大河原克行のキーマンウォッチ

「クラウドビジネスの成功モデルを確立したい」~富士通マーケティング・生貝健二社長 (売上高2000億円がひとつの目標に)

売上高2000億円がひとつの目標に

――新生FJMのスタートとともに、2015年度に3000億円という中期経営計画を掲げていましたが、これは今後どうなりますか。

 これは一度見直をしたいと考えています。私は2013年度の計画を堅めに作りました。前年比101%という計画ですが、挑戦目標としては、売上高で前年比104%としています。先ほど触れたように、受注が伸びていますし、手応えは感じています。ただ、第1四半期の受注ベースで2けた増になったからといって、2013年度通期業績での2けた成長は難しいですね。われわれも、まだそこまでいける体制を整えきれていません。

――まずは2000億円の売上高達成がひとつの目標になると。

 2012年度の売上高は1733億円でしたから、まずは、2000億円というのがひとつの目標になりますが、これの達成時期については、もう少し待ってください。いま、中期経営計画の見直しに向けて、社内で議論を重ねているところです。7月中に粗々で決めて、その裏付けを取り、社内のコンセンサスを取るのが上期中。対外的な発表は、2013年度下期になる予定です。FJM全体として、2000億円規模の売上高を早く達成するというのは重要な目標のひとつです。

――中期経営計画の方向性はどうなりますか。

 富士通グループが打ち出すOne FUJITSUのなかで、FJMの役割を再度定義していきたいと考えています。例えば、産業(製造)、流通といった市場では、いままでの担当領域よりも、もう少し上の規模まで範囲にするといったことも視野に入れたい。また、ヘルスケアといった成長分野においても、すそ野の広い分野はFJMで担当し、主体的にやっていくということも考えています。

 これは、実態にあった形で役割を分担するもので、地域ごとの強さ、弱さ、あるいは業種ごとの強さ、弱さといったものをとらえ、オール富士通として、穴がない形できちっとフォーメーションを整理するという狙いがあります。ポテンヒットがないようにするというわけです。柔軟性を持って業種単位、地域単位で展開していく形にします。

 中期経営計画の基本スタンスは、富士通グループ全体としての売上高、利益の確保、ということになります。成長に向けて、どういうフォーメーションでやったら、お互いのリソースが有効に働くかということを基本にして立案していく。場合によっては、人のローテーションも実施する。それも富士通からFJMへの片道ではなく、FJMから富士通に向けた形を含め、双方向で考える。すでに、富士通でグローバル展開する日本企業を担当するJOC部門に、FJMから出向の形で人を送るといったケースも出ています。

――これまでの中期経営計画は、強い成長を意識したものでしたが。

 確かに、これまでの中期経営戦略は、かなり高い成長率で引っ張っていこうというものでした。もちろん、今回の見直しでも、成長は求めます。しかし、大きな成長よりも、グループ全体としてきちんと利益を確保していくことを重視したい。利益をいかに生み出すかが鍵であり、売り方、あるいは売り物をブラッシュアップすることが必要です。

 利益率の高い商売の仕組みをビジネスに組み込まないと、これからは厳しくなっていくと考えています。

――生貝社長体制で目指すFJMの姿とはどんなものですか。

 中堅・中小企業マーケットにおいては、FJMが最強の軍団であるという位置づけをはっきりさせたい。FJMの強みは、「OneFJM」にあります。営業、SE、CE、工事担当、インストールなどのすべてのユニットを持っている。こうした体制を構築しているシステムインテグレーターは、日本のIT企業のなかでも少ない。FJMの社員1人ひとりが持っているパワーは非常に強い。そして、まじめにやってきている会社ですね。

 あえて要望をあげるとすれば、クラウドの進展や、IT市場の変化の大きな変化のなかで、もっと挑戦してもらいたいという点です。また、富士通の資産をもっと活用するといったことも考えたい。いまは、変化しなくてはならないタイミングですから、とにかくチャレンジしていってもらいたい。クラウドをはじめとして、中堅・中小企業が求めるITソリューションにおいては、どんな要望があってもワンストップで応えられる。これがFJMの強みだと思っています。

大河原 克行