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シトリックス、キング社長が2013年の事業戦略を説明
~モバイルワークスタイルを実現するクラウド企業に

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は28日、2013年の事業戦略について発表。同社のマイケル・キング代表取締役社長は、「モバイルワークスタイルを実現するクラウドコンピューティングカンパニーを目指す」との方針を明らかにした。

2013年は今後15年に向けた基礎を築く年に

 キング社長は、「日本の対前年成長率は、2年連続で世界ナンバーワンとなった。これはわれわれの製品が日本の市場に受け入れられている証し。また、単にコスト削減を目指すのではなく、企業における成長の基礎、売り上げの源泉に位置づけ、ソリューションとして導入するケースが増加している」と、2012年度の取り組みを振り返る一方、「2013年は、今後15年に向けた基礎を築く1年になる。お客さま、パートナー、個人とともに一緒に成長していくことが重要な鍵になる」と語った。

 その実現に向けて、1)仕事と生活の調和を図ることを促進するツールの提供、2)個人の成長、キャリア開発、社会への貢献、3)モバイルワークスタイルとクラウドサービスの実現、の3点の取り組みを挙げる。

 まず1)としては、柔軟な労働環境の創出や、作業効率の向上を実現することを目的にするという。

 一方、3)の「個人の成長、キャリア開発、社会への貢献」の取り組みとしては、2013年6月に同社内に「エグゼクティブブリーフィングセンター」を設置し、経営者などに対しても情報提供を行う場を提供。さらにトレーニングセンターを開設し、パートナーなどへのトレーニング機会を増やすとした。

シトリックスのマイケル・キング代表取締役社長
日本の対前年成長率が2年連続で世界一に

Enterprise Mobilityの事業領域へ新たに踏み出す

 また、2)では、新たに「Enterprise Mobility」という事業領域に踏み出す姿勢を示しながら、「デスクトップ仮想化とモビリティ」「クラウド&ネットワーキング」「新規ビジネス機会の創出」の3点を重点投資分野に挙げた。

 このうち「デスクトップ仮想化とモビリティ」では、XenDesktopがナンバーワンのシェアを獲得していることをあらためて強調。「コスト削減だけでなく、モビリティやビジネス上の課題解決といった点での採用が増え、3倍に増加している。Windows as a Serviceをクラウド上で実現するものになる」などと説明する。

 これについては、シトリックス マーケティング本部の伊藤利昭本部長が、「Windowsアプリケーションとデスクトップを真のクラウドサービスとして提供する“Project Avalon”により、次世代のXenDesktopやXenAppに加え、CloudStack、クラウドスタイルサービスオーケストレーションを提供することで、Windows as a Serviceを実現する。IT部門は、社内やグループ会社に対するサービスプロバイダーとしての役割を担うことになる」などと語っっている。

 さらに、“Project Avalon”の導入プロセスにおいて、アセスメント(評価)、デザイン、デプロイメント(展開)、メンテナンスまでを含めた、トータルサポートを提供。コンサルティングサービスや、AppDNAをツールとして活用するといった提案も行っていくという。

 これに加えて、パートナーが事前にXenDesktopのソリューションを検証し、導入時間の短縮や、拡張性などをサポートする「Validated Designs」が、すでに4社から提供されていることも説明した。

“Project Avalon”が登場予定
シトリックス マーケティング本部の伊藤利昭本部長

エンタープライズ向けMDMのXenMobileを発表

 新製品としては、XenMobileを発表した。エンタープライズ向けMDM機能と、メールやデータ、ブラウザといったモバイルソリューションの提供、MDXテクノロジーによるモバイルアプリコンテナ、社員が必要なアプリケーション入手できる統合アプリストア、ID連携およびシングルサインオンといった機能のほか、企業のポリシーにあわせたシナリオベースのアクセス制御などが可能になるという。

 「エンタープライズ向けMDMによって、会社支給や個人所有かを問わず、ユーザーに対する柔軟なデバイスの選択肢を提供。デバイスのライフサイクル全体を管理できる。生産性の向上を図るコラボレーションを実現し、セキュリティを確保したモバイルアクセス、セキュリティを確保したクラウドストレージ、BYODにも対応した一元的なデバイス管理が可能になる」(伊藤本部長)とした。

XenMobileの5つの重要な機能
Enterprise対応のMDM機能を提供する

 クラウド&ネットワーキングでは、「もっとも投資を重視する分野」(キング社長)と位置づけながら、CloudStackが3万人以上のメンバーが参加するコミュニティとなっていること、数100の新たなクラウドが誕生している勢いについても言及。さらに、「2012年は追加導入による大規模化が進展していること、40社以上のサービスプロバイダーが新規導入したこと、大学内で共有するアカデミッククラウドも進展した」(伊藤本部長)という。

CloudStackの現状
CloudStackの商用版であるCloudPlatformも導入が進む

 NetScalerについては、新たな製品として、NetScaler SDXを投入することを発表。サードパーティー製品を含めて、個別に動作するアプライアンスを、仮想アプライアンスとし、統合ソリューションとして提供することができるという。

 そのほか、2012年7月に買収したBytemobileによって、モバイル環境におけるビデオ視聴のソリューションを提供するなどとした。

 「新規ビジネス機会の創出」では、ShareFileにおいて、XenDesktopに対応したオンデマンド同期、オンプレミスエンタープライズとして利用できる機能を追加。ビジネス用途に対応したセキュアなファイル共有サービスとして進化した。また、ShareFile with StorageZonesでは、オンプレミスエンタープライズストレージおよびクラウドストレージを、それぞれデータの保管先として選択でき、ユーザーは保管先を意識することなく利用できるという。これら以外の製品、サービスとしては、Premium Support、Subscription Advantageも提供するとした。

買収したBytemobileのソリューションを展開へ
ShareFileの活用も進める

モバイルワークスタイルを実現に向けて

 なお、米Citrix Systems セールスおよびサービス担当シニアバイスプレジデントのアル・モンセラット氏は、「シトリックス日本法人は15周年を迎えたが、この間、継続的なパートナーシップを重視してきた。2012年度の業績は、パシフィック地域では前年比30%増となり、日本はさらに早い成長を遂げている」と、日本の業績を紹介。

 その上で、「7000社以上の上場企業のうち、過去10年間毎年増収を続け、過去3年間キャッシュフローを増加させ、時価総額50億ドル以上の企業はAppleなど4社しかない。その1社にCitrixが入っている。過去10年間の収益の年平均成長率は17.2%であり、純利益は18.3%、株価成長は18.2%であり、NASDAQ全体の株価成長の8.5%を大きく上回る。収益は25億9000万ドル、社員は8000人以上、お客さまは26万社以上であり、100カ国、1万社以上のパートナーがいる」と本社の現況を紹介し、好調さを強調した。

 また、「10年前にはアプリケーション、デスクトップ、モビリティという事業だけだったが、いまではコラボレーションや共有、クラウド&ネットワーキングが加わっている」との同社の事業状況を説明。「モバイルワークスタイルを実現するのが当社の目標。社員の生産性を最大限に引き出し、俊敏性をもたらすとともに、仕事とプライベートの調和を図ることができる。この実現を支援していく」などと話している。

米Citrix Systems セールスおよびサービス担当シニアバイスプレジデントのアル・モンセラット氏
モバイルワークスタイルの実現を目指すという

(大河原 克行)