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多忙な農業指導員の業務をICTで省力化、NEC子会社がシステム提供
(2014/10/29 12:12)
NECソリューションイノベータ株式会社は29日、多忙な農業指導員の業務をICTで省力化する「果菜栽培向け営農指導支援システム」を発売した。
営農指導の現場では、農家が現地での生産指導を期待する一方、指導員は事務作業に時間をとられ、現地での指導時間を十分に確保できていないのが現状という。同システムは、「味や見栄えなどの品質が売価に影響する果菜」を対象とし、園地情報、生育状況、出荷評価データなどをクラウドで一元管理し、データを活用した生産指導を実現する。
具体的には、紙やExcelで個別に管理された園地情報、生育情報、環境情報、出荷評価データをクラウドで一元管理。園地に紐付いたさまざまな情報を経年で比較したり、サイズや品質など園地ごとの生育特性を比較したり、営農指導のワークフローに合わせて、必要な時に必要な情報を検索・閲覧できるようにする。
指導員はタブレット端末を用いて、園地での指導内容をその場で簡単に入力可能。広範囲に点在する園地を指導する場合でも、園地情報にGPS情報が紐付くため、入力の際の園地特定も容易という。これらにより、指導記録や日報作成の事務作業が省力化される。
オプションで「果実成績表提示」と「採果計画作成」にも対応。前者では、サイズ、糖度、酸度、評価点などの果実品質について、出荷時や生育中の状況をグラフ化してレポート出力する。産地平均や栽培目標と比較して、園地ごと/生産者ごとの傾向を客観的に評価できる。
後者では、各園地の生育状況の調査結果から、採果日と糖度・酸度の等級をパラメータとし、産地全体の等級別収穫量をシミュレーションする。指導員は農家ごとに採果予定日や収穫量を計画でき、精度の高い出荷目標管理が可能になるという。
実証実験で見えた営農指導の問題点
NECソリューションイノベータは、2009年からミカンの露地栽培を対象に栽培支援システムを設計し、三重県や愛媛県などで産学官連携の実証実験を行ってきた。その中で、現状の営農指導では、栽培指導以外の事務処理に多大な工数がかかり、現場指導の時間が十分に取れていないこと、指導内容も各指導員のスキルに依存していること、そのため品質向上へ安定した指導ができないことが、問題になっていると把握した。
あるミカン栽培の例では、指導員一人につき200件もの園地を担当し、現場指導希望が多い8月の1ヶ月の間、指導員が現場に行くことができたのは「3日のみ」という状況が見受けられた。農林水産省の調査でも、生産者が今後最も強化して欲しいJAの事業は「農業技術や経営等の指導」と回答した割合が最も高かったという。
今回のシステムはこの問題に向き合ったもので、「農家の収入増加に貢献する“攻め”の営農指導へ転換する」と訴求。ミカン以外のほかの果菜にも展開できる「営農指導支援システム」として、全国のJAや農業生産法人に販売する。価格は個別見積もり。