ニュース

ジム・ホワイトハーストCEOが来日会見、「Red Hatの戦略は『バイモーダル』」

Mobile Application Platformなどの新製品も発表

 レッドハット株式会社は4日、自社イベント「Red Hat Forum」開催に合わせ、米Red Hat社CEOのジム・ホワイトハースト氏の来日会見を開催した。

 同時に、MBaaS(Mobile Backend as a Service)の「Red Hat Mobile Application Platform」と、システム診断ツールの「Red Hat Insights」の日本での提供開始を発表した。

Red Hatの「バイモーダル」戦略

米Red Hat CEOのジム・ホワイトハースト氏

 ホワイトハースト氏はRed Hatの戦略について、「バイモーダル」という言葉で説明した。バイモーダルとは、調査会社のガートナーが使っている言葉で、基幹システムなど固定して動き続ける「モード1」のシステムと、すばやく何度もデプロイする今時の「モード2」のシステムの両方に対応することを指す。

 ホワイトハースト氏は「世界は変わった」として、かつては企業の強みは有形資産に結びついていたが、これからのビジネスモデルは情報を核として形成されると説明。そして、UberやFacebook、Airbnbなどを例に、“顧客とのエンゲージメント”が重要になると語った。

 ここでバイモーダルの概念が出てくる。Red Hatによって、オープンソースで基幹システムが構築されるのがあたりまえになり、多くの企業がRed Hat製品を利用している。一方、こうしたモード1のシステムと異なり、モード2のシステムはステートレス(差し替えがきく)で、スピーディーにスケールアップやスケールダウンがなされる。

 「Red Hatはモード2とモード1とに共通する技術を持っている。例えば、基幹システムもOpenStackも、ハイパーバイザーのKVM上で動く」とホワイトハースト氏。さらに、Red HatがDockerやKubernetesなどを含む多くのオープンソースのプロジェクトに参加していることも示された。

 「かつてオープンソースはコスト削減のために導入されたが、いまはイノベーションをけん引するものになった。CI(継続的インテグレーション)やCD(継続的デリバリー)、ビッグデータなどは、オープンソースでなくてはできない」(ホワイトハースト氏)。

 そのうえでホワイトハースト氏は、調査会社のIDCによる、Red Hatの各市場が2018年にどのぐらいの規模になっているかの予想を示した。全体で670億ドルで、OS市場についても「まだRed Hatが伸びるところがある」という。

 また、顧客の分野のデータを示し「インフラ製品なのでいろいろな業種の顧客がいて、バランスがとれている」と語った。そして、54四半期で連続の収益増であることや、顧客企業の例を見せ、「景気の減速があってもビジネスが伸びている」と語った。

「オープンソースはコスト削減からイノベーションに」
2018年のRed Hatの市場予想
「54 四半期で連続の収益増」
Red Hat製品を使っている企業の例

MBaaSとシステム診断のサービスを日本投入

 11月4日付けで、Red Hat Mobile Application PlatformとRed Hat Insightsの日本市場への投入も発表された。

 両者とも、発表時点ではインターネット上のサービスであり、評価版の段階。近く正式提供するほか、サブスクリプション方式によるソフトウェアの販売や、オープンソース化も予定している。米国では6月に発表されており、今回の日本市場投入に伴ってレッドハット日本法人は営業体制を整える。

 Red Hat Mobile Application Platformは、MBaaSと呼ばれる、スマートフォンなどのモバイルアプリのクラウド側システムを提供するサービス。元はFeedHenry社のサービスで、同社の買収によりRed Hatでリブランドした。Node.jsによるサーバーアプリケーションや、iOS/Android/Windows Mobileなどへの幅広い対応、コードレスフォームビルダー、DevOpsプラットフォームなどが特徴。

 評価版として、同社サイトから評価用アカウントを取得して利用できる。正式版開始は12月1日の予定。サブスクリプション方式での提供も、年内を予定している。

 米Red Hatのキャサル・マクグロイン氏(モバイル製品部門副社長兼ゼネラルマネージャー)は、「Red Hat Mobile Application Platformは、アプリの開発だけでなく、ライフサイクルまで管理する」と説明。さらに、PaaSプラットフォームの「OpenShift」と協調動作するように統合すると語った。

 マクグロイン氏は、顧客企業の例を示し、そうした中でイギリスの鉄道会社の事例を紹介した。モバイルアプリケーションを8時間で構築・テストしたとのことで、「モード1の会社がモード2に短時間で対応できた」と語った。

米Red Hat社のキャサル・マクグロイン氏(モバイル製品部門副社長兼ゼネラルマネージャー)
Red Hat Mobile Application Platformの特徴
OpenShiftとの協調動作
Red Hat Mobile Application Platformのポジション。ライフサイクルまで管理
Red Hat Mobile Application Platformの利用企業(FeedHenry時代からの顧客も含む)
イギリスの鉄道会社の事例。モバイルアプリケーションを8時間で構築・テスト

 また、Red Hat Insightsは、システムの状況を診断し、問題を事前に予知するシステム管理サービスだ。顧客のシステムから情報をサーバー(Red Hat Insightsエンジン)に送り、Red Hatのナレッジベースなどを元に分析する。

 ホワイトハースト氏は「Red Hatにはユーザー企業の問題についての知識が集まっている。それをもとに、前もって問題が起こる前に診断し、手当てする」と説明した。

 評価版は、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のバージョン6以上のユーザーには、Red HatカスタマーポータルまたはRed Hat Satelliteを通じて提供される。また、OpenStackをベースにしたIaaS基盤のRed Hat Cloud Infrastructure(RHCI)のユーザーにも、Red Hat カスタマーポータルまたは統合管理ツールRed Hat Cloud Formsを通じて提供される。サブスクリプション方式での提供も、3月上旬に予定している。

高橋 正和