ニュース

富士通研究所、AI技術「Zinrai」を活用した混雑緩和の実証実験をシンガポールで実施

周辺飲食店のクーポン提示など、混雑緩和につながる提案を分析

 株式会社富士通研究所は、シンガポールのイベント施設やスポーツ施設、商業施設において、人と交通の混雑を緩和する実証実験を11月1日から開始した。

 実証実験は、イベントの終了後などで特定の交通手段に混雑が予想される状況において、別の交通手段の割引や周辺飲食店のクーポンなどをスマートフォンのアプリを通じて提案し、その効果を検証するもの。提案は富士通のAI技術「Human Centric AI Zinrai」を用いて生成し、提案内容を適切に調整することにより、混雑時間帯のシフトや交通手段の分散などによる混雑緩和を実現する。

 富士通研究所では、行動提案の受け入れやすさを定式化した行動誘導モデルを開発。既に開発済みの、人の移動ニーズと事業者利益を両立させる技術を基礎として、富士通のAI技術「Zinrai」の機械学習や予測・最適化などを用いた。

 行動誘導モデルは、人にインセンティブを織り交ぜた行動を提案した際の受け入れやすさを、満足度と行動誘導項から算出。受け入れやすい行動を複数抽出し、その中で混雑の分散への貢献度が高い行動をスマートフォンに表示することで、最適な行動を提案する。

行動誘導モデル
混雑緩和に結びつく行動を提案

 受け入れやすい行動の事前検証として、シンガポールのスポーツ複合施設内におけるスポーツイベントにおいて、500人を対象にアンケートを実施。混雑状況の推移予測を正確に通知すると、51%の人々がすぐに帰宅するよりも商業施設で時間を費やし、さらに400円相当のクーポンを提供すると、73%の人々が商業施設への立ち寄りを選択するといった結果を得た。アンケート結果に基づいたシミュレーションでは、施設を利用する1万人のうちクーポンの提供により約40%が行動を変えると仮定すると、混雑が30%解消できるという。

 富士通研究所では、シンガポールの複数の施設において、効果検証と性能向上を目的に2017年12月31日まで実証実験を行う予定。実験結果の活用と変更した本技術の研究開発も進め、2016年3月までに富士通の位置情報活用クラウドサービス「SPATIOWL」への搭載を想定した実用化を目指すとしている。

三柳 英樹