「宇宙天気予報」実現に向けて――NICTで日立製スパコンが稼働


新システムの外観

 株式会社日立製作所は20日、科学技術計算分野向けスーパーテクニカルサーバー「SR16000 モデルM1」を中核とするスーパーコンピュータシステム(以下、新システム)を、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)に納入し、11月1日より稼働を始めたと発表した。新システムは、太陽の活動によって発生する地球周辺の磁気圏の乱れや宇宙放射線を予測する「宇宙天気予報」のための各種データ算出に活用される。

 新システムは、25.49TFLOPSの理論演算性能を備え、宇宙天気シミュレーションの空間精度は、従来システム比で約100倍に達するという。この新システムを活用し、従来のシステムではスーパーコンピュータの計算能力の限界から実用化が不可能だった「極端現象(巨大磁気嵐群や猛烈な太陽風など1000年に1度程度しか発生しないまれで極端な現象)」をシミュレートする「極端現象シミュレーションプログラム」を世界で初めて運用する。また、地表から高度500キロメートルの空間の状態をシミュレートする「地球大気圏影響シミュレーションプログラム」も開発を進める方針。

 新システムによる各種シミュレートにより、太陽の活動を要因とする磁気の乱れが、人間の活動圏へ与えるほぼすべての影響を予測できるようになるという。それらの予測を基にNICTが作成・公表するのが「宇宙天気予報」。

 宇宙空間では宇宙放射線や高エネルギー粒子などにより、人工衛星の障害や宇宙飛行士の放射線被曝などが発生する危険性がある。また、太陽風が原因となって発生する磁気嵐は、地球用の送電網などに障害を引き起こすこともあり、海外では実際に長時間にわたる停電が発生した例もある。「宇宙天気予報」によって、こうした影響が予想される期間や地域において、通信関連の設備や電力関連の設備などを持つ事業者が、影響を回避・軽減するための対策が可能になると期待される。

 なお、新システムの中核となるSR16000 モデルM1は、ノードあたりの理論演算性能980.48GFLOPSを有し、新システム全体で25.49TFLOPSを実現。NICTで稼働していた従来のシステムの約16倍の性能向上となる。主記録容量はシステム全体で3.25TB。ストレージシステムにはミッドレンジディスクアレイ「Hitachi Adaptable Modular Storage 2500」が採用された。

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(川島 弘之)
2012/11/21 16:17