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CTC、米Virtustreamのソフトを採用したSAP基幹システムのクラウドサービス

 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は7日、米Virtustreamのソフトウェアを活用し、基幹業務に特化したクラウドサービス「CUVICmc2(キュービックエムシーツー)」を2016年4月に開始する。

 CTCでは、現在、自社基幹システムの再構築を行っているが、自社基幹システムでも採用するSAPジャパンのHANA、次世代ERPソフト「SAP S/4HANA」などSAPアプリケーションのクラウドサービスを、1)性能保証、2)高セキュリティ&コンプライアンス、3)実使用ベースの従量課金という3つを同時に保証して提供する。

 米Virtustreamは、米国、欧州の自社データセンターにおいてSAPが稼働するクラウドサービスを運営する中で獲得したノウハウを注入したソフトウェアの提供がメインビジネス。「SAPを搭載するならナンバー1の信頼性を持っている」(Virtustream CEOのロドニー・ロジャース氏)と基幹システム運用に強い自信を見せている。

Virtustream CEOのロドニー・ロジャース氏

 またCTCの代表取締役社長、菊地哲氏は、「日本で基幹システムクラウド利用は遅れてきたが、お客さまのクラウドへの関心は高まっている。基幹システムに適した堅牢で、高信頼性、高品質なサービスを提供することを模索する中、出会ったのがVirtustream社。当社がデータセンター運営で培った保守、運用力を加え、基幹系でもクラウドを利用する流れを当社、SAPジャパン、Virtustream社の3社で先頭に立ち、作っていきたい」と話している。2017年度にCUVIVmc2で30億円、オンプレミスとの接続など関連を含めて売上100億円を目指す。

CTCの代表取締役社長、菊地哲氏
3社の役割

基幹業務に特化した4つのクラウドサービス

 CUVICmc2は、CTCのデータセンターを活用してSAPのアプリケーション、Virtustream社のソフトウェアを使用したクラウドサービス。CTCでは、1)投資効果アセスメント、クラウドコンサルティングなど導入検討を支援するAdvisory Service、2)SAP BASIC構築、OS・DB構築、HANA構築、IaaS移行・設定など構築・移行Service、3)Cloud Platform Service(CPS)、4)Cloud Cover Service(CCS)という4つのサービス提供を予定している。

 「4つのサービスを提供できるのは、当社が長年フルスタックサービスを提供してきた経験と蓄積したノウハウがあるからこそ。ただし、この4つのサービスすべての利用が前提というわけではなく、CPS、CCSのみ利用したいというお客さまにも対応していく」(CTCの大久保忠崇CTO)。

CTCの大久保忠崇CTO
4つのサービスメニュー

 Advisory Serviceはクラウドへの移行を検討するユーザー向け。現行リソースの利用状況を計測し、クラウド移行に必要なリソース量を換算。実使用量分のリソースを元に総コストを算出し、クラウド移行の判断材料となる情報を提供する。

 測定のために使用する「Advisory Tool」がVirtustreamのソフトウェアで、効果も含めたアセスメントを行い、専用サイトでμVM換算して算出レポートを生成。そのレポートの説明を客先で行うことで、クラウド移行を行うか否かの判断材料にしてもらう。

 CPSはインフラ基盤を提供するサービスで、サーバーとストレージに関し、応答レベル・災害対策レベルを組み合わせて利用することができる。SAP認定済みの仮想サーバーの利用が可能となる。サーバーメニューではインターネットへの接続の有無を選択することが可能で、これらを組み合わせて利用することができる。「フィジカルにインターネットにつながない環境を提供する」(大久保CTO)。

 ストレージメニューでは応答時間のレベルを複数用意し、アプリケーションの特性にあわせて応答時間、レプリケーションの有無を組み合わせることで、適切な性能と安定性を確保する。

 CCSはインフラ基盤上で動作するOSとミドルウェアの運用に関するサービス。運用内容と対応時間によって3つのレベルから選択して利用できる。SAPユーザーにはSAP BASICの運用サービスも提供する。

CUVICmc2の3つの特徴

 SAPジャパンでは23年ぶりにアーキテクチャを刷新し、SAP S/4HANAによるビジネスのデジタル化を実現するプラットフォーム提供を行っている。SAPジャパンの代表取締役社長、福田譲氏は、「実際にデジタル変革を実践することで、大きく売り上げ、利益を伸ばした企業事例として、ハーレー・ダビッドソン社、エアコンプレッサーを提供するケーザー・コンプレッサー社などが出ている。今回の3社の提携は、日本でもデジタル変革を加速する基幹システム構築が進む、意義あるものだと考える。従来は別システムだったビッグデータ、IoTと、ERPをSAP HANAという1つのプラットフォーム上に構築し、共存化することで、ITがビジネスイノベーションをリードすることができる。IT部門の皆さんには、これまでの業務を変え、イノベーションを自らのメイン業務としていただける変化が実現する」と説明した。

SAPジャパンの代表取締役社長、福田譲氏

 なおVirtustreamは2015年4月に米EMCに買収され、EMCフェデレーションの一社となった。創業当時から、ミッションクリティカルシステムのためのクラウド事業を行っている。ロジャースCEOは自社の特徴について、「われわれの技術的なコンセプトを短時間で説明するのは無理。端的にお話しすると、バーチャルマシンを活用することで成立している。また、ミッションクリティカルクラウドには不可欠なセキュリティ、コンプライアンスについては調査会社であるガートナーから3年連続でナンバー1という評価をもらっている」と説明している。

三浦 優子