ニュース

米EMC、ViPR Controllerをオープンソース化 ScaleIOやVNXは開発環境で無償利用が可能に

 米EMC主催の年次イベント「EMC World 2015」にて、EMCはストレージの自動化や管理機能を提供する「EMC ViPR Controller」をオープンソース化すると発表した。オープンソースバージョンは「Project CoprHD(Copperhead)」として提供される。

 EMC プロダクト&マーケティング プレジデントのJeremy Burton氏は、「第2のプラットフォームの世界ではプロプライエタリなアプリケーションが中心だったが、第3のプラットフォームの世界ではオープンソースが中心となる。われわれは第2のプラットフォームだけでなく、第3のプラットフォームの世界でもリーダーとなるべく投資を続ける」と述べた。

米EMC プロダクト&マーケティング プレジデントのJeremy Burton氏
第3のプラットフォームではオープンソースが中心に

 「Project CoprHDは、EMCのオープンソース戦略にとって重要なステップだ」というのは、EMCが2014年10月に買収を発表した米Cloudscalingの元・最高経営責任者で、現在EMCの新興テクノロジー担当バイスプレジデントを務めるRandy Bias氏だ。Cloudscalingは、OpenStackの創設メンバーの1社で、Bias氏はEMCのオープンソース化を推進する人物といえる。

 Bias氏は、オープンソースのポイントとして、「コミュニティ、コントロール、ベンダー中立性の3つが重要」とし、EMCはこの3つを兼ね備えた企業だと述べる。「Federation(連合)企業の中では、VMwareとPivotalがオープンソースに積極的だった。これからはEMCもそうなっていく。EMCが商用のソフトウェア製品をオープンソース化するのは今回が初めてだが、これが最後ではない。今後もこの動きは続く」とBias氏は語った。

米EMC 新興テクノロジー担当 バイスプレジデントのRandy Bias氏

 Project CoprHDは、自動化されたワークフローを利用してサービスが開発できるなど、商用版のViPR Controllerと同等の機能を持つ。「オープンソース化されたことで、ベンダーの中立性を保つことができ、さまざまなベンダーのストレージを自動化できるようになる。柔軟性や拡張性、選択肢が広がる」とBias氏は説明する。

 Project CoprHDはGitHubにて6月に公開される予定で、ライセンスは、Mozilla Public License 2.0(MPL 2.0)を適用する。商用版のViPR Controllerは、今後もEMCがサポートする。

ScaleIOとCephを比較

ScaleIOの無償版も発表

 EMCはまた、仮想ストレージソフトウェア「ScaleIO」の無償版も発表した。ScaleIOは、既存のサーバーをブロックストレージとして利用できるようにするソフトウェア。スケールアウト型のSANアーキテクチャが特徴で、サーバーの台数を数千台にまで拡張可能だ。

 無償版が利用できるのは、テスト環境や開発環境など本番以外に限られるが、無償版を提供することで、製品版のライセンスを購入する前に自由にScaleIOを試せるようになる。EMC 新興テクノロジー担当 プレジデントのChirantan (C.J.) Desai氏によると、無償版のScaleIOは「容量も時間も無制限で、誰でもダウンロード可能だ」という。

 Desai氏は、「ScaleIOは業界トップのSoftware Defined SANだ」と述べ、ScaleIOと同じく分散ストレージ技術を持つオープンソースの「Ceph」とScaleIOを比較。「ScaleIOはレスポンスタイムがCephの24倍の速さで、IOPSパフォーマンスもCephより7倍優れている」とした。

米EMC 新興テクノロジー担当 プレジデントのChirantan (C.J.) Desai氏

VNXのソフトウェア版を無償で提供

 さらにEMCは、これまでハードウェアのみで提供されていたエントリークラスのストレージ「EMC VNXe」のソフトウェア部分を切り離し、仮想ソフトウェアとして提供することも発表している。ソフトウェア版は「EMC vVNX Community Edition」(以下、vVNX)として提供され、テスト環境や開発環境にて利用可能だ。

 「これまではVNXをテストしたいと思った場合、VNXを購入するしかなかったが、ソフトウェア版のvVNXは無償で提供するため、購入前に汎用ハードウェアを使ってVNXの環境を試すことができる」と、EMC コアテクノロジー プロダクトマーケティング担当 バイスプレジデントのJon Siegal氏は説明する。

 無償で提供されるvVNXは、ハードウェアにて提供されていたVNXeと機能は同じだ。Siegel氏は、「新しいアプリケーションをテストしたい場合、vVNXを使ってストレージの環境がシミュレーションできる。ユーザーは無料で簡単にテストして本番環境に備え、本番環境への移行も容易にできる。こうすることで、ユーザーはアプリケーションを市場に提供するまでの時間が短縮できるのだ」と述べた。

藤本 京子