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日本IBM、Linux専用サーバー最上位の「PowerLinux 7R4」を発表~レッドハットのオフィスに検証センターも

PowerLinux 7R4の製品仕様

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7月31日、Linux専用サーバー「PowerLinux 7R4」を発表した。PowerLinux 7R4は、POWER7+プロセッサを最大32コア搭載可能で、Linux専用サーバーシリーズ「PowerLinux」ファミリーの中で最上位モデルとなる。

 日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部長の皆木宏介氏は、Linuxサーバーへのニーズと現状とのギャップについて、「従来のLinuxサーバーは、CPUや仮想化の選択肢が限定的で、パフォーマンスを強化するには台数を追加するしかなく、信頼性が求められるシステムでは複数の筐体を担保していた。しかし、ビッグデータ時代におけるLinuxサーバーは、クラウドを支える信頼性とビジネスを支えるコスト効率、大量のデータを処理できるパフォーマンスが求められる」と説明、PowerLinux 7R4こそこうしたニーズに応えられるサーバーだとした。

 日本IBM システム製品事業 テクニカル・スペシャリストの新井真一郎氏は、PowerLinux 7R4について、「コスト効率を最適化する仮想化機能と、信頼性・可用性に優れたクラウド資源プール、アナリティック向け高速処理性能の3点が特徴だ」と話す。

日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部長の皆木宏介氏
日本IBM システム製品事業 テクニカル・スペシャリストの新井真一郎氏

 まず、同サーバーの仮想化機能「PowerVM for PowerLinux」は、最大640の仮想サーバーを統合できるという。プロセッサ能力は最小20分の1コア単位で割り当て可能で、運用時はさらに100分の1コア単位で自動制御できることから、「x86サーバーの仮想化では難しかった高パフォーマンスとリソース制御、堅牢性が実現する」(新井氏)としている。また、PowerVM for PowerLinuxは暗号化およびデジタル署名されファームウェアに格納されているため、「リモートからのアクセスは不可能で、脆弱性の報告件数が0件だ」という。

 信頼性・可用性については、仮想化環境でのストレージ可用性を向上させるため、I/O仮想化サーバー「Virtual I/O Server」を筐体内に2つ同時稼働させ、I/O仮想化機能の停止障害から仮想サーバーを保護。「x86でのサーバー仮想化統合時に単一障害点となるストレージ接続仮想化機能を冗長化し、システム停止リスクを最小限にとどめている」(新井氏)という。

 また、IBMの調査によると、大規模システムで発生するハードウェア障害のうち約25%はPICアダプターが起因となっていることから、PowerLinux 7R4では電源を切ることなくPICアダプターの交換作業ができるようにしたという。さらに2014年には、これまでx86製品で提供してきたKVMプラットフォームのサポートをPowerLinuxにも拡大する予定だとしている。

 高速処理性能については、PostgreSQL 9.2におけるx86 Linuxサーバー(AMD)とPowerLinuxの性能を比較。「同等のトランザクションを処理するにあたり、x86サーバーはPowerLinuxの4倍の物理コア数が必要だった」(新井氏)としている。また、フラッシュ技術を活用した拡張I/Oドロワー「EXP30 Ultra SSD I/O ドロワー」が利用可能で、POWER7+プロセッサと直結したGX++バス接続により、48万IOPSを実現するという。

Linuxシステム向け製品のポートフォリオ
PowerLinuxとx86システムの性能の比較

パートナーとの協業が不可欠

 皆木氏は、IBMがPower SystemsにおいてLinux対応を強化していることはもちろん、「パートナーとの協業にも力を入れている」とする。発表会では、エンタープライズDB 代表取締役社長の藤田祐治氏が登場し、PowerLinuxに対応した同社の「Postgres Plus Advanced Server」について説明。同製品をx86版と同等の価格で提供するとした。

 また、IBMは同日よりレッドハットの恵比寿オフィスにPowerLinuxの検証機を設置、「PowerLinux検証センタ」として顧客やISV向けの検証環境を提供するとしている。レッドハット グローバルサービス本部の藤田稜氏は、PowerLinuxがミッションクリティカルな仮想化や、複利計算、科学技術計算に最適だとした上で、検証センターでは「スクリプト系言語やコンパイルが必要な言語で書かれたアプリケーションソフトウェアの検証が可能になる」と述べた。

エンタープライズDB 代表取締役社長の藤田祐治氏
レッドハット グローバルサービス本部の藤田稜氏
Linux市場への取り組みについて

 PowerLinux 7R4の価格は、POWER7+ 3.5GHz 16コア、メモリ64GB、HDD 300GBの最小構成の場合で408万2300円(税別)。出荷は8月23日からとなる。IBMでは今後、エンタープライズサーバーの「Power 770」「Power 780」「Power 795」などのLinux専用エンジンも開発していくとしている。

西野 隆