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再評価されるテープ・ストレージ〜日本IBMが新しい用途を紹介

 日本IBMは19日、テープ・ストレージ開発戦略と最新技術動向を紹介する説明会を開催した。登壇した研究・開発 システム・テクノロジー開発製造 ストレージ・システムズ開発担当の佐々木昭光氏が「役目を終えたと言われて久しいのに、なぜ今頃になってテープの話なのか。それは昨今、テープの価値の再定義が進んでいるためだ」とし、技術革新やIT環境の急速な変化で見直されつつあるテープの新しいニーズを紹介した。

 少し意外だが、IBMのテープ・ストレージ技術は日本で開発されている。細かい作業が日本人に向いているためだそうだが、ともかく拠点となる江東区豊洲の東京ラボラトリーでは、カードやコントローラーLSIなどの「ハードウェア開発」と、機構制御などの「ファームウェア開発」の部隊が密に連携を取りながら、要素技術や利用技術を発展させている。

 IBMテープ・ストレージには、ミッドレンジ向け「LTO」とエンタープライズ向け「3592」という2つの製品ファミリーがあるが、前提として「共通アーキテクチャ」を採用。製品ファミリー間でもフィードバックが可能な体制を整えている。

 「ハードウェアとファームウェア」「LTOと3592」と二重に連携した開発体制が、IBMテープ・ストレージの価値を生み出す源泉となっているようだ。

テープ・ストレージ製品のテストルーム
LTOテープライブラリ
製品内部
テープを格納・移動するアーム部

テープには大容量・高速化への大きな伸びしろ

 今回の説明会はこうした日本IBMの取り組みを伝えるのが目的のようだが、「テープは役目を終えた」という声も聞かれ、バックアップもD2D(Disk to Disk)のメリットが囁かれる中、なぜいま再びのテープなのか。佐々木氏によれば「ここへきてテープが再評価されている」とのことで、新しい活用法が生まれつつあるのだという。

 背景には「HDD容量の伸び悩み」と「ビッグデータ」がある。

 同氏によると、HDDは急速に大容量化したが昨今は伸び悩み、今後年率8〜12%程度にとどまる。一方でテープは大容量化への伸びしろが大きく、同社のロードマップで年率40%以上の大容量化が見込まれているという。高速化についても、データトラックと読み書きヘッドのチャネル数を増やすだけで容易なテープは、映像などのサイズの大きなデータの保存用として再び注目を集め、再評価につながっているのだ。

 日本IBMも、こうしたテープの新しいニーズに取り組んでいる。その成果の1つが2014年5月20日に発表された「磁気テープ記録密度の記録更新」。富士フイルムが開発した次世代磁気テープを基に、日本IBMが「読み書きヘッド技術」「ナノメートル精度のトラック追従を実現するサーボ技術」「信号処理アルゴリズム」を革新することで、「1平方インチあたり859億ビットの面記録密度(85.9Gbit/in2)」を達成した。これにより、LTOテープ・カートリッジには最大154TBの非圧縮データが格納可能になる計算で、今後10年以内で実用化される見込みという。

磁気テープ記録密度の記録更新

テープをディスクのように扱う「LTFS」

 テープが再評価されている理由はこれだけではない。もともとテープは大容量でテラバイト単価の低い記録媒体。しかしHDDと比べると使い勝手に難があった。日本IBMはその問題を解消するため、「大容量化」だけでなく「使い勝手」の点からもテープに新しい光を当てている。

 その代表例が2010年に実用化された「LTFS(Linear Tape File System)」だ。テープにファイルシステムの概念を導入し、ディスクのような感覚でテープ上のファイル操作を可能にするもので、日本IBMは各種有償版のほか、無償版「Single Drive Edition」も提供している。

 このLTFSと分散ファイルシステム「GPFS(General Parallel File System)」を組み合わせることで実現したのが「Smarter Storage」という概念。GPFSでディスクプールを作り、LTFSを組み合わせることでテーププールも実現し、LTFSとGPFSを連動させてディスクのデータをテープへ自動移行させる仕組みだ。これにより、ユーザーの目には共通のファイルシステムのように見せながら、透過的に、「高速なフラッシュ/SSD」「大容量HDD」「安価なテープ」というストレージの3階層化が実現できるようになった。

 ストレージ階層化といえば、従来は高速HDDと大容量HDDの2階層から、より高速なフラッシュ/SSDの登場により3階層へと進化してきたが、「将来的には高速なフラッシュ/SSDと大容量・安価なテープの2階層に変わっていくのでは」と、HDDを省いた未来も予測している。実際に「FLASH+TAPE」で「FLAPE」と表現するこの2階層化への動きが具体化するような動きもあるという。

テープも含めたストレージ階層化
FLASH+TAPE=FLAPE

USB型LTOドライブで広がる活用法

 さらに8月15日には、同社初となる「USB対応」のLTOドライブ装置を発売した。USB 3.0でWindows/Linux/Mac OS Xに接続し、LTFSによってUSBメモリなどと同様にフォルダ・ファイル操作が行える。他社からも同様の製品は出ているが、日本IBM製品は現実的に持ち運びが可能なコンパクトサイズを実現したのが特徴という。

 これにより例えば、PCやサーバーのバックアップをはじめ、チームで作った成果を一括して管理したり、地方事業所や協力会社とのデータ交換に使ったり、テープメディアの壊れにくさを生かして気軽にデータを交換するなど、テープの新しい活用法が実現する。これらは映像を扱う企業や製造業からの実際のニーズに基づく活用法とのこと。大容量と使いやすさを備えた製品として今後、さまざまなシーンへの導入を進める方針だ。

PCのバックアップに活用
サーバーのバックアップに活用。LTOドライブをユーザー部門に貸し出す運用を提案
各種データを自由にまとめて保管・交換
HDDと比べて耐久性に優れるため手軽に保管できる

 なお、USB対応のLTOドライブ装置「IBM TS2260(LTO 6)」の価格は88万7100円(税別)。テープカートリッジは各社製品が対応する。

USB対応のLTOドライブ装置
Windowsにドライブが認識されている様子

(川島 弘之)