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「利益16%増」を実現――富士通研、需要・生産のモデル予測制御技術

 株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は、サプライチェーン・マネジメント(SCM)に向けたモデル予測制御技術を開発した。流通業の高精度な需要予測と生産計画の立案で在庫を最適化し、実際に約16%の利益改善効果を確認したという。

 昨今、ビッグデータの活用などにより、需要予測の精度向上が進んでいるが、特売セールや新商品キャンペーンなどにより需要が変化することも多く、そうした変化まで考慮した高精度予測は容易ではない。需要変化の要因を明らかにして予測モデルを高度化することで精度を上げることは可能だが、予測の不確かさをすべて解消できるものではないという。

 今回開発したモデル予測制御技術では、「モデルの不確かさを考慮した上で、刻々と変化する状況に応じて最適な制御を行う」(富士通研)のが特徴で、小売業において「急激な需要の変化に対応しながら、在庫保有コストや在庫切れなどによる機会損失を考慮した、トータルコストを最小とする発注計画の立案できる」という。

 具体的に、(1)各発注時において出荷量制限、納期、賞味期限などさまざまな制約条件の下で、在庫保有コストや在庫切れなどによる機会損失・トータルコストを最小とし、かつ利益を最大にするような設定で最適化計算を行い、最低な発注量を決定、(2)知事時修正される需要予測に基づいて一定期間先までを対象に発注量を最適化、(3)ビッグデータによって得られた複数の長期的予測シナリオを考慮して最悪のケースでも損失を抑え、利益が最大化する発注量を計算する。以上(1)~(3)の予測・最適化プロセスを繰り返すことで、「従来困難であった、予測の不確かさを考慮しながら需要の急な変化などに対応した最適な発注計画を自動立案できる」(同社)という。

モデル予測制御技術による在庫最適化

 小売店の実データを使って発注計画立案に適用し、約90店舗のケースで約60週間分を検証したところ、1店舗以外すべての店舗で利益が増加。従来の需要予測に基づいて安全在庫量を見積もり、発注量を決定する方法と比較すると、全店舗平均で約16%の利益改善が確認できたという。

モデル予測制御技術による在庫最適化の効果(従来手法を100%としたときの各店舗の利益比)

 今後、同技術を予測・最適化プラットフォームへ搭載し、ビッグデータに関する製品・サービス群「FUJITSU Big Data Initiative」のメニューに加える方針。

川島 弘之