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シスコとネットアップ、中小規模向けのクラウド・仮想化パッケージ「ExpressPod」

「FlexPod」の下位版、部門サーバーの統合などに最適

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)とネットアップ株式会社は5日、パッケージ化された事前検証済みのクラウド/仮想化基盤のラインアップに、中堅・中小企業向けの「ExpressPod」を追加すると発表した。また従来より提供している「FlexPod」においても、NetAppストレージのクラスタリング機能と、VMware環境でのOracle Real Application Cluster(RAC)サポートといった強化を行っている。

 シスコとネットアップでは、主にデータセンターなどに向けて、シスコのサーバー製品「Cisco UCS」とネットワーク機器、ネットアップのストレージを組み合わせたリファレンスアーキテクチャ「FlexPod」を2010年から提供している。このソリューションでは、事前検証済みの認定構成となっているため、テストやシステム構築にかかる期間を大幅に短縮できるほか、マルチハイパーバイザーへの対応、柔軟な拡張が可能といったメリットを評価され、現在はワールドワイドで約1600社への導入実績があるという。

 また2012年5月には、500~1000ユーザーを対象としたエントリーモデルも新たにラインアップし、そのポートフォリオを拡大した。シスコによれば、全般的にビジネスとしては好調というが、スモールスタートのニーズに対応しながら、エンタープライズクラスへの拡張性が担保されていることなどが評価されて、このエントリーモデルが特に好調とのこと。こうした背景から、両社の協業によるリファレンスアーキテクチャの提供については、さらなる拡大が期待されていた。

FlexPodの特徴

 このような声に応えるために提供されるのが、今回発表されたExpressPodだ。ExpressPodでは、FlexPodでカバーしきれていなかった500ユーザー以下のセグメントを主なターゲットとしており、FlexPodよりもシンプル化、低価格化されているのが特徴。FlexPodでは比較的柔軟な構成に対応するものの、ExpressPodではシスコのラック型サーバー「Cisco UCS C220 M3 Server」(以下、C220 M3)とスイッチ「Cisco Nexus 3048」、ネットアップのストレージ「NetApp FAS2200シリーズ」に構成要素を絞り込み、管理製品のCisco UCS Manager、Fabric Interconnectなどは省略されている。

 シンプルという点では、ソリューション設計ガイド「Cisco Validated Design」が30種類以上提供されているFlexPodに対し、ExpressPodでは導入プロセスの手順までを具体的に説明した導入ガイドを提供するので、さらなる導入の迅速化に対応。ハードウェア構成が決め打ちになっていため、拡張性という点では制限は付くものの、規模が限定されている中堅企業以下のシステムや、部門向けのサーバー統合には最適なソリューションとのこと。もちろん、価格面でもFlexPodと比べて安価に提供できる。

 ラインアップとしては、C220 M3を2台、ストレージにNetApp FAS2220を利用する「Small」構成と、C220 M3を4台、ストレージにNetApp FAS2240を利用する「Medium」構成が用意される。なお、拡張性が制限されているとはいえ、あくまでもExpressPodはリファレンスアーキテクチャであり、完全に構成が固定化されているわけではないので、サーバーやメモリ、ディスクシェルフの増設などはもちろん可能だ。

 販売はFlexPodと同様、シスコとネットアップの代理店を経由して行われ、発表時の段階ではネットワールドが取り扱いを表明している。

ExpressPodのラインアップ
乱立する部門サーバーの統合といった用途に最適という

 一方で、FlexPodについても強化が行われた。

 まず、Oracle RACをVMwareによる仮想化環境で利用している企業向けに、導入事例資料などの検証済みアーキテクチャに関するサポートを提供。またネットアップのストレージOS「clustered Data ONTAP」について、VMware環境でのパフォーマンス検証が行われ、FlexPodの検証済みソリューションとして利用可能になった。

 clustered Data ONTAPを利用すると、ネットアップのNASでクラスタストレージ環境を構築できるため、複数の機器にまたがった大規模なストレージ環境を容易に導入できるほか、アプリケーションを稼働させたままデータを移行可能になる。これによって、オンラインでデータを移行させてハードウェアを新しいものに交換したり、適切なロードバランスを行ったり、といったことができるようになり、運用の柔軟性が向上するとのこと。

clustered Data ONTAPによるメリット

(石井 一志)