中国でIPS/WAFを手がけるNSFOCUSが日本進出

「世界中の攻撃が集まる中国」それこそが強み


NSFOCUS 副社長の呉云坤(ウー・ユンクン)氏
日本法人の設立主旨。中国のダイナミズム・スピードと、日本のきめ細やかさ・こだわりを融合。日本の要求にもまれて、製品品質のさらなる向上を目指したい考え

 中国のセキュリティベンダーNSFOCUS Information Tecnology(NSFOCUS)は20日、日本進出を発表した。初の海外拠点として、15日付けで「NSFOCUSジャパン株式会社」を設立している。

 中国NSFOCUSは、2000年に北京で創業したIPSやWAFなどを手がける企業。具体的な製品・サービスとしては、不正侵入を防止する 「NSFOCUS NIPS」、Webアプリを攻撃から守る「NSFOCUS WAF」、DDoS攻撃に対処する「NSFOCUS ADS」などのアプライアンスのほか、クラウド型でセキュリティサービスを提供する「WSPサービス」、Webの脆弱性などを診断する「Web診断サービス」「プラットフォーム診断」を提供している。

 今回、日本国内において、ITセキュリティ投資が増加していること、有力なパートナーとの協業体制が整ったことなどを受け、日本法人を設立した。国内ではまず、インフォニテック、KCCS、ソフィア総研、日本ユニシス、ネットワールドの5社を販売パートナーとして製品展開を図る。


「全世界の攻撃が集まる中国、IPSやWAFではそれが強みとなる」

NSFOCUSジャパン 代表取締役社長の栗原章通氏

 IPS/WAF市場にはすでに多くの企業・製品が参入している。後発としてどこに強みを持たせるか。登壇したNSFOCUSジャパン 代表取締役社長の栗原章通氏は次のように説明した。

 「当社では、中国30カ所に設置したハニーポットを持っている。ご存知のとおり、中国は全世界から攻撃が集まる場所。日本への攻撃の80%は中国を踏み台にして実行されているとの調査もある。その情報や脅威の検体を収集・分析できるのが最大の強みとなる。日々発生する脅威に追従するため、売り上げの20%を研究開発に投資していることも重要なポイント」。

 また、NSS Labsなどによる製品面での国際認定、MicrosoftやCloud Security Allianceなどとの世界パートナーシップなども強みに挙げる。中国では4大キャリア、主要金融機関、主要政府機関、教育機関などで多数導入されているほか、2008年の北京五輪、2010年の上海万博など、大規模な政府プロジェクトでも実績がある。この点も製品力に箔を付けている。

全世界の攻撃が集まる中国、IPSやWAFではそれが強みとなる大規模政府プロジェクトでの採用実績

NSS Labsなどによる国際認定、MicrosoftやCloud Security Allianceなどとの世界パートナーシップなども強み

 一方、事業統括の椋野慎一氏は製品の機能面から強みを説明。「当社の製品では、例えばWAFにDDoS防御エンジンが一部実装されているなど、製品間でのシナジーが出せている。ここが単一ソリューションベンダーとの違い。また、診断サービスの結果から実際の状況に見合った製品導入が可能で、運用面でのデータをフィードバックしてサービスの品質を向上する『Security System Life Cycle』を確立できている点も強みだ」とした。

 診断サービスは、マルウェア監視/Web改ざん監視/Web性能監視/Webアプリ脆弱性検査/プラットフォーム検査をASP型で実施できるサービスで、今春にはDNSモニタリングサービスもリリースする予定。また、WAFでは今夏に仮想化環境への対応も図る予定とのこと。


「市場は飽和しつつも、意外と新規需要がある」

グローバル展開の予定。日本を皮切りに、北米へ、シンガポールへ

 椋野氏によれば「この市場はすでに多くの製品が発売され、飽和に近い状況にある。そのため、国内展開といっても容易にうまくいくと思ってはいない。しかし、営業を進める中で、IPSなど手作業で苦労しているところも多く、意外と新規需要があると感じている。当面は他社からのリプレースではなく、そうした新規顧客の開拓に努めたい。製品を丁寧に説明していけば、スループット、価格、各機能を一元管理できる統合管理ソフトなどにメリットを感じていただけるはず」という。

 中国ではトップシェアも獲った同社の、日本での挑戦が幕を開ける。なお、グローバル展開としては日本に引き続き、北米、シンガポールにも2011年内に現地法人を設立する予定だ。

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(川島 弘之)
2011/1/21 06:00