女子会でクラウドを基礎から学ぼう!~Azureのユーザー会 JAZUGの第1回女子部勉強会レポート


JAUG女子部会場

 クラウドを利用する女性技術者が増加していることから、女性を対象としてユーザー会の分科会が開催されるケースが増えている。女性を対象としていることで、クラウドの基本からかみ砕いて説明することが多く、これからクラウドについて勉強したいと考える人にとっては参考になる内容となっている。

 今回は、7月に行われた、女性を対象としたWindows Azureの勉強会「Japan Windows Azure User Group(JAZUG)女子部 勉強会」をご紹介しよう。

 

JAZUG女子部がスタートした理由は?

株式会社NTTデータの安東沙織氏

 Windows Azureを題材とした女性向け勉強会は、4月に開催されたAmazonユーザー会とJAZUGの合同勉強会などがあるが、JAZUG単独の開催は初めて。

 女子部の部長である株式会社NTTデータの安東沙織氏によれば、「4月の合同勉強会開催後、JAZUGの単独の勉強会はないのか?といった声もあり、今回、開催することになった」という。

 日本マイクロソフトの31階の会場は、女性ばかりでほぼ満員状態。通常のITイベントとは異なる華やかなムードで会がスタートした。

 最初に登場したのは、女子部の部長である安東氏。NTTデータの社員として今年が入社3年目になるという安東氏は、入社1年目からAzureの研究開発担当。本年度からは、自社のプライベートクラウドの開発を担当している。

 自身がJAZUGに参加し安東氏が感じていたのは、「JAZには女性参加者が少ない」という事実だった。それをふまえ、「女子が発言しただけで、女子だ!女子だ!となるのは残念。JAZにはホームページも、メーリングリストもあります。本日の参加者の方で、なども興味があればぜひ、参加を」と最初に呼びかけた。


JAZUGの紹介JAZUG女子部の紹介

JAZUG女子部 最初のスピーカーである安東部長の自己紹介

 その上で、今回の勉強会参加者はITベンダーでSEとして働いている人だけでなく、学生、企業の企画担当者、Webデザイナー、営業と幅広いバックグラウンドの人が参加していることから、クラウドの基本から説明を行った。

 まず、クラウドとは何か。テレビコマーシャルでも使われるようになるなど、よく耳にする言葉だが、正確に定義を見直すと案外難しい答えに。米国国立標準技術研究所による定義では、「利用者自身が必要な時に、サーバーやストレージなどを自由に利用できる」――などの文言が並ぶ。

 安東氏はこれを簡略化し、「初期構築不要」、「いつでも、どの端末でも使える」、「使いたい時に使いたい分だけ」、「お支払いは使った分だけ」と簡単に紹介する。

 ベンダーごとに異なるクラウドの定義についても、クラウドはハードウェア、OS、ミドルウェア、アプリケーション、運用監視の全レイヤを含むが、Amazon Web Servicesを代表とするIaaS型クラウドが提供するのはOSまで、Windows Azureを代表とするPaaS型クラウドが提供するのは、OSとミドルウェアの一部、セールスフォースドットコムを代表とするSaaS型クラウドが提供するのはOS、ミドルウェア、アプリケーションの一部と、それぞれ提供する領域に違いがあると図で説明した。


あらためて、「クラウドとは?」と考えた時、米国国立標準技術研究所による定義簡単にクラウドとはどんなものかまとめ代表的なクラウドの分類

 

Windows Azureをわかりやすく説明

 ちなみに、安東氏はクラウディアと同じ1985年生まれ。「同じ年だから、親しみを感じる」そう。この日は、「クラウディアさんがつけているイヤリングをつけさせてもらった」とクラウディアがつけているものと同じイヤリングをつけて登場した。

 クラウディアがキャラクターとなっているAzureは、正式名称はWindows Azure Platform。Azureというのは略称となる。ご存じの通り、マイクロソフトのクラウドコンピューティング基盤の総称だ。


Azureの公式キャラクター「クラウディア」の紹介JAZUG・安東部長はクラウディアが着用しているイヤリングを耳につけて講演を行った

 この日はAzureの中でも、(1)アプリケーションのホスティング環境サービス、(2)データ保存サービス、(3)環境の自動運用・監視サービスという点についての説明が行われた。


Azureとは?Azureの概要

 このうち、アプリケーションホスティング環境サービス=コンピューティングサービスについては、「実体はWindows Server 2008/2008 R2なので、ものすごくざっくりいうとWindows Serverで動くものはWindows Azureでも動く。開発環境も、NETフレームワークだけじゃなく、いろいろな言語が動く。例えばJava使いの人が大好きなEclipseも利用できる。開発言語もJava、PHP、Ruby、Pythonなど、広くさまざまな言語を利用できる」と技術を知っている人の誤解があると指摘した。


Windows Azureの主な特徴Computing Serviceの概要。その実態は実体はWindows Server 2008/2008 R2という

 ストレージについても、Blob、Tableなど多用なストレージをカバーし、ストレージに配置すると最低三重の複製を、Azure側で自動的に確保する。

 運用監視Fabricは、アプリケーションの自動プロビジョニング、ホスティング環境の自動障害検知、アプリケーションの最小限停止時間アップデートなどの機能を持つ。


Storage Serviceの概要Fabricの概要Windows Azure Platform機能の一部抜粋

 

クラウドをガンダムに例える名物エバンジェリストが登場

Azureの伝道師として有名な日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クラウドプラットフォーム推進部 エバンジェリストの砂金信一郎氏

 こうしたAzureの基本知識を紹介した後、「本日の特別ゲストとして、Azureといえばこの方!という、おわかりの方には予想がつくゲストを…」という安東氏の紹介で登場したのは、日本マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クラウドプラットフォーム推進部 エバンジェリストの砂金信一郎氏。

 砂金氏はAzureに関するイベントなどに登場することも多いが、「砂金さんがTwitterで夜中にするつぶやきがナゾ。今日はそのナゾを解いてもらう」と安東氏が紹介。実は砂金氏、ガンダムの大ファンでAzureやクラウド業界に関するつぶやきを、ガンダムになぞらえてすることが多いのだ。

 この日のために、ガンダムバージョンとまじめなバージョンの2種類のプレゼンテーションを用意したという砂金氏だが、安東部長のリクエストに応えてガンダムバージョンでクラウドの世界を説明。最初にガンダムシリーズの説明をした後、クラウド業界を「Zガンダム」の三勢力と同様、クラウドの世界も次の三勢力となっていると説明した。(1)旧体質なIT業界=ライセンス至上主義、(2)マイクロソフトのAzure=IT業界の緩やかな変革、(3)GoogleやAmazon、オープンソースソフトウェアを活用し、一気呵成(かせい)の変革をもくろむ。

 ガンダムを知らない女性が多かったにも関わらず、このプレゼンテーションに会場は笑い声も。クラウドを押す勢力がいろいろある中で、それぞれのスタンスの違いがわかりやすく、伝わったようだ。


Zガンダムのグリプス戦役を、クラウド業界3つの勢力になぞらえて紹介

 次のプレゼンテーションでは、JAZUG女子部メンバーで、株式会社FIXERの田鎖美穂氏がAzureの活用例を紹介。歌手の西川貴教さんが中心となった、東日本大震災チャリティプロジェクト「STAND UP! JAPAN」のWebサイト(http://standupjapan.org/)、映画「百夜行」の宣伝サイト「勝手に宣伝部」(http://www.kattenisendenbu.jp/index.php)、静岡新聞が作成した、女性が子宮頸(けい)がんなどを学ぶサイト(http://www.shizuokawoman.jp/index.html)、文部科学省の放射性物質に関するサイト(http://www.mext.go.jp/)、といった事例が紹介された。

 日常はWebコンサルティングを行っている田鎖氏は、「クラウドは何が優れているの?という声があるが、文部科学省のサイトなどは震災対応の時に大活躍した。『明日、サイトをオープンしろ!』といった急な案件にクラウドはマッチする。費用が削減でき、システムの管理業務を完全にアウトソースできる」とクラウドを活用したサイト運営のメリットを説明した。


女子部の部員である株式会社FIXER 田鎖美穂氏が紹介する、Azureを利用しているサイト。映画「白夜行」の宣伝サイトである「勝手に宣伝部」Azureを活用している静岡新聞社が製作した女性のためのがん情報サイト

 

女子部を支援する男性スタッフは“執事”?

JAZのメンバーである株式会社ビービーシステムの亀渕景司氏

 休憩を挟んで行われたのは、JAZUGの男性会員によるプレゼンテーション。JAZUGのメンバーである株式会社ビービーシステムの亀渕景司氏、シグマコンサルティング株式会社の橋本圭一氏がプレゼンテーションを行ったが、女子部を支援する男性スタッフは、「尊敬を込めて執事と呼ばれている」と自己紹介。

 Twitter上で女子メンバーから「#JAZUG」のタグ付きで質問があがると、「優秀な執事が10分から30分で答えてくれる」と女子メンバーがかなり優遇された存在であることをアピールした。この質問への回答は、有志による好意で実現されているもので、100%とはいかないものの、真剣に質問する女子メンバーに対しては、親切な回答が寄せられる場合が多いようだ。

 ユーザー会に参加するメリットとして、「ちょっとした失敗談や冗談の共有から役立つノウハウまで、Windows Azureに関するさまざまな感動を共有できる」ことを紹介。JAZUGは参加メンバーも、プログラマーばかりではなく、企画担当者、Webデザイナーなど多岐にわたるという。プログラマーではなくても、Windows Azureに興味がある人であれば参加資格は十分と説明した。


JAZUG女子部の母体であるJAZメンバーが作成した、女子にカワイイといってもらえるように意識して作成したマークJAUZ参加のメリットとは?女子がハッシュタグをつけてTwitterでつぶやくと、「執事」と呼ばれる男子部員が最短で回答してくれるという

【お詫びと訂正】
初出時、上記キャプションでマークの説明を誤っておりました。お詫びして訂正いたします。

 

9月3日にはJAZUGのの第1回総会を開催予定

 今後は、「クラウドごった煮」と題して、Windows Azure以外にもさまざまなクラウド製品を利用するイベントも9月に開催予定。こちらのイベントの詳細は未定であるものの、Azureによらない「業界のトップランナーとの知り合えるチャンスとなるかも」とユーザー会ならではのイベントとなる予定だという。

 また、9月3日には第1回総会を開催予定で、「Azureと競合するクラウド製品を扱っている競合ベンダーの人も参加するので、Azureだけでなく、クラウドに興味がある人ならぜひ参加してほしい」と熱く呼びかけた。

【お詫びと訂正】
初出時に記載のあった、Professional Developer Conference2011のパブリックビューイングについては、今後の予定ではなく、昨年の活動実績でした。こちらもお詫びして訂正いたします。


JAZ、今後のイベント「InstallManiax5」今後のイベント「おばかアプリ選手権」9月3日には総会を開催予定
日本マイクロソフトの大森彩子氏は、参加者同士、知り合いを増やしてIT女子の輪を広げよう!と呼びかけ

 最後に、日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クラウドプラットフォーム推進部 プラットフォームテクノロジーアナリストの大森彩子氏が、IT業界で働く女性同士の交流を呼びかけた。最近ではIT業界で働く女性も増えているものの、「女性の割合はまだ少ないことが実情」。そこで同じIT業界で働く女性同士が情報を共有し、問題に対処していくことを呼びかけた。

 この後、会場では参加者にプレゼントがあたる抽選会も開催された。これ以外にも参加者全員にWindows Azureを利用し、石けん販売サイトを運営するAZIALの試供品が配布されるなど、お得感の強いイベントとなった。


JAZUG女子部のコアメンバーの皆さん参加者全員に配布されたAZIALの石けん。サイトはAzure上で動いている
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