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KDDI研、SDN/NFV時代を見据えた運用自動化の実証に成功

 株式会社KDDI研究所は26日、日本ヒューレット・パッカード株式会社、シスコシステムズ合同会社、ノキアソリューションズ&ネットワークス株式会社、インドTech Mahindra Limited、日本電気株式会社の協力のもと、移動体設備に加えて固定系設備も仮想化したテストベッドを構築し、同テストベッド上で運用フローの完全自動化の実証に成功したと発表した。さらに、Affirmed Networksやウインドリバー株式会社による仮想化基盤ソフトウェアも加えて、SDN/NFV時代の運用高度化実現に向け、総合実証実験や標準化に向けた活動を推進しているという。

 従来の通信設備では、ルータや交換機など、ハードウェアと機能が一体化した専用装置を利用するケースが多かったが、近年では、高性能化した汎用サーバーが通信設備のハードウェアとして使われ始めている。また、汎用サーバーに仮想化技術を適用することによる、リソースの効率化も期待されており、特に、SDNやNFVといったネットワーク仮想化技術では、「重要な設備の輻輳(ふくそう)時に他設備のリソース(処理能力)を迅速に融通し、深刻な事態を回避する」といった効果が期待されている。

 特に、第5世代モバイルインフラ(5G)に向けては、IoT/M2M、医療サービスなど多様化する要件を満足させるために、ネットワーク仮想化による柔軟性の獲得が不可欠になるとのこと。

 ただし、このような通信設備を対象とした仮想化技術は途上段階にあり、

・設備の機能がソフトウェア化し、ハードウェア部分との構成分離が進むことによる、異常箇所やその影響範囲の特定、復旧プラン策定といった運用フローの複雑化
・移動体設備と固定系設備など、従来は縦割りで管理されていたさまざまな設備を、横断的に仮想化するために必要となる管理手法が未成熟
・汎用サーバーの信頼性が、必ずしもキャリアグレードに達していないケースがある

といった課題を抱えている。

 このため、現状は仮想化の範囲を移動体インフラのコア設備のみに限定するような試みが非常に多く、結果として、設備を汎用化しながらも管理手法は従来のまま変わっていないので、これらの課題は解決されていない。また、リソースの融通可能な範囲も制限されることから、前述の、輻輳時を想定した効果も制限されてしまっているという。

 今回、KDDIでは、移動体機能として各種EPC(Evolved Packet Core)機能、固定系機能としてCPE(Customer Premises Equipment)、その他機能としてファイアウォールといった共通系の機能を、汎用サーバーなどから構成される仮想化基盤上でソフトウェア化し、横断的に管理制御するテストベッドを構築。その上で、ソフトウェア化された機能、あるいは、仮想化基盤の異常に対して、統合管理制御システムが自動的かつ即座に障害復旧することに、世界で初めて成功したという。

 KDDIでは、これにより、前述のような課題を解決し、5Gの実現に向けた大きな一歩になると位置付けている。

 なお、統合管理制御システムは、障害影響の分析結果に基づき、あらかじめプログラムされた運用業務フローを起動して、フローに基づいた復旧手順を自動実行するもの。最適にプログラムされた業務フローの定義と、それに基づく各種機能の制御や警報授受を可能にする共通インターフェイス、すべて機能をピースとして組み合わせ可能とするためのモデル化、といった技術ポイントにより、課題を解決するとしている。

 KDDIでは、運用自動化に関する成果の一部を、6月1日からフランスのニースで開催される「TMForum Live!」、および、6月10日から日本の幕張で開催される「Interop Tokyo 2015 SDI ShowCase」にて展示するとのことだ。

石井 一志