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日本ユニシス、松江市でメッシュ型地域通信ネットワークの実証実験を開始

 日本ユニシス株式会社は15日、島根県松江市でメッシュ型地域通信ネットワーク(以下、NerveNet)の実証実験を開始すると発表した。NerveNetのセキュリティの観点で、市役所外からのイントラネットへの安全なアクセスと、自治体間の安全な情報連携の実証実験を通じて、行政サービスの向上や地方創生を目指す。

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発したNerveNetは、基地局同士が自動的に相互接続する機能を持ち、災害時に一部のルートで障害が発生しても直ちに別のルートに切り替え、通信を確保する無線マルチホップ技術を用いた分散ネットワークとアプリケーション。

 日本ユニシスでは、NICTからの委託研究事業「メッシュ型地域ネットワークのプラットフォーム技術の研究開発」において、長野県塩尻市と島根県松江市と実証実験に向けて連携。2015年度からそれぞれの地域内および両地域を連携をして、地域特性を踏まえたアプリケーションにNerveNetを適用する仕組みとその効果を検証する。

 松江市の実証実験では、市役所外からのイントラネットへの安全なアクセスについて検証を行う。

 松江市では、「Ruby City MATSUE」としてプログラミング言語Rubyによる産業振興に力を入れており、Rubyを使って開発したグループウェア「縁sys(えにしす)」を用いて市職員間の情報共有を行っている。しかし、情報セキュリティ上の安全を確保するために、民間企業など市役所外とのやりとりは主にメールに限られ、大容量ファイルを簡単に受渡しすることができず、市職員が外出先や出張先からのイントラネットへのアクセスが制限されているという課題がある。

 実証実験では、NerveNetのセキュリティ機能と縁sysが持つ情報共有機能を組み合わせて、外部からイントラネット上の縁sysへアクセスする。NerveNetにより、既存の情報セキュリティポリシーを変更することなく、必要な情報へのアクセスが可能となる。今年度は、実証実験専用の縁sysサーバーとサンプルデータを用いて、利用者の使い勝手や管理者の運用方法を確認するとともに、脆弱性検査を行いて情報セキュリティの機能を検証する。

 実験ではNerveNetが持つセキュリティ機能を拡張し、NerveNet基地局が通信キャリア回線に接続しているタブレット機器と、接続相手である松江市のサーバー機器間に対して、呼接続方式(SIP)による機器認証を実行後、機器間にセキュアなVPN回線を提供する。タブレットの端末認証も加えて実験を行う。

実証実験用アプリケーションのイメージ(市役所外からのイントラネットへの安全なアクセス)

 また、自治体間の安全な情報連携についても検証を実施。塩尻市と松江市のNerveNetを接続し、セキュリティポリシーを変更することなく、地域間の安全な情報連携を検証する。具体例としては、松江市の観光や歴史に関する情報を、NerveNetの情報連携アプリを通じて配信し、塩尻市に設置したデジタルサイネージに表示。塩尻市民の視聴状況や管理者の運用方法を確認するとともに、脆弱性検査を行い、情報セキュリティの機能を検証する。

 自治体間の情報連携実証実験でも、外部からのアクセスと同様にセキュリティ機能を拡張し、NerveNet基地局がインターネットに接続している松江市のサーバー機器と、接続相手である塩尻市のサーバー機器間に対してSIPによる機器認証を実行後、機器間にセキュアなVPN回線を提供する。さらに、サーバー間の情報を連携するため、NerveNetに新たに情報連携基盤と情報連携アプリを提供する。

松江市-塩尻市の連携実証実験アプリケーションのイメージ(自治体間の安全な情報連携)
自治体間の情報連携のデジタルサイネージの表示イメージ(画面サンプル)

 日本ユニシスは、今回の実証実験により、NerveNetと通信キャリア回線や既存のインターネット回線との連携や組み合わせにおいて、利用者の使い勝手や情報セキュリティの面からの安全を確認する。また、松江市の出先機関や企業局との地域内イントラネット構築に向けて準備・設計を行い、実証実験に続く次年度のアプリケーション検証も予定している。

 今後は、2016年度以降に自治体や企業がNerveNetを活用したアプリケーションやプラットフォームを実用化することを目指す。

三柳 英樹