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データ処理の「分散」に妙あり、富士通がIoTデータ活用基盤サービス
(2015/6/10 14:28)
富士通株式会社は10日、IoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud IoT Platform(以下、IoT Platform)」を発売した。
IoT Platformは、人や物の膨大なセンサーデータをリアルタイムかつ効率的に活用するための機能をパブリッククラウド上に構築・提供するサービス。富士通研究所が開発したデータ処理を動的に分散・高速化する「分散サービス基盤技術」をサービスに組み込み、データ量が急増してもリソースを抑えて安定したパフォーマンスを実現するという。
同社によれば、必要なコンピューティングリソースは従来の数十分の一。また従来は、データをリアルタイムにクラウドに集約、またはデータ発生源に近いゲートウェイで処理をした後に、結果のみをクラウドに集約するなどのデータ処理方法が採られていたため、安定性は保てても、リアルタイム性を両立させるのは困難だったという。
同サービスでは、クラウド型に構築した集中管理機構が、専用アプリを組み込んだゲートウェイからネットワークの監視情報を受け取り、データ処理の最適配置を動的に行うことで、システム全体のパフォーマンスを最適化。データ処理を「リアルタイム」に近づけている。
従来の「HTTP-REST」に加え、通信負荷やバッテリー消費の少ないIoT向けの軽量プロトコル「MQTT」を標準でサポートし、多様なセンサーやデバイスを活用できるのも特長。その追加や構成変更も柔軟に行える。
専用ダッシュボードから収集したセンサーデータのレコードへのアクセス権限を設定。セキュリティを確保しつつ、柔軟なアクセスポリシーを定めることで、複数企業で安全にセンサーデータを活用するビジネスモデルが成り立つとしている。
そのほか、IoTパッケージ「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE(以下、ユビキタスウェア)」のコアモジュールや各種ミドルウェアとの連携機能も2015年度中に提供する予定。これにより、ユビキタスウェアが組み込まれた機器・デバイスからの生データを解析し、人の状態や位置情報などの結果をIoT Platformにアップロードできるという。
税別価格は初期費用が5万円、月額費用が5万円から。
併せて、今後の実証実験や海外企業との提携強化も明らかにした。
2015年3月からは富士通アイ・ネットワークシステムズの山梨工場にて、製造現場をデジタルに可視化するための実証実験を行っている。結果、各生産ラインの改善プロセスにかかる時間を大幅に短縮し、特に少量多品種の生産ラインにおいては、ライン停止時間の約3割減が見込まれるという。この知見・ノウハウを基にした製品・サービスを8月から提供する予定。流通業向けにはまた、BLEビーコンも併用した小売現場での動線分析に関する実証実験も行うという。
提携については、IQP Corporation(本社:ケイマン諸島)と協業。新たに300万ドルを出資し、資本業務提携を強化する。IQPは、多様なセンシング情報を基に利用者のアクションにつなげるアプリを簡易に開発・実行できるソフトを提供しており、2014年11月から同ソフトを活用したIoTの実証実験を行ってきた。今後、IoT Platformへ同ソフトを組み込むことを視野に共同で連携機能の開発を進める予定。