「災害対策も万全」沖縄県宜野座村がデータセンター移設呼びかけ
沖縄県宜野座村が18日、同村の「宜野座ITオペレーションパーク」にあるデータセンター「宜野座IDC」の見学会を開催した。県内外から詰めかけたIT関連企業や地方自治体の担当者ら75人に対して、大地震に耐えられるという免震設備や、地震が少ない沖縄県の優位性などをアピールし、データセンターの移設を呼びかけた。
宜野座ITオペレーションパークは沖縄本島のほぼ中央に位置し、那覇空港より沖縄自動車道を車で約1時間ほどの場所にある。IDCとコールセンターがある「宜野座村サーバーファーム」と、コールセンターとオフィスがある「宜野座村第2サーバーファーム」で構成され、敷地面積は3万4412平方メートルと広大だ。
宜野座ITオペレーションパーク | 宜野座村の位置 |
いかにも「沖縄らしい」のは、目の前に青い海と空が広がる立地環境。ランチや休憩時に使われるカフェテリアに加えて、屋上広場では海風を感じながらの懇親会やバーベキューなどが行われるという。
カフェテリア | バーベキューや懇親会が行われる屋上広場 | 屋上広場からは海を一望できる |
また、車両通勤が一般的な沖縄とあって、敷地内には約730台の駐車場を確保している。沖縄県宜野座村役場の金武誠氏によれば、2009年9月時点の就業者は453人。うち75%はコールセンターなどに勤める女性が占める。
約730台の駐車場を確保している | 宜野座ITオペレーションパークの雇用状況 |
■震度7の地震にも耐えられる免震構造
見学会が行われた「宜野座IDC」がある宜野座村サーバーファームは、2002年3月に開所した。1階が約450台のサーバーラックを収納可能なIDC、2階がコールセンターとなっている。
IDCでは、見学会を共催した株式会社NTT西日本-九州沖縄支社と株式会社レキサスなどがデータセンターサービスを提供している。サーバーラックは現在150台が使われており、うち8割は沖縄県外の企業が利用しているという。
宜野座IDCの概要 | 150台のサーバーラックが並ぶ |
設備面では、免震構造を採用するとともに、自家発電設備や無停電電源装置(UPS)、空調機などの主要機器は冗長化を図った。これにより、災害時や主要機器の故障時、メンテナンス時においても機能を維持できる環境を実現したという。
免震構造については、激しい地震を緩やかな揺れに変える「積層ゴムアイソレーター」と、地震のエネルギーを吸収する「鉛ダンパー」を地下の「免震層」に設置。これにより、震度7の地震にも耐えられるという。免震構造は、震度5以上の揺れを感知すると機能する。
自家発電設備 | 無停電電源装置(UPS) | 免震装置。左側にあるのが「鉛ダンパー」、右側にあるのが「積層ゴムアイソレーター」 |
■台風や火災対策も万全
台風災害などによる停電発生時に、主電源をガスタービン自家発電機に切り替える間、電源を供給するUPSは、2次側配線ではA系・B系の2回線を準備する冗長方式を採用。ガスタービン自家発電機は2基設置し、3日間連続して運転できる。
サーバールームの空調設備としては、温度を22~26度、湿度を40~60%に維持。室内は廃熱処理の面から、天井を3メートル72センチと高めに確保した。天井が低いとサーバーからの廃熱が跳ね返りやすくなるためだ。火災発生時には、室内の上下に設置した噴射ヘッドから窒素ガスを放出して消化する仕組みを導入している。
サーバールームへの入り口にもパスワード式ロックが設置されている | 吸気口。火災発生時には、白いパイプに付いている噴射ヘッドから窒素ガスを噴出して消化する |
セキュリティ面では関係者以外の入室を制限するため、館内の主要な入口にはすべてICカードによる入退室管理システムを導入。特にサーバースペースにはスタッフが24時間365日間常駐し、設備に異常が起きても迅速な対応が可能となっている。
通信面では、那覇市と浦添市にあるNTTのビルにアクセスポイント(AP)を設置。宜野座IDCとAP間は県内2ルートで広帯域回線を確保しており、APを経由して県内外の各種通信キャリア回線と接続できる。
なお、沖縄県が提供する「沖縄県新情報産業ハイウェイ」を適用することで、エンド・エンド回線を都内と同等料金で提供できるという。沖縄県新情報産業ハイウェイは、沖縄と本土間の通信コストの一部を支援するもの。
■バックアップセンターは地震災害危険度が小さい沖縄へ
NTT西日本-九州沖縄支社の高志保満氏 |
地震が多い日本の中にあって、沖縄県は地震が少ない優位性がある。そのため宜野座IDCは、自然災害によるデータ紛失対策となる「バックアップセンター」としての活用も期待されていると、NTT西日本-九州沖縄支社の高志保満氏は説明する。
「沖縄には原発がなく、ほとんどが火力発電。そのため、原発事故による放射能漏れや電力不足が起こりにくい。また、宜野座IDCは海抜22メートルの場所にあるため水害に強いのも特徴。IDCから海までが傾斜になっており、台風などで大雨が降っても雨水が海へ流れる設計になっているため、浸水被害に遭う恐れもない。」
東日本大震災以降も、引き続き日本各地で地震が発生することが予測されているが、沖縄本島は1926年に近代的な地震観測が始まってから、震度5以上を観測したのは1回だけだ。こうしたことから高志保氏は、大規模災害への備えとして最適な立地だと述べ、「バックアップセンターは地震災害の危険度が小さい沖縄へ」と呼びかけた。
見学会ではこのほか、自治体情報政策担当者向けに、大規模災害を想定したデータのバックアップと迅速な復旧に向けた総務省の取り組みが紹介されたほか、IT関連企業担当者向けの勉強会も開かれた。
宜野座村では今後、同様の見学会を開催し、県内外の企業や自治体にデータセンターの移設を呼びかけるとともに、オフィスの入居企業も誘致していく考えだ。