特別企画

コグニティブコンピューティングのその先へ――、
「IBM Watson」が目指すゴールはどこに

「IBM InterConnect 2015」からWatsonの未来を考える

 「IBMはこれまでの歴史において、あらゆる業界で革新を起こしてきた。そしてWatsonの登場により、IBMは再び世界を大きく変えることになる」――。

 2月23日(米国時間)、米国ラスベガスで開催されたIBMのグローバルイベント「IBM InterConnect 2015」のゼネラルセッションに登壇したIBM Watson Groupのシニアバイスプレジデント マイク・ローディン(Mike Rhodin)氏は、2万人を超える聴衆に向かってこう語りかけた。

 IBM Watson――偉大な創業者の名前を冠する21世紀の人工知能プロジェクトは、世界にどんな変化をもたらそうとしているのか。本稿ではInterConnect 2015(2/22〜2/26)の取材で見えてきたWatsonの現在とその向かおうとしている未来を検証してみたい。

IBM Watson Groupのシニアバイスプレジデント、マイク・ローディン氏

コグニティブコンピューティングとしてのWatsonとアナリティクスソリューションとしてのWatson

 Watsonは2009年、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」に挑戦するIBMの「コグニティブコンピューティング(Cognitive Computing)」プロジェクトとしてスタートした。

 コグニティブコンピューティングという言葉は日本語に訳しにくいが、人間が話す自然言語を理解(認知)し、大量にインプットされたデータをもとに仮説を生成し、コンピュータ自らがダイナミックに学習を重ねていくアプローチを取るシステムを指している。人間から対話的に質問を投げかけられると、Watsonはデータから生成した仮説をもとに解答を返す。

 その結果が正解であっても間違いであっても、それらはWatsonが賢くなるための重要な経験となる。一般的な「人工知能(AI)」のイメージに近いが、IBMはWatsonに関しては決して人工知能とは呼ばず、コグニティブコンピューティングと言い続けている。

 もっとも現時点でのWatsonは、プロジェクト発足時の単なるスタンドアロンなコグニティブコンピューティングシステムではなくなりつつある。その一例が、2014年にIBMが発表した自然言語による対話的なアナリティクスサービス「Watson Analytics」だ。

 これはWatsonのコグニティブに加え、BIツール「IBM Cognoss」による可視化、予測分析ソフトウェア「IBM SPSS」を組み合わせたSaaSベースのソリューションだが、いわばWatsonの名を冠したアナリティクスサービスのひとつともいえる。世界最高峰の人工知能研究の成果であるコグニティブコンピューティングシステムと、コグニティブコンピューティングの成果の一部をIBMのソフトウェアソリューションと統合したアナリティクスプラットフォーム――現在のWatsonにはそうした2つの側面があることを理解しておきたい。

 今回のInterConnect 2015において、IBMはWatsonに関する2つの大きな発表を行っている。Bluemix上でWatson APIやWatsonアプリケーションのサンプルコード、トレーニングキットなどの開発リソースを提供する「Watson Zone」と、これまでBluemix上でベータ版として提供してきた「Watson Personality Insights Service」の一般提供開始(GA)だ。

 いずれもBluemixでアプリケーション開発を行うデベロッパー向けのサービス強化であり、特にWatson Personality Insight Serviceが正式にローンチされたことで、Bluemixには新たな5つのWatsonサービス(Speech to Text、Text to Speech、Visual Cognition、Concept Insights、Tradeoff Analytics)が加わることになる。

 開発者はこれらのサービス(無料)を利用することで、IBMによるコグニティブコンピューティングの成果を自前のアプリケーション開発に取り入れることが可能になる。

今回新たに発表されたBluemix上でWatsonのAPIやサンプルコードが無料で利用できる「Watson Zone on Bluemix」

(五味 明子)