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キヤノンMJと日本IBMが文書電子化で協業 金融、保険、製造分野などで日本語対応力の強み生かす
(2016/2/8 11:10)
キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は8日、企業内の文書を効率的に電子化する、データキャプチャソリューション分野において協業すると発表した。日本IBMの文書入力・分類・検証・配信基盤ソリューション「IBM Datacap」と、キヤノンMJの手書き日本語 OCR認識ソリューション「RosettaStone Components」を組み合わせて提供するもので、膨大な文書を電子化することが多い金融業、保険業のほか、製薬分野をはじめとする製造業などをターゲットに導入を図る。
IBM Datacapは、米IBMが開発したデータキャプチャプラットフォーム製品。IBMが全世界1万8000社以上に導入実績を持つ統合コンテンツ管理ソリューション「IBM ECM」においても、ペーパーレスを実現するためのツールと位置づけられている。スキャナや複合機、FAX、モバイルデバイスなどのさまざまな機器を通じて紙文書を電子化。各種ソリューションとの組み合わせによって、膨大な書類の処理や、手作業による分類、データ入力、目視検証、保管の手間などを削減し、企業の書類業務にかかわる課題を解決することができる。
特に、IBM Datacap Insight Editionは、画像処理技術、自然言語処理技術、機械学習技術を活用することで、文書の内容を把握し、自動分類が可能であり、あらゆる種類の文書フォーマットと構造、ワード情報、数値情報も分析できる。ここでは、Watsonでも活用されているコグニティブ技術をベースにしているという。
欧米では、IBM Datacapを導入することにより、スキャンのための文書準備作業を40%削減したり、スキャン作業を20%削減したりといった実績が出ているほか、1日で処理できる作業を4倍に高めるといった効果が生まれているとのこと。
一方でRosettaStone Componentsは、キヤノンが画像処理エンジンを開発し、キヤノンMJがソリューションとして提供している手書き日本語OCR認識ソリューションだ。大手金融機関や、保険、製薬、小売りなど幅広いユーザーに活用されており、大手金融機関の導入に限定しても、数万ライセンスの実績を持っている。また、同製品で活用されている画像処理エンジンは、キヤノン製の複合機などにも活用されており、いまや一般化している、複合機を使って、紙文書をPDFファイルに変換する機能にも、この技術が使われているという。
このRosettaStone Componentsは、その名の通り各機能をコンポーネント化しており、手書き日本語OCRコンポーネントのほかに、前処理、帳票認識、印影抽出など、8個のコンポーネントで構成。これらの日本の利用環境にあわせた機能を組み合わせることで、ユーザーニーズに最適化した提案が可能だとした。
加えて、日本語活字や手書き英数文字、手書き日本語文字に対応。認識精度は、「OCRの認識率は原稿、文字の大きさやピッチによって変わるとともに、OCR領域の設定によっても大きく変化するため、数値化が困難」(キヤノンMJのドキュメントソリューション企画本部 ドキュメントソリューション企画部 ドキュメントソリューション企画課の多胡敦司氏)としながらも、「日本人特有の手書き文字に強みがあり、一部導入ユーザーにおける評価では、99%以上という数値が出ている。特に、手書き数字に高い認識率があるとの評価をもらっている」という。
今回の協業では、この2つのソリューションを連携することで、日本語の手書き文字を含めた文書の電子化のほか、自動分類、キャプチャが可能となり、時間とコストのかかる手作業を排除しながら、業務の正確性とスピードを確保。業務の効率化と、多くの取引処理の実現につなげることができるという。
キヤノンMJでは、2010年に、EMCジャパンと提携し、Captiva InputAccelに、Rosetta-Stone-Componentsを組み込むことを発表しており、今回の日本IBMとの協業は、これに続くものとなる。日本IBMでは、2年前に、IBM Datacapの日本語化を完了。今回のRosetta-Stone-Componentsの活用によって、日本市場における販売拡大に弾みをつけたい考えだ。
キヤノンMJの多胡氏は、「日本は、労働生産性が低く、主要先進国中最下位。米国の3分の2の生産性しかないと指摘されている。その背景には紙を使用する文化が浸透している点があげられる。調査によると、1週間に3.9時間もの時間を紙文書の処理に費やしている。さらに、紙の移動や保管のために時間とコストをかけ、紙による仕分け作業は誤りを発生しやすいという課題もある」とする。
また、その一方で「電子化している企業や機関においても、すべての処理を終えた時点で電子保管をする場合が多く、システムの流れと、紙の流れが分断し、電子化の恩恵を得ていない例がよくある」と指摘。
「紙の申込書を受け付けた時点で、電子化すれば、仕分けや配送、承認、保管、検索といった作業が大幅に改善される。さらに、個別システムごとに電子化され、縦割りの状況では電子化の効果も限定的になる。今回の協業では、こうした課題も解決できるソリューションが実現でき、企業における電子化を促進する一方で、電子化による効果を最大限に発揮できるようになる」としている。
日本IBMでは、業種営業部門を通じて、大手金融機関などを対象に提案を加速する一方、キヤノンMJも、SE部門を持つキヤノンITソリューションズと連携しながら、金融、保険、製造、流通、サービス、ヘルスケアなどの企業への提案を行っていく予定だ。
2015年9月から施行された電子帳簿保存法(e文書法)が、さらに規制緩和されることが見込まれており、そうした点でも今回の協業が成果につながるとみている。