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日本からもっと多くのIoTプレイヤーを! ソラコムが初のカンファレンスを開催、4つの新サービスも公開へ

 「ソラコムは“クラウドはNew Normal”という思想のもと、IoTの共通基盤としてのサービスを提供していく」――。1月27日、都内で開催されたソラコム初のカンファレンス「SORACOM Conference "Connected." 2016」の基調講演で、ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏はあらためてIoTプラットフォーマーとの意気込みを示した。

 2015年9月に最初のサービスとなる「SORACOM Air」「SORACOM Beam(パブリックベータ)」をローンチしてから4カ月、この間、同社は息をもつかせないスピードで次々とサービスの拡張を図り、パートナー/ユーザーとの関係を深めてきた。ユーザー/パートナーの数は1500を超え、パートナープログラムも拡大中だ。

 いまや国内屈指のIoTプレイヤーとして、そして成長著しいベンチャーとして不動の地位を獲得しつつある中、同社が開催した本カンファレンスには500名を超える参加者が集結している。本稿では、順風満帆に見えるソラコムが次の一手として何をIoTの世界に持ち込もうとしているのか、カンファレンスで発表された内容をもとに検証したい。

ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

新サービスはセキュリティを中心にした“C/D/E/F”

 玉川社長は基調講演において、既存サービス(SORACOM Air)における新機能と、新たに開始する新サービスの発表を行っている。新機能は以下の2つ。

・SORACOM Access Management:子ユーザーを作成し、SIMカードの権限管理を可能にする。例えば経理担当者には課金情報だけを、運用担当者には通信状況だけを見せるようにするなど、ユーザーに応じて権限を設定できる。AWS(Amazon Web Services)のIAMに相当するサービス
・IMEI取得:携帯モジュールの識別番号であるInternational Mobile Equipment Identityの取得がSORACOMプラットフォームから可能に。盗難や紛失にともなうSIMの不正利用を防ぐ

 いずれの機能もSORACOM Airのユーザーであれば1/27から無料で利用可能になっている。

 新サービスは4種類。既存のAir、Beamにつづき、C/D/E/Fから始まるサービスが発表されている。

・SORACOM Canal:ユーザーのAWSクラウド環境(Amazon VPC)とSORACOMプラットフォームをプライベートピアリングで直結。SORACOM SIMを挿した特定のデバイスからのデータを、インターネットに出ることのない閉じられた環境を通してユーザーのシステム上にアップロードすることが可能に
・SORACOM Direct:AWS以外のユーザー環境(オンプレミス、AWS以外のパブリッククラウドなど)とSORACOMプラットフォームを専用線でつなぐプライベート接続サービス。システム間の接続には「AWS Direct Connect」を使用し、閉域網のみでのIoT接続を実現。
・SORACOM Endorse:Air経由でアクセスしてきたデバイスに対し、認証トークンと公開鍵を使ってインターネット越しでのセキュアなシステムログインを実現する認証サービス(Wi-Fiが使える場合はWi-Fiオフロードで)
・SORACOM Funnel:AWSやAzureで用意されている特定のクラウドサービスに特化したクラウドリソースアダプタ。認証情報やSDKをデバイスにもたせることなく、Funnelを通すだけでデータを特定のサービスに転送できる。現時点で対応するサービスは「Amazon Kinesis」「Amazon Kinesis Firehose」「Microsoft Azure Event Hubs」の3種類

AからFまで揃ったソラコムのサービスラインアップ。EndorseとFunnelはプライベートベータなので2月末まで無料で利用できる

 ソラコムはユーザー/パートナーからのフィードバックをベースに新機能や新サービスを提供する方針を採っている。

 CanalおよびDirectは、パートナー企業らの「よりセキュアなIoT接続をユーザーに提供したい」という要望に応えたサービスで、すでにcloudpack(Canal)、日立製作所(Direct)、野村総合研究所(Direct)などがローンチと同時に接続実績を発表している。

 また基調講演では、さくらインターネットのフェローである小笠原治氏がシークレットゲストとして登壇。さくらインターネットが今年から展開予定のIoTビジネスにおいて、SORACOMプラットフォームとの間でプライベート接続(SORACOM Direct)を行うと発表している。

 「さくらがやろうとしているのは、専用モジュール(SIMデバイス)を用意し、それを個人が携帯することで血糖値の値を1日3回取得したり、食事ごとに味覚反応を取り、その分析結果をフィードバックすること。病気の予防に生かしたり、好みのレシピを調理人に伝えたりするIoTサービスが可能になると考えている。ソラコムは低価格でこうしたサービスを実現するためのパートナー」(小笠原氏)。

さくらのIoTプラットフォームにおけるソラコムとの接続形態
さくらインターネットのフェロー、小笠原治氏

 Endorseも、Canal/Directと同様に、セキュリティに敏感なユーザーのために考案されたサービスだ。玉川社長はEndorseについて「(NTTドコモの)おサイフケータイに近いイメージ。“通信可能な鍵”としてSIMを活用するサービス」と表現する。

 「SIMは基本的にハックされない」という性質を利用したもので、デバイス側は認証情報(トークン)をSORACOMプラットフォームから取得し、インターネット経由でトークンをシステム側に送信する。ログイン要求を受けたシステム側はSORACOMプラットフォームの公開鍵を利用して認証トークンを検証、「このSIMデバイスからのアクセスは安全」と判断した後にアクセスを許可する。他要素認証の要素のひとつとして利用できるほか、Canal/Directと併用してシングルサインオンシステムを構築することも可能になる。

SIMを認証に使う発想の「SORACOM Endorse」のしくみ

 “One more thing”なサービスとして最後に打ち出してきたFunnelは、SORACOMプラットフォームと併用されるケースの多い、Amazon Kinesisなどのデータストリーミングサービスとの連携を強化するタイプのリソースアダプタだ。こうしたサービスはIoTデバイスとも相性が良く、リアルタイムなセンサーデータの取得などにおいて威力を発揮するが、デバイスからサービスにデータを送信する際にはデバイス側にSDKをインストールしたり、中間サーバーを立てる必要があり、ユーザーにとってややハードルが高いことは否めない。

 Funnelはこれらの手間を省略する役割を果たすアダプタで、まさしく漏斗(funnel)のようにデバイスデータをストリーミングサービスへと注ぎこむ。デバイス側にサービスにログインするためのパスワード情報などを持たせる必要もないので、セキュアな接続が可能だ。現在対応するクラウドサービスはKinesisなど3種類のみだが、順次拡張していく予定だという。

パートナープログラムの拡充とユーザー事例の増加

 基調講演では新サービスのほか、パートナープログラムの拡大とユーザー事例の紹介も行われている。

 ソラコムは2015年9月のローンチ時点で、すでに多くのパートナーを獲得しているが、現時点で申請済みパートナー117社、認定済みパートナー21社を抱えている。これまで認定済みパートナーには「デバイスパートナー」「ソリューションパートナー」が設定されていたが、今回のカンファレンスに合わせ新たに「インテグレーションパートナー」が設けられ、cloudpack、クラスメソッド、ハンズラボ、日立製作所の4社が認定されている。

ソラコムのパートナーシステム「SORACOM Partner Space」の認定パートナーは現在21社
新たに設けられたインテグレーションパートナーに認定された4社

 またソリューションパートナーとして新たにSalesforce.comが認定され、セールスフォース・ドットコム 取締役社長兼COO 川原均が基調講演に登壇した。「ビジネスの重要情報はいまや人の手を介してだけでなく、センサーからも入ってくる時代になっている。Salesforce.comはIoTを“IoC(Internet of Customers)”と位置づけているが、IoCを発展させるには、SORACOMのような柔軟でセキュアなプラットフォームが欠かせない。今後もこの技術力にあふれた若々しい会社とさまざまなことを一緒にやっていきたい」(川原氏)。

 1500を超えたユーザー事例の中にもユニークなものが増えている。除雪車の位置情報管理にAirを活用したデザイニウム、全バス車両にSIMを装備し、乗客に目的地検索システム「もくいく」をAir経由で提供する十勝バス、放射線情報のオープンマップにAirを利用するNPOのSafecast、訪日観光客にSIMデバイスを提供するeConnect Japanなどが一例。

 いずれも「当初にわれわれが予想もしなかったようなお客さまに、予想もしなかったような使われ方をしている」(玉川社長)点が特徴だ。利用にあたって特別なライセンスやSIMの枚数制限を必要としないソラコムは“MVNOのMVNO”として利用しやすい。大企業に限らず中小規模のIoTプレイヤーでもユニークなサービスを実現しやすい点が、急速に普及している一因と言える。

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 クラウドはNew Normal――玉川社長がよく使うこのフレーズは、同社長が所属していたAWSのトップであるアンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏が、2014年の「AWS re:Invent 2014」で公言している。

 IoTはクラウドという巨大なゆりかごがなければ成立し得ない技術であり、そしてクラウドを前提にする以上、IoTサービス事業者はクラウドネイティブなビジネススタイルを追求し続けなければいまの時代にキャッチアップしていくことはおそらく無理だろう。クラウドビジネスの経験が豊富な玉川社長とソラコムが、ローンチ&イテレートの姿勢を崩すことなく、そしてリリースのスピードをゆるめることなく、次々と新しい施策を打ち出していく姿は、現代のIoTプレイヤーのロールモデルともいえる。

 今回のカンファレンスは"Connected."という名前が用意されている。あえてピリオド(.)を使っているのは「すでにつながっている」という状態を強調するためだという。SORACOMプラットフォームの上に乗りさえすれば、ユーザーもデバイスも事業者も、すべてのヒトとモノ"Connected."となる――。そこには、ローンチしてわずか4カ月でありながら、すでに日本のIoT市場をけん引している自信と実績を垣間見ることができる。

 7月には「SORACOM Conference "Discovery"(仮)」の開催も決定、今年度中にはグローバルへの展開もスタートしたいと強い意気込みを見せる。「AWSがたくさんのWebサービスを生み出したように、SORACOMをベースにしたたくさんのIoTシステム、たくさんのIoTプレイヤーが国内に生まれてほしい」と基調講演を結んだ玉川社長。2016年が終わるころ、ソラコムによって日本のIoTシーンがどう塗り替えられているいるのか、引き続き注目していきたい。

(五味 明子)