し、パブリッククラウドレベルの密度のクラウドを安価に提供するというものだ。また、企業はパブリッククラウドだけを使うのではなく、マネージドクラウドやプライベートクラウドも利用するため、すべてのクラウド上で利用できるソリューションを提供する」とVeghte氏。

 日本でのサービス提供時期は明確にはしなかったものの、日本でもこのアプローチは変わらないとしており、「日本で正式にサービスを開始するのが楽しみだ」と述べている。

ハイブリッドクラウドが主流に

「求めるSLAやアプリケーションの使い方などに応じてさまざまなクラウドを交えて使うため、市場はハイブリッドクラウドに向かう」と語るVeghte氏

 クラウド市場全体の今後についてVeghte氏は、「市場はハイブリッドクラウドに向かう」と話す。パブリッククラウド、マネージドクラウド、プライベートクラウドの中で、1つを採用するのではなく、企業が求めるSLAのレベルやアプリケーションの使い方、ビジネスにおける必須条件、さらには法令などによって、さまざまなクラウドを交えて使うことになるというのだ。

 ただしVeghte氏は、「多くの企業はプライベートクラウドに投資しており、最終的にプライベートクラウドの構築を目指している」とする。HPがColeman Parkes Researchに委託して実施したグローバル調査によると、アジアパシフィックおよび日本においては、2016年までにプライベートクラウド上で稼働するワークロードが38%、パブリッククラウド上で稼働するワークロードが17%、マネージドクラウド上で稼働するワークロードが22%、従来のITシステム上で稼働するワークロードが24%になるという。

新CEOがHPにもたらしたもの

 最後にVeghte氏に対し、最高経営責任者(CEO)のMeg Whitman氏について聞いた。Whitman氏は、2011年9月にHPの新CEOに就任しており、日本ではまだHPのCEOとして公の場に登場していない。

 Whitman氏がHPのCEOに就任して一番変わったことは何かとの問いにVeghte氏は、「多くのことが変わったので1つを挙げることは難しい」としたうえで、「彼女は、人に対する情熱、イノベーションに対するコミットメント、勝つという意志、企業を成功させるためのアプローチ、顧客へのコミットメントをHPに持ち込んだ。これらはもともとHPにあったものだが、彼女はこれらをさらに強くサポートし、より大きく育て上げた」と述べた。

沙倉 芽生