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国内企業のすみやかなクラウド移行を支援する~日本IBM、Power Systemsファミリを拡充
(2013/2/7 06:00)
日本IBMは6日、同社開発のPower7+プロセッサを搭載した「Power Systems」サーバーファミリにおいて、エントリモデルおよびミッドレンジモデル8機種の追加を発表した。2012年10月に発表したハイエンドモデルに続き、あらゆるレンジの顧客層にリーチするPower Systemsラインアップが整ったことになる。日本IBM 常務執行役員 システム製品事業担当 三瓶雅夫氏は「ここ20年、お客さまがインフラに対して抱えている問題はまったく変わっておらず、多くの企業はサイロ型のシステムが乱立する状態に苦しんでいる。この状況を打破し、サイロからクラウドへの移行をスムースに進めるのが、新しいPower Systemsラインアップ」と語り、IBMが掲げる“Smarter Computing”のビジョンの下、低コストで迅速なクラウド型最適インフラへの移行を支援していくとしている。
高性能プロセッサPower7+の機能をローエンド/ミッドレンジへ
今回発表された新製品は、中規模ビジネス向けモデル「IBM Power 760」「IBM Power 750 Express」、エントリモデル「IBM Power 740 Express」「IBM Power 730 Express」「IBM Power 720 Express」「IBM Power 710 Express」、OSをLinuxに限定した低価格モデル「IBM PowerLinux 7R1」「IBM PowerLinux 7R2」の合計8機種。いずれも2012年10月に発表された1チップ8コアのPower7+プロセッサを搭載している。最小構成価格はエントリモデルのIBM Power 710 Expressで83万7,000円からとなっている。出荷は2月20日より順次開始される予定。同クラスのx86サーバー製品と比べて、コストパフォーマンスの高さを強調している。
Power7+を搭載したPower Systemsサーバーは、従来のPower7搭載モデルに比べ、CPU内蔵のeDRAM L3キャッシュサイズが2.5倍の80MBに増強されているため、処理能力が最大で90%も向上している。また仮想化技術「PowerVM」の改良により、1コア当たり最大20の仮想サーバーを構成できるため、リソース利用効率の高いプライベートクラウド環境が構築できる。さらにシステム上の一部のコアを未起動にしておくことが可能で、プロセッサ障害時には代替コアとして動的に未起動コアを稼働させることもできる。
細かな粒度で仮想サーバーを構成し、動的なリソースの増減を可能にするPower7+テクノロジだが、今回の新製品発表によりローエンドおよびミッドレンジまで訴求することが可能になったといえる。
さらに省電力効果の高さもPower7+の大きな特徴となっている。消費電力と温度管理用のデバイスである「Thermal Power Management Device(TPMD)」を搭載、さらにプロセッサ能力とシステムワークロードに応じて動的にプロセッサのクロックや消費電力の最適化を実現する機能を備えている。東日本大震災以降、サーバーの電力系に注目する顧客が増えており、エネルギー効率の最適化というニーズに応えたかたちだ。
x86サーバーからPower Systemsへの移行がもたらすメリット
Power Systemsシリーズの役割は国内企業のすみやかなプライベートクラウド移行を支援することにある。三瓶氏は現在のインフラが抱えている課題として、
・運用保守費用が全ITコストの7割を占めており、しかも年々増加
・85%のCPUが稼働していないアイドル状態にあり、ムダ/ムラの多い使用形態
・すぐにサービスをローンチしたいというビジネス部門の要求に対して必要なインフラリソースを提供できない
・ソーシャルメディアやモバイルデバイスの普及拡大による情報爆発についていけない
・膨大な情報からの知見獲得が困難
・情報漏えいやサイバー攻撃などのセキュリティ脅威の増大
といった項目を挙げている。これらの弊害は、オープンシステムが提唱されてから20年以上に渡り、部門ごとにバラバラのシステムがサイロ状に乱立してきたことに端を発する。解決するためには「ワークロードごとにリソースをプール化し、最適化をはかるクラウド最適型インフラへの移行が不可欠」(三瓶氏)であり、これを実現、つまり既存のサーバーリソースを集約して適切な配分でプールを作成できるのがPower Systemsサーバーだとしている。
ここでのポイントは、適用業務を構成するワークロードを「トランザクションデータベース」「アナリティック」「ビジネスアプリケーション」「Web/コラボレーション」という4つに大別し、それぞれのワークロードごとにリソースプールを用意するという点だ。4つのワークロードに分類した根拠として「8000社を超えるお客さまのシステムを分析した結果」だと三瓶氏は説明している。現場が求めるワークロードに沿ってリソースをプール化し、「使いたいときに使いたいだけのリソースを提供することで、セキュリティも高められ、ガバナンスも効かせやすくなる」としている。
またTCOの削減もPower Systemsサーバーが掲げる特徴のひとつだ。「最近のソフトウェアはコア単位で課金されるケースがほとんど。少ないコア数でリソースを適切に配置できるサーバーであればコストを大幅に抑えることが可能になる」と日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部 理事 皆木宏介氏は指摘する。
皆木氏はPower Systems導入によるTCO削減事例のひとつとして、通信カラオケ事業を展開するエクシングのデータベース(Oracle Database)基盤刷新事例を挙げている。カラオケ会員の急激な増加に伴い、場当たり的にx86サーバーを増大していた同社だったが、サーバー数が15台/56コアになったところでピーク時のデータベース性能が限界を迎え、チューニングに大きな負荷がかかるようになっていた。また、サーバーの増加に比例して運用コストも増加の一途をたどっていた。だがPower Systemsを導入してサーバー統合を行い、データベースプールを構築したことで、サーバー台数を3台に集約、Oracleのライセンス費用も1/3に削減し、さらに処理能力は4倍になったとしている。リソースプールの最適化が奏功した好例といえる。
もうひとつの大きなポイントは「チップを開発しているからこそ、“止めないハードウェア”を設計できる」(日本IBM Power Systems テクニカル・セールス システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト 伊東成倫氏)と強調する高可用性だ。クラウド環境に移行するにあたっては、セキュリティと可用性(障害対応)が課題になることが多いが、Power Systemsサーバーは、従来のPower6から実装しているリカバリユニット(RU)に加え、Powrer7+ではプロセッサレベルでRAS機能を強化している。特に「稼働中にプロセッサを再初期化し、ファームウェアの並行アップデートを行うPower On Reset Engine(PORE)と、キャッシュ行削除における自己回復機能のL3 Cache Dynamic Column Repair」という2つの機能強化により信頼性を大幅に向上している。セキュリティに関しても「ファームウェアレベルで仮想化を実装しており、PowerVMに関しての脆弱性の報告は現在のところ1件もない」(伊東氏)といえう。
クラウドに対する関心は高まっているとはいえ、今後のITインフラ計画に悩む国内企業は少なくない。特に、x86サーバーの乱立によるサイロ化がITインフラの増殖と複雑性に大きくかかわっているとするのがIBMの主張であり、その解決策のひとつがすぐれた仮想化機能でリソース集約を行うPower Systemsサーバーだといえう。IBMは今後、クラウドへの移行を推進するために同社の移行総合技術センターを通して、8000件近いPower Systems移行実績に基づいた無償アセスメントを国内企業に対して実施、移行方法、リスク、ワークロードを事前に提示する方針を明らかにしている。