【年末企画】デスクトップPCでVMware vSphereを動かそう!


 VMware vSphereのハイパーバイザーESX/ESXiは、動作するハードウェア環境を選ぶため、簡単にテストするわけにはいかない。以前に連載した「vSphere 4を試す」という連載では、デルのサーバー「PowerEdge R805」を2台と、iSCSIストレージの「Dell EqualLogic」を使用した。しかし、テストするだけで、これだけの環境が必要になるのでは、仮想化に興味を持っているユーザーが、簡単に試すことができない。

 そこで、今回は、低コストのデスクトップPCなどを使用して、vSphere 4の機能がテストできる環境を紹介していく。年始年末の休みにぜひとも試してほしい。

 

マザーボードは少し古いモノがベスト

 ESX/ESXi 4.0では、SATAインターフェイスが正式にサポートされたため、デスクトップPCで動作する可能性が高くなった。ただし、気をつけたいのが、最新のチップセットには対応していないことが多い点だ。それでもESX/ESXi 4.1になり、最新世代のIntel Core i7/i5/i3などのCPUや、同世代向けチップセットにも対応している。

 ただ、VMwareのコンパチビリティガイドのWebサイトでは、各社のサーバーや、サーバー向けの拡張カードなどの互換性情報が提供されている。しかし、これではどのデスクトップPCで動作するか分からない。

 そこでお勧めしたいのが、ESX/ESXiのユーザーが作成した互換性情報Webサイトだ。このサイトでは、ESX/ESXiが動作するデスクトップPCやマザーボードなどの情報を提供している。さらに、特定のマザーボードでESX/ESXiを動かす場合のテクニカル情報なども提供されている。

 もし、ESX/ESXiを動かしたいと考えているデスクトップPCやマザーボードがリストになくても、リストに上がっているPCやマザーボードと同じチップセット、ネットワークチップなどを使用していれば、ほぼ問題なく動作する。また、NIC(ネットワーク・インターフェイス・カード)だけを変更すれば動作するマザーボードも、数多くある。

 今回は、手元にあったASUSのMSIのAMD Phenom II対応マザーボードを使用した。これは、VM-HELPのリストにはなかったが、同じチップセットを採用したマザーボードが、VM-HELPのリストにあったので、同じシリーズ内の異なるバリエーションのマザーボードなら動作すると思い、試してみた。

 実際、AMD 750+AMD SB790FXチップセットを使用しているマザーボードやPCなら、ESX/ESXi 4.1は動作するだろう。


VMwareのコンパチビリティガイドでは、各メーカーのサーバーとの互換性が確認できる。しかし、デスクトップPCやデスクトップ用のIOデバイスなどの互換性は明らかにされていないVM-HELPのHPでは、ユーザーがテストしたデスクトップPCやマザーボードで、ESX/ESXiが動作したかどうかの情報が掲載されている

 

NICのサポートが一番の鍵に

 ESX/ESXi 4.1を動かす時にチェックすべきは、チップセット、IOチップ、NICだ。NICに関しては、後で追加できるため、チップセットとIOチップがサポートされていれば、ESX/ESXi 4.1を動かすことができると考えていいだろう。

 実際、今回の環境でESX/ESXi 4.1を動かす時に問題になったのは、NICだった。ESX/ESXi 4.1では、デスクトップPCが採用しているRealTekのネットワークチップをサポートしていない。このため、ESX/ESXiが動作しないことが多い。

 最も簡単な解決方法としては、ESX/ESXi 4.1でサポートされているNICを追加すればいい。ESX/ESXiでサポートされているNICとしては、Broadcom、Intelなどの製品があるが、Broadcom製品は、ボードとして購入しにくい。そこでお勧めするのが、Intel製のNICだ。

 ESX/ESXiで利用するためには、サーバー向けの高価なNICしか使えないというわけではない。低価格のデスクトップ向けのNICでも使用することができる。

 今回は、AMDのデスクトップPCにIntelのデスクトップ用NIC「Intel Gigabit CT Desktop Adapter」を使用した。このNICは、Gigabit Ethernetをサポートしている。

 ネットワークチップとしては、Intel 82574Lが使用されているため、このチップを使った他社のNICでも大丈夫だろう。

 Intel製のサーバー用のNICは、高額だし、秋葉原のショップなどでも購入しにくい。しかし、デスクトップ向けのNICなら、手に入れやすい。実際、今回のテストで使用したNICは、Amazon.comで購入したモノだ。


RealTekのネットワークチップだと、ESX/ESXiは動作しなかったIntelのデスクトップ用NIC。これでも、ESX/ESXiが動作するIntelのNICを追加すれば、ESX/ESXiが動作した

 

VMotionの検証には、TeraStation ISを利用

 Phenom II X4 965の自作PCを2台用意し、DDR3-1333のメモリを8GB(2GB×4枚)を搭載した。それぞれのPCにIntel Gigabit CT Desktop Adapterを搭載した。

 さらに、それそれのPCとiSCSIストレージを接続するために、Gigabit Ethernetのスイッチングハブ(8ポート)を1台用意した。スイッチングハブも、高価なレイヤ3スイッチなどではなく、5000円ぐらいのもので問題ない。

 VMotionをテストするには、共有ストレージが必要になる。さすがに、1万円ほどのマザーボードに、数百万円以上するEqualLogicを組み合わせるのは釣り合わない。そこでお勧めしたいのが、昨年紹介した、バッファローのiSCSI対応ストレージ「TeraStation IS」だ。これなら、16万8000円(2TBモデルの場合)という低価格で、VMware Ready認証を取得したiSCSI環境が利用できる。

 TeraStationISを利用する上で注意が必要な点としては、2台のサーバーからアクセスするために、ボリュームの詳細設定でMaxConnectionsの数を2台にしておく(デフォルトでは1台)必要があること。そうしないと、1台のサーバーからしか、iSCSIのボリュームにアクセスできなくなり、VMotionなどを利用することができない。

 また、ESX/ESXi 4.1では、NFSをサポートしたNASを共有ディスクとして利用することができる。バッファローのNASである「TeraStation」は、昨年末にリリースされた最新のファームウェアでVMware環境をサポートしている


バッファローの低価格iSCSIストレージであるTeraStationISの設定画面作成したボリュームの「詳細設定」→「MaxConnections」を2に増やしておく(デフォルトは1)。これで、2台のサーバーから、1つのボリュームにアクセスできるようになる自作PCでも、iSCSIストレージにアクセスできた

 

PC環境でもそこそこ使える

 PC環境をESX/ESXiサーバーとして使用してみて思ったのは、テストぐらいならこれで十分ということだ。実際に、VMotion、VMware HA(High Availability)、VMware FT(Fault Tolerance)などの機能を試してみたが、PC環境でも十分だった。

 できれば、NICを2枚ずつ用意して、マネジメントネットワーク、ストレージネットワークを分けられると、ある程度実導入に近い環境がテストできる。

 vSphere 4.1は、すべての機能が60日間だけテストできるため、こういったPC環境で、使い勝手や設定などを試した方が良いだろう。

 筆者の検証した環境なら、iSCSIストレージを含めた総額でも30万円以内におさまる。テストした後は、デスクトップPCとして使えるため、テスト機材も無駄にはならない。

 さすがに、実運用環境として利用するには、PCでは長期間の信頼性が問題になってくる。また、vSphereのライセンスは高価なため、ハードウェア環境として5万円のPCをサーバーとして使うのは、あまりにも不釣り合いだ。PCの価格よりも、vSphere 4.1のライセンス費用として、十数倍の料金が必要になる。

 vSphere 4.1の試用期間が終わった後は、無償のESXiを利用して、2~3台の仮想マシンを動かすサーバーとして使うのも便利かもしれない。

 

【付録】USBブートのESXiを作成する

 以前に掲載した「vSphere 4を試す」という記事で、USBブートで使えるESXi 4.0を作成する方法を紹介した。ESXi 4.1では少し手順が異なる。そこで、再度作成方法を紹介していく。

 VMwareが配布しているESXiは、ISOイメージだ。このため、ISOイメージをCD-Rなどに焼き、HDDにESXiをインストールすることになる。ESXiをUSBメモリからブートできるようにするには、いくつかの手順が必要になる。

 ちなみに、ESXiのブートUSBメモリを作製するには、サーバー環境は必要ない。デスクトップPCで作業が行える。今回は、Windows 7のPCで作業を行った。

 この作業で、必要するソフトウェアとしては、圧縮/解凍ソフトの「Explzh」、イメージファイルをUSBメモリに書き込むソフト「DD for Windows」(シリコンリナックスが無償で提供)の2つを使用した。

アーカイブソフトのExplzhは、直接ISOイメージをマウントすることができる。これなら、仮想CD/DVDソフトを使わずに、tgzファイルを解凍することが可能だ

(1)VMwareのISOファイルからESXiのイメージを取り出す
 Explzhを起動して、ダウンロードしたESXiのISOイメージを取り込む。
 VMware-VMvisor-Installer-4.1.0-260247.x86_64.isoファイルから、「imagedd.bz2」というファイルをクリックして、解凍する。
 「imagedd.bz2」の中にある「imagedd」をHDDに解凍する。


(2)imageddをUSBメモリに書き込む
 ESXiをブートするUSBメモリを作製するには、imageddをブート可能な状態でUSBメモリに書き込む必要がある。
 このために使うのが、コンパクトフラッシュディスクのイメージを読み書きするDD for Windowsというソフトだ。このソフトは、シリコンリナックスが無料で配布している。

 imageddは、約900MBほどの容量のため、1GBのUSBメモリが最低必要になる。後は、DD for Windowsを起動して、imageddをUSBメモリに書き込めばOK。

ESXiのUSBブートメモリを作るには、シリコンリナックスが配布しているDD for Windowsを使用する。ESXiを書き込むには、最低1GBのUSBメモリが必要になる。DD for Windowsの使い方は簡単。USBメモリを指定して、書き込むファイルを指定すればOK。ファイルを選択する時、デフォルトでは、.ddiというファイルが指定されている。今回書き込むのは、iamgeddというファイルになるため、ファイルの種類をAll FilesにしておくESXiは約900MBの容量。1GBのUSBメモリに書き込む時に、注意が表示される。USBメモリの容量の方が大きいため、書き込んでも問題ない

 後は、作製したESXiのUSBメモリをサーバーに差し込み、BIOSでUSBメモリからのブートを指定すればOKだ。

 作成したESXiのUSBメモリは、マシンごとに設定ファイルが書き込まれるため、1つのUSBメモリを複数のサーバーで使い回すことはできない。サーバーごとにブート用のUSBメモリを用意しておく必要がある。

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