「SSDの高速さを十分に生かせる」~LSIロジック製RAIDカードの強みをオリオスペックに聞く


 秋葉原のオリオスペックは、油没PCのように、静音や速度などで特徴のある製品に定評のあるショップだ。RAIDカードの分野では、LSIジャパンのプリファードパートナーとして、法人や個人のユーザーに製品を販売している。

 欧米では、データセンターでホワイトボックス製品の導入が進んでいるが、国内では、どういったビジネス傾向にあるのか、そして、どういった製品が好まれるのか。こうした点について、オリオスペック 開発部長 松田敏明氏と、製品でよく採用されるというRAIDコントローラメーカー、LSIロジック チャネルセールス&マーケティング マネージャーの橋本博文氏に、現状のビジネスについて語ってもらった。

 

大容量かつ高速、というニーズに応えられるのがLSI製品の良さ

 

――オリオスペックの法人顧客は、どのようなところが、どのような使い方をしているのでしょう。何か、特徴はありますか?

オリオスペック 開発部長の松田敏明氏(左)と、LSIロジック チャネルセールス&マーケティング マネージャーの橋本博文氏(右)

松田氏:RAID系の製品のお客さまとしては、大学や研究所と、映像関係が多いですね。基幹系のシステムというより、現場で使うシステムで、大容量と高速さが求められるケースが多い。例えば、「10TBや20TBでなるべく高速に」という要望の場合には、いまはRAIDカードとして、LSIロジックが3月に発表した6Gbps第2世代の製品、MegaRAID 9285/9265をお勧めしています。


――ホワイトボックスとしてシステムを組み上げて納めることも多いのでしょうか?

 

松田氏:多いですね。具体的にいうと、SeagateのConstellation ESを16台や24台、エキスパンダーで接続してラックマウントで納品するといったパターンが多い。エキスパンダーを使うと遅くなるイメージがかつてはあったのですが、6Gbps製品ですと、直接つないだのとほぼ変わらない速度が出るので、大容量かつ高速という要望に応えられています。エキスパンダーのチップもLSIロジック製がほとんどですし。


――そういうシステムでは、どういったRAIDの構成を組んでいるのでしょう。

 

松田氏:用途によって違いますね。可用性重視の要望ですと、例えば24台で組んでいるうちの8台ぐらいをミラーリング構成にして、残りをRAID 6でアーカイブに使う、といったケースもあります。逆に、ゲノムの解析などで、とにかく速度が欲しいお客さまには、RAID 0で納めるケースもあります。バックアップは別に取るので、それでも大丈夫だと。


――速度を求めるならSSDを使うという選択肢もあると思いますが。

 

松田氏:SSDだと容量が足りないんですね。1回の解析で、何TBもの容量を使うらしいんです。それをSSDにすると、金額が相当かかってしまうので。

 一方、映像系のお客さまの場合だと、最近では6Gbps第2世代のMegaRAID 9285/9265のシリーズとSSDの組み合わせが多い。これらの製品はデュアルコアプロセッサを搭載しているので、転送速度もかなり速くなります。


――かつては、SSDは信頼性が心配されていましたね。そうした面の懸念もあるのでしょうか。

 

松田氏:確かに、エンタープライズ系の案件ですと、SSDは信頼性の意味であまり選ばれませんね。いま市場に出ている大容量のSSDを使おうと思うと、MLCベースになってくるので、耐久性などが不安視されて、まだ様子見の所が多い。

 実際に使われている所でも、バックアップをこまめに取っているケースが多いようです。ただ、そろそろSASのSLCで数百GBのモデルの話も出てきていますので、そのあたりが普及してくるとまた変わるかと思います。

 

サポートも着実に改善、性能の高さが魅力


――LSIロジックのRAIDカードを勧める理由は?

 

松田氏:速度を求められることが多いので、速度の違いです。また、OSの対応状況で、LinuxやVMwareという話になると、現状ではLSIロジックにほぼ決まります。


――そもそも、オリオスペックがLSIロジックの製品を扱い始めたのは、いつごろからでしょうか。

 

松田氏:本格的に扱い始めたのは、2007年ごろ、MegaRAID 8888シリーズが発売されたころですね。お客さまの要望で入れ始めました。

 きちんとラインアップをそろえるようになったのは最近で、転送速度6GbpsのMegaRAID 9260シリーズ以降です。正直言うと、それまでLSIロジックは小売店への製品供給や対応がよくなかった(笑)。


橋本氏:反省として言うと、もともとOEM中心のメーカーで、チャネル販売に力を入れていなかったのが原因です。それが、2009年に3wareを買収して、販売チームが入ったことによって、劇的に変わったと思います。

 


松田氏:確かに今では、LSIロジックがユーザーへのカスタマーサポートも用意してくれているので、売る側としても安心して販売できるようになりました。

 


――第1世代と第2世代の6Gbps RAIDコントローラの販売比率は、どのくらいでしょう。

 

松田氏:第2世代は、まだ8ポートの2モデルしか発売されていないんですが、第2世代が出て以降でいうと、半分以上、たぶん7割程度が第2世代です。エキスパンダーの6Gbps対応製品が出てきましたので、8ポートでも十分対応ができますからね。


――やはり、速度重視の顧客が多いという特性が表れていますね。

 

橋本氏:第2世代のRAIDコントローラに使用されているLSISAS2208(通称Thunderbolt)というRAIDチップは、第1世代のRAIDコントローラ用のLSISAS2108(通称Liberator)というチップに比べて、クロック数も上がっていますし、デュアルコアにもなっている。L1・L2キャッシュも大きくなり、DRAMのスピードも速い。全然パフォーマンスが違う。第1世代が、内部構造的に40万IOPSぐらいなんですけど、第2世代は55万IOPSまで出るようになっています。

 あと、第2世代RAIDコントローラについては社内で「Advanced SSDサポート」と言ってます。実は、それまでのRAIDコントローラって、HDDの遅さがあったので、多少遅くてもごまかしが効いたんですね。ところがSSDではRAIDコントローラが遅いとすぐわかってしまう。そうした問題にLSIロジックでは最初から対応していますし、シングルコアの第1世代では追いつかなくなってきたので第2世代でデュアルコアになった。デュアルコアになっているのは、1つのコアがRAIDスタックの処理をして、もう1つがSSDなどのI/Oの傾向を読んで対応している。で、実際に速いわけです。


提供が開始されたばかりの、第2世代の6Gbps RAIDコントローラ第2世代の6Gbps RAIDコントローラの1つ、MegaRAID 9265-8i

 

リードとライトのキャッシュに対応したCacheCade Pro 2.0

LSIロジックでは、SSDをHDDのキャッシュにして速度を上げる「CacheCade」と、パスを高速化する「FlashPath」を提供している

橋本氏:それから、大容量で高速という話でいうと、シーケンシャルな読み書きはディスクの台数が多ければいいんですが、ランダムな読み書きで性能が上がらないんですね。そこで、第1世代6Gbps RAIDコントローラ向けのソフトウェアオプションで、SSDをHDDのキャッシュにして速度を上げる「CacheCade」という製品のバージョン2.0を8月に発表しまして、リードとライトの両方のキャッシュに対応しました。

 従来のCacheCadeや他社製品ではリードだけしかキャッシュできないんですが、CacheCade Pro 2.0ではリードもライトもキャッシュによって改善できる。そうすると、ランダムなアクセスも高速になりますし、先ほど松田さんがおっしゃっていたような、速度重視で障害を覚悟のうえでRAID 0にしているケースでも、RAID 5などにできるかと思います。


――リードに比べると、SSDのライトは、そう極端に速いわけでもないですよね

 

橋本氏:極端に速いわけではありませんが、HDDに比べれば速い。また、頻繁に読み書きするホットデータがライトのときにSSDにキャッシュされれば、リードで最初からHDDからデータから来ないので、速くなります。


――リードだけという製品は、そのへんを割り切ってるのでしょうか

 

橋本氏:いや、ライトは技術的に難しいというのがあると思います。


――第2世代6Gbps RAIDコントローラ向けのCacheCade 2.0は?

 

橋本氏:年内ぐらいの予定で開発しています。リードライトのキャッシュについては、いろいろなデータベースに合わせてチューニングしていかなくちゃならないので、その時間がかかっています。


――CacheCadeはオリオスペックでも?

 

松田氏:実は、9月上旬入荷予定のCacheCade Pro 2.0を待っている方が多いんですよ。それから、まだ商品が出てないんですが、第2世代RAIDコントローラ用Cache Cade 2.0を待ってるお客さまも多くて、発表されてない段階で、口頭ベースでの予約もたくさんいただいています。


――秋葉原の最新情報を伝える僚誌でも、SSDキャッシュ製品の記事は人気が高いんです。

 

松田氏:キャッシュには皆さん関心が高いですね。HDDにメモリを付けた製品を最初に販売したときには、すごい人気で、前日から並んでいる人までいました。

 

FastPathは、今までと比較にならないパフォーマンス

――ソフトウェアオプションとして、FastPathについても教えてください。

橋本氏:FastPathというのは、名前のとおり、パスを速くするものです。インターフェイスが3GbpsのときにはSSDはそれほど物が出ていなかったんですが、6Gpbsの時代になったらそこら中にSSDがあって、RAIDコントローラが遅い、ということになってしまった。で、ひとつの改善方法として、HDDでは、コマンドとデータを分けて、RAIDの計算をして、と複雑なことをやってるんですが、そこを飛ばしてしまってSSDでのパフォーマンスを上げる。これがFastPathです。

 SSDについては、利用の形態や用途がまだこれというものが決まっていなくて、いまいろいろ模索している段階にあると思います。LSIロジックとしては、いろいろな形でのソリューションを提供するということで、FastPathやCacheCadeをそれぞれ出しています。


――主にターゲットとする用途は、どこになるのでしょう。

 

橋本氏:一番大きな効果があるのは、Webのフロントエンドなど、ものすごいIOPSが必要な部分ですね。あるいは、データベースのインデックスなどでも、高速な処理が必要なアプリケーションです。


――オリオスペックでは、FastPathのニーズはどうなのでしょうか。

 

松田氏:今のところ、企業からはないんですが、コンシューマ系のお客さまからは絶大な人気があります。今回、日本に入ったFastPathの大部分は当社が仕入れていると思いますが、即日完売に近い状態でした。

 こういう製品は、企業では成果がわかりづらいんですが、コンシューマのお客さまは、ベンチマークの成績で買っていただけるところがあって。第1世代であるMegaRAID 9260時代のFastPathの評判がすごくよかったので、今回のMegaRAID 9265用も前評判が高かったようです。


橋本氏:例えばMegaRAID 9265で、SSD 8台でRAID 0を組んだとき、普通ですと25万IOPSぐらいなんですが、FastPathを使っていただくと、46万5000IOPSぐらいまで出る。このあたりまで来ると、PCI Expressのどのスロットにあるかも影響するぐらいになるので、必ずしもお客さまのところでフルにその数字が出るかどうかはわかりません。ただ、少なくとも、今までとは比較にならないパフォーマンスが出ています。

 


――FastPathの技術は、他社では同じようなことは難しいのでしょうか

 

橋本氏:6Gbpsでやろうとすると難しいと思います。


――FastPathがあって、CacheCadeがあって、いろいろな方向を提案していると

 

橋本氏:そのほか、SSDを直接PCI Expressに挿すWarpDriveという製品もあります。SSDというかフラッシュデバイスは、どう使っていくか、本当に模索中ですね。

 

Flashメモリの活用法はまだ模索中


――PCI Expressに直接指すタイプですと、ほかには例えばFusion-ioのioDriveなどもありますが、顧客の反応はどうでしょう。

 

PCI Express接続のWarpDriveも提供されている

松田氏:ioDriveもWarpDriveも、問い合わせは多数いただいています。ただ、実際には、コストの問題で入らないことのほうが多いですね。

――通常のSSDに比べて高価というのはありますね。I/O速度は劇的に違うはずですが

橋本氏:信じられないほどの違いです。1枚で20万IOPSとか出ますし。


――WarpDriveの用途はWeb系が多いのでしょうか

 

橋本氏:いまのところそうです。その次はデータベースあたりですね。データベースの性能は永遠の課題なんで、それがチューニングしなくてもハードウェアで解決できる。それも、高いハードウェアじゃなくて、ホワイトボックスでできるようになる。そうすると、その経験を積んでるオリオスペックのようなところが価値を持ってくるわけです。


松田氏:ただ、初期導入のコストが高いので、試せないお客さんが多いんですね。SIerさんからの問い合わせでは、30万円ぐらいまでの製品はないか、という質問が多いですね。それで、検討で終わってしまうことが多い。

 


橋本氏:それは、本社に言っておきます(笑)。

 

 

不満は、製品ラインアップが多すぎること?

――LSIロジックへの不満というか、改善してほしいところは

松田氏:製品ラインアップが多すぎるというのはあります(笑)。しかも、ケーブル付きとケーブルなしなど1製品で必ず2モデルは出てくるんですよ。店としてはストレージ系のケーブルは豊富にあるんですが、お客さまの要望からすると両方そろえないといけない。また、オプション類も種類が多すぎるので、なるべく統一してほしいというのはあります。


橋本氏:これはLSIロジックの都合なんですが、OEMで製品を供給しているので、簡単にEOL(生産終了)にできないんですよね。その結果、RAIDコントローラのカタログだけでこんな厚みに(苦笑)。

 


松田氏:もうひとつありました。納期が遅い(笑)。まあうちは、お客さまに買っていただいてるので、ある程度在庫を持てるんですね。そうすると、よそに頼むと待つので、うちで購入してくれるお客さまが増える(笑)。ただ、在庫が切れると時間がかかるので、もう少し改善してほしい。

 


――LSIロジックでは在庫は難しい?

 

橋本氏:いまその改善をして、国内である程度在庫ができるようにしています。また、LSIロジックと代理店、販売店との間で、必要な数の想定のずれがあるのかもしれませんので、コミュニケーションを密にして、直していきたいと思います。

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