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富士通、“ヒューマンセントリックIoT”を実現するパッケージ「ユビキタスウェア」を開発
センシングしたデータを分析し価値あるデータとして提供
(2015/5/12 10:00)
富士通株式会社は5月11日、顧客の業務に合わせ、人や物の状態・状況・周囲の環境をセンシングし、解析・分析することですぐに活用できる価値あるデータを提供するIoTパッケージ「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE」(以下、ユビキタスウェア)を開発したと発表した。
「ユビキタスウェア」は、センサーおよびセンシングしたデータを解析・分析するマイコンと無線通信機能を組み合わせたユビキタスウェアコアモジュールと、データをクラウド上で学習・分析するセンサー活用ミドルウェアで構成される。センシングしたデータを、同社独自アルゴリズムであるヒューマンセントリックエンジンを活用して分析し、転倒検知や身体姿勢状態検知など顧客がすぐに活用できるデータに変換して提供するという。
富士通 執行役員常務 ユビキタスプロダクトビジネスグループ グループ長の齊藤邦彰氏は、「ユビキタスウェア」を開発した背景について、「IoT時代が到来するなか、当社では、人を中心としたセンシング技術によって、顧客とともにIoTでの価値創出に取り組む“ヒューマンセントリックIoT”を推進している。今回、これまで法人・コンシューマ市場で培ってきたICTと人とのインターフェイスであるユビキタスフロントをIoTの世界へと拡大し、ヒューマンセントリックエンジンをベースにした『ユビキタスウェア』として新たに展開する」と説明している。
また、IoT導入における課題として、「多種多様なセンサーから生成されるセンシングデータが膨大で、そのままでは取り扱いが困難」、「さまざまな業種・用途があるため、案件ごとに大きな開発規模を要し、設計の共通化や横展開がしにくい」、「データを効率的・効率的に利用しつつ、セキュアな運用が必要」である点を指摘。「これらの課題を解決するため、『ユビキタスウェア』では、センサーの生データだけでなく、独自アルゴリズムによる価値のあるデータを提供する。また、必要な部品をパッケージ化することで、最小限の開発工数で素早く簡単にシステム構築できるようにした。さらに、セキュリティ基盤と本人認証技術を応用し、安心・安全なIoTの実現を支援する」としている。
具体的には、加速度や気圧などのユビキタス製品で活用してきたさまざまなセンサーと、それを直接制御し解析・分析する専用マイコン「Bluetooth Low Energy」(BLE)対応の無線通信機能を組み合わせた「ユビキタスウェア」コアモジュール、およびクラウド側でデータを学習・分析する、同社のIoTプラットフォームを含めた複数のプラットフォームを利用可能なセンサー活用ミドルウェアを提供する。
「ユビキタスウェア」コアモジュールは、センサー群(加速度、気圧、地磁気、ジャイロ、マイク)とヒューマンセントリックエンジン搭載のLSI、BLE通信をパッケージ化したモジュール。顧客の業務内容に合わせ、パルスセンサー、GPSなどのオプションを選択できる。センサー活用ミドルウェアは、センシングミドルウェアとロケーションミドルウェアを用意。センシングミドルウェアでは、「ユビキタスウェア」コアモジュールを活用したセンサーデバイスから収集したデータを元に、人の行動パターンを分析し転倒などの異常状態を検出する分析アルゴリズムを搭載している。ロケーションミドルウェアでは、センサーデバイスから収集したデータを元に、設定した屋内外の範囲内で人や物の位置情報を提供する。
「ユビキタスウェア」は、顧客の既存機器・システムに簡単に組み込むことができ、用途に応じてさまざまな機能を実現することができる。機能例としては、「運動強度測定」(人の動きから活動量やエネルギー消費量を算出)、「姿勢検知」(人の動きを3Dでとらえ、立位・座位・横臥位などの身体姿勢や人の状態を把握)、「転倒検知」(人の動きや気圧変化の特徴から人の転倒状態を判定)、「測位・軌跡」(移動の特徴から距離や方向を推定することで、高精度測位や軌跡データの取得を実現)、「熱環境レベル検知」(温湿度が身体に与える熱ストレスの状況を判定し、危険時に注意喚起)、「身体負荷レベル検知」(装着者のパルス数の変化から身体負荷を推定し、過負荷状態時に注意喚起)などを挙げている。
また、同社では、「ユビキタスウェア」を組み込んだデバイスも展開していく。第一弾として「ユビキタスウェア ヘッドマウントディスプレイ」を本日より販売。また、「ロケーションバッジ・タグ」、「バイタルセンシングバンド」、「遠隔見守りステーション」、「ペット見守りトータルソリューション」などを12月から順次提供していく予定だ。
「ユビキタスウェア ヘッドマウントディスプレイ」は、0.4インチのディスプレイ(854×480ドット)、カメラ、マイク、各種センサーで構成された、片目・非シースルー形状のHMD。付属のウェアラブルキーボードや音声による操作が可能となっている。防水(IPX5/7)・防塵(IP5X)対応などのタフ構造で、屋内外や高所など厳しい環境における現場作業でも安心して使用できる。
「ロケーションバッジ・タグ」は、同社独自アルゴリズムによる移動経路推定技術(PDR)を搭載し、GPSの利用が困難な屋内などでも測位が可能。また、屋外ではGPSによって位置を測位することで、屋内外問わず高精度かつ低コストにバッジの位置や動線の把握が行える。さらに、バッジ装着者の姿勢や転倒などの状態も把握できる。
「バイタルセンシングバンド」は、リストバンドに搭載したセンサーで計測した温度・湿度・運動量・パルス数などの情報から、ヒューマンセントリックエンジンにより、装着者周囲の熱ストレス推定を行う。また、短時間での気圧・加速度変化を把握することで、装着者の転倒を検知する。
「遠隔見守りステーション」は、ステーションに搭載したマイクで、発声・咳・寝息・行動を起因とする生活音を収集。独自の音響分析により生活状態の変化を把握し、個人の生活パターンと併せて分析を行う。また、温湿度センサーを活用し熱ストレスを推定する。
「ペット見守りトータルソリューション」(ペット活動センシング端末・ペット見守りステーション)では、留守中のペットの様子のリアルタイム撮影や、ペットの活動変化の自動通知、熱ストレス・乾燥注意報アラート配信など、独自のペット行動ログ解析アルゴリズムによって、離れていても、いつでもペットの様子を見守ることが可能となる。