日本IBM、汎用システムの柔軟性とアプライアンスの利便性を併せ持つ新システム「IBM PureSystems」
専門家の知見を実装し導入・運用作業を大幅に簡素化
エキスパート・インテグレーテッド・システムの第1弾となる、IBM PureSystems |
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は12日、新たなコンピューティングシステムのカテゴリ「エキスパート・インテグレーテッド・システム」を発表した。
単なるハードウェア、ソフトウェア一体型の製品と異なり、システムの導入・運用で培った専門家の知見や経験を“パターン”として実装している点が特徴。このため、これまでは専門のシステム要員が対応してきた作業を簡単な操作で処理でき、ITインフラにかかる工数とコストを大幅に削減できるという。代表取締役社長の橋本孝之氏は、「メインフレームの柔軟性、アプライアンスの利便性、クラウドの俊敏性を併せ持った、まったく新しいシステム」だ、とこれをアピールする。
同システムの第1弾としては、「IBM PureSystems」製品群を提供する。これは、サーバー、ストレージ、ネットワーク、仮想化、管理機能を統合したもので、インフラシステムの「IBM PureFlex System」と、ミドルウェアまでを統合した「IBM PureApplication System」を8月1日より順次出荷開始する。価格は2350万円(税別)から。
新たなITカテゴリーとなる、エキスパート・インテグレーテッド・システム | IBM PureSystems製品群 |
■専門家の知見を組み込み管理コストの増大を防ぐ
代表取締役社長の橋本孝之氏 |
専門家の知見をパターン化して搭載することで、導入や運用を容易に |
設計段階から最適に統合されているほか、出荷前に工場でハードウェア、ソフトウェアを統合・最適化している |
橋本社長が「1990年代の半ばには、ITコスト全体の30%だったサーバー管理の費用が、オープン化が進み、仮想化などのさまざまな技術が実装されてきたことで、費用の70%
を占めるようになった」と指摘するように、IT運用管理コストの増大がITコスト全体を圧迫しているのは、もう何度も何度もいわれてきている話だ。
その一方で、データ量がふくれあがるビッグデータ時代になると、当然ながらITシステムが処理しなくてはいけないデータ量も膨大になり、「今のITシステムの延長線上で実装を続けると、ビジネスイノベーションのためのITを活用する前に、運用費が膨大になる」(橋本社長)のもまた事実だろう。
こうした状況に対して、ハードウェアとソフトウェアをあらかじめ構成して提供するアプライアンスサーバー製品を利用し、導入・管理の負担を軽減するアプローチがあるが、アプライアンスはセキュリティ、データウェアハウスなどなど、あくまでも特定分野にフォーカスしたものだ。これに対して、メインフレームやx86サーバーなどの、汎用システムの柔軟性を保ったままで提供される点が、エキスパート・インテグレーテッド・システムの1つの特徴なのだという。
しかし一般的な汎用システムは、何にでも利用できる柔軟性を持つ代わりに、導入し、実際の運用を開始するまでには長い時間がかかる。エキスパート・インテグレーテッド・システムではこれとは異なり、IBMが全世界で培った運用上のノウハウ、専門知識、ペストプラクティスがパターン化されて組み込まれているため、導入作業にほとんど手間がかからない。サーバー、ストレージなどのラックへの組み込みと、仮想化環境を含めたソフトウェア構成の最適化をあらかじめ工場で実施してから出荷することで、こうした時間を劇的に短縮できるのだ。
専務執行役員 システム製品事業担当の藪下真平氏は、「汎用システムの導入には、発注から導入まで数カ月かかるし、ユーザーへの提供開始後も、ずっとチューニングし続けないといけない。ミドルウェアやアプリケーションの導入・構成も時間がかかるが、もしアプリケーションを数時間で導入でき、運用管理をシステムにすべて任せたら、いかに楽になるか。これを実現する新しいITのカテゴリが、エキスパート・インテグレーテッド・システム。ハードウェアのセットアップが完了するまでに4時間、ミドルウェア環境の構築が数分から1時間でできる」と述べ、エキスパート・インテグレーテッド・システムならではの価値を説明する。
このような簡易化のメリットは、運用開始後についても同様に提供される。統合管理はFlex System Managerから一括して行えるだけでなく、サービスレベル維持のためのハードウェア、ソフトウェアのリソース配置調整や、修正パッチの適用、アップグレードなどに必要な処理を、システム側が継続して調整・準備することで、管理者の運用負荷を大幅に軽減するという。
仮想環境が使えるようになるまでの時間を大幅に短縮。電源を入れてから4時間で使えるようになるという | ミドルウェア環境の構築時間も劇的に短縮 |
パターンとは? |
ただし、ユーザーが利用するミドルウェア、アプリケーションは日本IBM製品だけではなく、さまざまなISV(独立系ソフトウェアベンダー)、あるいはユーザー内製のソフトを混在して利用しているのが現状で、専門家の知見や経験に基づき、アプリケーションの特性に応じて最適化された“パターン”を用意するためには、日本IBM1社だけの努力では不可能だ。
そこで、「パートナーやお客さまもパターンを作れるようになっている。オープンであるため、競合である他社製品も動く」(常務執行役員 ソフトウェア事業担当のヴィヴェック・マハジャン氏)のも、エキスパート・インテグレーテッド・システムの大きな特徴。マハジャン氏は、多くのISVと協業し、最適化されたパターンを数多くそろえていくとした。
業界標準のさまざまな環境に対応 | ISVなどと広範に連携していく |
ハードウェアも、エキスパート・インテグレーテッド・システムのために設計された専用のシャーシ型サーバー「Flex System」を用いる。コンピュートリソースとしては、x86サーバーノード、Power7サーバーノードが用意されており、これとStorewize V7000ストレージ、ネットワークスイッチ、Flex System Managerが実装された管理アプライアンスなどを組み合わせて利用する形。現状では比較的ブレードサーバーに近いハードウェア構成となっている。
しかし、システム製品事業 PureSystemsテクニカル・セールスの緒方正暢氏は、「今後新しいテクノロジーが登場した場合でも、迅速かつ容易に対応できるという点を考慮して新しく設計された」と説明。ハードウェアは、その時点での最適な製品を採用していけるだけでなく、スーパーコンピュータのようにリモートメモリを利用するなど、コンポーネントごとの拡張も今後可能になるかもしれないとした。
なお、今回提供される「IBM PureFlex System」と「IBM PureApplication System」のハードウェアは共通で、DB2やWebSphereといったミドルウェア部分までを日本IBMが提供するかどうかが主な違いになる。
Flex Systemのラインアップ | x86のコンピュートノード |