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日本マイクロソフト、Visual Studioや.NETの最新状況を日本のユーザーに説明
(2014/12/19 06:00)
日本マイクロソフト株式会社は18日、東京・三田のベルサール三田において、ソリューションパートナーやアプリケーション開発者を対象にした「2015年度Visual Studio/.NET製品戦略説明会」を開催した。
米国時間11月12日に米Microsoftがニューヨークで開催した開発者向けイベント「Connect();」において、Visual Studioの無償エディションの提供や、次期バージョンプレビュー版の公開、.NET関連コンポーネントのオープンソース化などを発表。今回の説明会はこれを受けて、日本の開発者などを対象に、Visual Studioおよび.NETに関する最新情報に関する説明を行うものになった。
日本マイクロソフト デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部マーケティング部の米野宏明部長は、「2月にサティア・ナデラがCEOに就任してから、すべてのユーザーやエンジニアに対して、生産性とプラットフォームを提供することを軸に、さまざまな製品やサービスを提供してきた。Windows PCやWindows Serverだけでなく、あらゆるデバイス、あらゆるインターフェイス、あらゆるプラットフォームに対する開発環境を提供するのがMicrosoftの基本的な考え方であり、それがMicrosoftの価値になる。Windowsだけにプロテクトする姿勢はない。その方針の中核に置かれるのがVisual Studioおよび.NETである。結果として、開発者やクラウド事業者などの収益性を高めることにもつながる」と語った。
Visual Studio 2015 Previewはクラウドと提供
続けて、日本マイクロソフト デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部エバンジェリスト、井上章氏は、「アプリケーション開発新時代に向けて」と題して、Visual Studio 2015および.NET 2015について説明した。
井上氏は、米国で開催された「Connect();」においては、Visual Studio 2015 Previewのほか、.NET 2015 Preview、Visual Studio Community 2013、.NET Core Open Source and Cross-Platform、Visual Studio 2013 Update 4、MSDNのアップデートなどが発表されたことを示しながら、Visual Studio 2015 Preview、.NET 2015 Previewをデモンストレーションしながら、その特徴を紹介した。
次期バージョンとなるVisual Studio 2015 Previewは、開発には使用できない試用版の位置づけであり、Microsoft Azureの仮想マシンでイメージが提供されていることから、物理サーバーを用意しなくても試用ができる点が大きな特徴だとした。
「Visual Studio 2013と比べて、見た目にはそれほど差はないが、プロジェクトのテンプレートやモバイル開発機能をはじめとする細かい部分では、かなり改善されている」とした。
Visual Studio 2015 Previewをインストールすると、Visual Studio 2015 Secondary Installerが起動。これによって、Android NDKおよびSDK、Apache Ant、Visual Studio Emulator for Androidのほか、Google Chromeもセットアップされることになるという。
さらにモバイルアプリケーション開発では、C++を利用してiOSやAndroidにも対応したクロスプラットフォームでの開発環境を実現。Windows、iOS、Android向けのネイティブアプリケーションを開発できるXamarinや、HTMLやJava Scriptによるブラウザベースでのネイティブアプリケーションを開発できるApache CORDOVAに対応していることも紹介した。
一方で、.NET 2015については、「.NET Framework 4.6と.NET Core 5という2つの.NET Frameworkを持つ。.NET Framework 4.6は、互換性を持ったものであり、現行最新版の.NET Framework 4.5.3の進化版になる。.NET Core 5は、クラウドやマルチデバイスに最適化したものであり、軽量化したソフトウェアを動作させるために、より軽量化した環境を実現。MacやLinuxでも動作させることができる。また、次世代JITであるRyuJIT、オープンソースコンパイラであるRoslynを採用している。これまでのコンパイラはツールとしての提供であったが、Roslynによってプラットフォームの形で提供されるのが大きな変化。他のアプリケーションとつながるAPIを用意し、拡張した利用が可能になる」とした。
さらに、.NETはオープン化といっても、単に参照するだけにとどまっていたが、新たに変更も可能な形へと進化。GitHubにも置かれることになるという。
「クロスプラットフォーム、モジュラー設計、オープンソース、そして、LANTIMEとして完全なSide by Sideの実行、ライブラリの軽量化および高速化といった特徴を持つ。Visual Studio 2015および.NET 2015によって、すべてのアプリケーション開発に向けた環境が整う」と述べた。
DevOpsの実現やALM強化などを実施
さらに、日本マイクロソフト デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部マーケティング部、相澤克弘氏は、「.NETのオープン化、1ソースマルチユースでのネイティブアプリ開発などのクロスプラットフォーム開発、リファクタリングやライトバルブ、デバッグ機能の進化などによる開発生産性の向上、DevOpsの実現やALM(アプリケーション ライフサイクル マネジメント)の強化が、Visual Studio 2015 Previewの特徴である」として、そのなかからいくつかの特徴を説明した。
開発生産性の向上として提供するLight Bulbsは、コーディングにおける課題を特定して、画面上にライトのアイコンを点灯。Windowsの切り替えなしに、課題の特定と解決を行い、開発者がコードの作成に集中できるようになる機能としている。また、Visual Studio 2013から搭載しているCodeLensでは、Application Insightsによる各種アプリケーション測定データの表示機能を追加。データベース利用量やパフォーマンスの改善、チーム開発における長い変更履歴の表示機能を追加するという。
新機能のSmart Unit Testでは、単体テストの内容を改善。さらに、シンプルなテストから複雑なテストまでをクラウドベースのロードテストを現実的な負荷をかけて実行できる「クラウドロードテスト」を提供するという。
ALMについては、リリースマネジメントによって、リリースを自動化。開発、テスト、運用環境にそれぞれ一貫性のあるリリースパスを設定することで効率化と、品質の向上を図ることができる。「ソフトバンクテクノロジーでは、リリースマネジメントを活用することで、工数が20分の1になったという例が出ている」という。
さらに、詳細なアプリ稼働の測定データを表示するアプリケーションインサイト機能を提供。「リリースしたアプリの2~3割の機能は、まったく使われていないという結果も出ている。リソースの最適化を図ることができる」とした。
【お詫びと訂正】
- 初出時、社名をソフトバンクモバイルとしておりましたが、ソフトバンクテクノロジーの誤りです。お詫びして訂正いたします。
また、Visual Studioによるモバイルアプリ開発、クラウドアプリ開発、IoTアプリ開発の強みについても、それぞれ説明。IoTのアプリ開発においては、.NET Micro Frameworkと.NET Gadgeteerを利用することで、ドラッグ&ドロップでアプリ開発できる環境を用意している点を強調した。
新たなSKUとして用意したVisual Studio Community 2013については、「現時点では、Visual Studio Professionalと同一の機能を無料で提供しているものであり、日本においては、提供開始から1週間で2万本がダウンロードされた。これまで無償で提供しているVisual Studio Expressは、今後、Visual Studio Communityに置き換わることになるだろう」と説明している。
また、「Visual Studio Communityは、エンタープライズアプリの開発者は利用できないSKUであり、個人開発者などが利用できる、あるいはOSI認定ライセンスで提供されるオープンソース開発に利用できる、といった利用条件がある。一方で、Professionalの適用範囲が拡大するなど、利用者の拡大にあわせてSKUを選択できるようになる」と述べたほか、「.NETにおいては、クロスプラットフォーム対応により、.NETの作り替えを回避し、Roslynにより、ほかのプラットフォームで、.NETテクノロジーの活用範囲が広がることになる」と述べた。
一方、井上氏は、昨今のMicrosoftの変化についても言及。「2月にCEOに就任したサティア・ナデラは、技術者出身であり、社内から見ても技術フォーカスになっていることを強く感じる。インターナルなハッカソンを実施しているのもその一例だ」と、変革をアピール。
その上で、「Microsoftが1975年の創業時に掲げたビジョンは、『すべての机に、家庭に、コンピュータを』というものだった。それがいまでは、一人が複数のデバイスを持つようになり、2008年時点で、すでに世界人口を超える台数のデバイスが利用されている。Microsoftは、Productivity Future Visionとして近未来の様子を映像化しているが、このなかでは、PCだけではなく、さまざまなデバイスが使われている。これからも、デバイスが増え、アプリケーションが増え、データが増えるなかで、それを使う人も増えている。これからき、こうした変化を視野に入れた開発環境が必要である」とした。
また、「Microsoftは、PC市場のなかでは大きなシェアを持つが、デバイス全体のなかでは挑戦者である。モバイルとクラウドを優先して考えていく姿勢を打ち出しており、これにあわせて、Microsoftが提供する技術も変わってきている。PC、Windowsだけという考え方は捨て、すべてのアプリケーション、すべての開発者を対象にする戦略へと移行した。.NETは12年前に提供を開始したものだが、2000年にビル・ゲイツが、.NETの初期構想として打ち出したのが、デバイスとサービスを一緒に考えていくということであった。これを今の言葉に置き換えると、モバイルとクラウドを一緒に考えるということである」などと述べた。