大河原克行のキーマンウォッチ

「クラウドビジネスの成功モデルを確立したい」~富士通マーケティング・生貝健二社長

 「富士通グループにおいて、クラウドビジネスを加速する役割を担うのはFJM。まずは、クラウドビジネスにおける成功モデルを確立することを優先したい」と切り出すのは、富士通マーケティング(以下、FJM)の生貝健二社長。

 2013年4月1日付で社長に就任し、約4カ月が経過。2010年10月からスタートした新生FJMの社長としては二代目となる。直販営業とパートナービジネスの「二刀流」の体制を維持しながら、富士通グループにおける中堅・中小企業ビジネスの中核的役割を担う企業としての存在感を増している。

 FJMの生貝社長に、新社長としての抱負、クラウドビジネスへの展開、そして、今後の取り組みについて聞いた。

ようやくエンジンがかかってきたFJM

――新生・富士通マーケティングが2010年10月にスタートしてから、間もなく3年を経過します。そのなかでの社長就任となりました。いまのFJMの状況をどうとらえていますか。

富士通マーケティングの生貝健二社長

 2010年10月に、富士通の中堅民需市場向け事業を旧富士通ビジネスシステム(FJB)に統合するとともに、社名を変更し、中堅・中小企業向け事業、およびパートナー支援機能を一元化。さらに、中堅市場向けソリューション「GLOVIA smart」の企画および開発機能を統合し、業種・業務パッケージ商品やサービスを提供する役割を担っているのが、現在のFJMです。

 私自身、新生・FJMの事業方針説明会に、富士通の副社長の立場で出席しましたし、この4月の社長就任前にも、ずっと社外取締役を務めていましたので、FJMに関してはかなり理解した上で、この立場に就いたと考えています。

 2010年10月から現在までの取り組みをみると、当初、FJMが目指した方向性や考え方が着実に定着し、富士通グループが目指すOne FUJITSUのなかにおいて、FJMの位置づけが少しずつ明確になり、それが社員やパートナーにおいても、名実ともに、「腹落ち」してきたのではないでしょうか。

 FJMには強い直販部隊がありますから、パートナー各社は当初、FJMを強力なライバルとしてとらえていたと思います。しかし、この2年以上にわたる取り組みのなかで、FJMに対する見方が大きく変わってきたのではないでしょうか。パートナーと一緒になった商談開拓支援、共同マーケティング展開などを通じ、FJMのパートナー支援策が評価してもらえるレベルになってきたと考えています。

 ただ、富士通との機能を分担というところでは、もう少し踏み込んでいく必要があると考えています。大枠はできたが、より最適な形にしかなくてはならない。そこが課題ではないでしょうか。

 全体的にみれば、ようやくエンジンがかかってきた。これからが加速するフェーズであるという状況です。

――エンジンがかかるまで2年以上というのは、やや時間がかかりすぎでは?

 富士通グループやパートナーを巻き込んだ大きな仕組みの転換ですから、やはり2年ぐらいの期間はどうしても必要になります。ただ、これ以上は時間をかけられないというのは確かです。

――エンジンがかかってきたという手応え感はどこにあるのですか。

 2013年度第1四半期(2013年4月~6月)の実績をみると、民需も公共も、前年同期比プラスで推移していますし、受注では前年比2けた増となっています。そして、注残も増えていますし、手持ち商談も着実に増加している。

 つまり、この2年間にわたって手を打ってきたものが、数字によって、目に見える形で裏付けられてきた。中堅・中小企業向けビジネスのなかで、パートナーとともにシェアを広げ、新たな顧客を拡大していけるという手応えに、エンジンがかかってきたという感触を得ています。

 直販部門では、ターゲットを絞り込んだ取り組みが成果を上げています。いまは、2年連続で増収増益となっている企業、あるいはタブレットやセキュリティに対して積極的に投資する企業、成長市場や成長企業にターゲットを当てた商談を進めています。これが、第1四半期の成果につながっています。

 また、クラウドビジネスにおいても、少しずつ成果が出てきました。中堅企業の上位、中位の事業規模を持つ顧客に対しては、営業とSEとが一対一で提案するようなビジネスを展開していますが、それよりも規模が小さい顧客に対しては、クラウドで展開し、新規顧客を開拓していくことになります。この分野はこれまでにやれていなかった分野であり、経験も少ないのですが、FJMにとっては挑戦しがいがある分野だといえます。

 富士通は、超大手企業、大企業、中堅企業、中小企業というように上の方からシェアが高い。中堅・中小企業に行くとシェアが低い。FJMも同様に、中堅・中小企業のなかでも規模が大きい企業ほどシェアが高い。逆三角形の構成比となっているのです。

 しかし、これからは、この「形」を変えていかなくてはならない。もちろん年商規模が大きい企業向けのビジネスも伸ばしますが、その一方ですそ野も広げていきたい。そのためにもクラウドは重要なツールとなります。新規ユーザーの獲得のためのツールがクラウドというわけです。

(大河原 克行)